第1回:モテる曲を作りたい!~孤独の中心気圧

コラム by 小島ケイタニーラブ 2014/04/11

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今、東京から大阪に向かう新幹線の中にいる。ザクッと自己紹介すると、僕は小島ケイタニーラブという名前で、歌を作ったり歌ったりしていて、今夜だってライブのために大阪行きの電車に乗ったところなのだ。
そんなことはさておき、僕は今、とても困っている。数日前から南太平洋上に大きな台風が現れて、あろうことか東京に向かってきているらしい。このまま台風が来たら、電車が止まってしまいそうなのだ。

みなさん、思い出してほしい。算数の授業でこういう問題をやらなかったろうか。

問題

10キロメートルの道があり、両端をそれぞれa、bとする。
タカシ君はaからbに時速3キロで進み、アキオ君はbからaに時速4キロの速さで進むとき、2人が出会うのは同時にスタートしてから何分後か。

タカシ君を僕に、アキオ君を台風に置き換えてみよう。
僕はできるだけ早くb地点に行きたいし、どちらかというと台風には出会いたくない。台風にはできれば進路を変えてc地点に行ってほしいのだ。

小学生のときは学校が休校になったりして台風が嬉しかったりしたけど、最近の僕は台風が来ないほうがよっぽど嬉しい。そんな大人の思いにも台風は”どこ吹く風”である。

台風は気象現象だから、まさに「空気」そのもののくせして、まったくこちらの空気を読もうとしない。いっそのこと中心気圧のことを言うときには単位をヘクトパスカルからKYにしてほしいぐらいである。

ケイタ君の苦悩

それはそうと、算数といえばこんな問題もあった気がする。

問題

ケイタ君が八百屋で一個40円のジャガイモを5個、一本50円の人参を2本買いました。ケイタ君は八百屋さんにいくら払えばいいでしょうか。

こんなシンプルな問題だって、台風が来たら一気にややこしくなってしまう。

問題

ケイタくんが八百屋で一個40円のジャガイモを5個、一本50円の人参を2本買いました。ケイタくんがポケットから財布を取り出そうとしたとき、台風が八百屋を直撃しました。

ジャガイモは風に飛ばされ、人参は道に転がり、創業40年の八百屋はまたたくまに壊滅的な被害を受けてしまいました。店番をしていた店主の一人娘アリサはパニック状態となっています。

そもそも暴風警報が出ていた時点で八百屋も店を閉めるべきですし、この状況でジャガイモを買いに行ったケイタくんもケイタくんです。

問1:では、なぜこんな台風の中ケイタくんがジャガイモを買いに来たのか。答えなさい。

どうだろうか。問題が一気に深みを増してしまった。答えは無数にあるのだけど、しかし真実はひとつである。

解答:ケイタ君は八百屋の一人娘アリサに恋をしていたから。

恋は偉大である。火事場の馬鹿力ではないけれど、普段からは信じられないようなパワーの源であることに違いはない。
なんと犬の世界では、好きな娘犬に会うために、海を犬かきで渡ってしまう猛者までいるそうで、そんな一途な思いがいつの時代も感動を呼んだりしているのである。

つまり ケイタ君の気持ちも同じようなもので、恋した八百屋の娘に会いたい一心で大雨の中、吹き飛ばされそうになりながら八百屋に行ってしまったのだった。

問題はまだ続いている。

猛烈な風の中、飛ばされないように柱にしがみつく娘。怖がるアリサにケイタ君が何もできずに困っていると、偶然 a地点からb地点へ移動中のタカシ君が通りかかりました。
タカシくんはb地点に行く途中でしたが、日ごろから困っている人を見ると放ってはおけないたちなので、ケイタくんと協力してアリサを店内の安全な場所に移し、暖かいお茶を出してやりました。
アリサが寒さで震える中、タカシくんはどこで見つけたのかギターを持ってくると、毛布のようにぬくもりいっぱいの歌を歌い、嵐が過ぎ去るのを待ちました。

1時間……2時間……次第にアリサの心は落ち着きました。

長い夜でしたが、徐々に雨と風がやみ、ついには空に星が見えてきました。台風は去ったのです。
耳元でやさしく鳴り続くギターを聴きながら、娘はタカシくんと、恋に落ちたのでした。

問2:このときのケイタ君の気持ちを 10文字以内で表しなさい。

残酷……残酷すぎる。僕にはもうとても答えられない。台風は、こんな残酷な質問だってできてしまうのだ。想像するだけで泣けてくるではないか……。

隣から聞こえる謎の声

謎の声:泣かないで、小島くん

小島:!?

謎の声:小島くん。もう君はケイタくんじゃない、君にもモテる曲がきっと作れる。

小島:え、ちょっと……なんなのこの声? 人が失恋に打ちひしがれているときに……

謎の声:(You MUST CREATE、モテ曲!!)

小島:うっ! こいつ直接脳内に……! くっ……実体はどこだ!?

隣を見ると、さっきまで何もなかった座席には、いつの間にか小さなギターが置いてある。素敵な木目のアコギだ。そのギターが僕に向かって話しかけていたのである。

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ギターの妖精:ちなみに、ギターじゃなくて妖精だから。

小島:……どう見てもギターにしか見えないんだけど……第一、なんで妖精がここにいるんですか?

妖精:ワタシはね、君にモテる曲を書いてほしくて、やってきた”モテ妖精”なのだよ。

小島:明白にうさんくさいですね。うーん、でもなあ、そんな簡単に曲作れたら苦労しないし、なんでモテ妖精とやらが僕なんかに会いにくるんです?

妖精の正体

妖精:実はね、RandoMのR子さんに頼まれたのね。

小島:ええっ、なんで!?

妖精:君、ミーティング中、連載のネタ考えてるフリして「今夜の夕食はカツ丼にしよ~」って考えてたでしょ!

小島:なぜ、それを。

妖精:「きっとあの人3大欲求以外のこと何も考えてないでしょうから、ちょっとお尻でも叩いて来てください!!」って、R子さんに頼まれたわけ。

小島:(見抜かれている……)

妖精:とにかく、小島くんはこのままだと、ケイタ君みたいに好きな人の気持ちを射止めることもできないままa地点にもb地点にも行けない残念な人になっちゃうから、モテる曲が作れるようになったらモチベーション上がるでしょ。それをレポートして原稿も完成、R子さんもハッピー、君もモテモテ。一挙両得! 一石二鳥! win-win!

小島:最後のはちょっと古いと思うんだけど……この妖精きっといい年だな……。
じゃあとりあえず、僕の考えていることがわかるようだし、ちょっと頭の中を覗いてもらって、なんか適当にモテそうなネタを見繕ってもらえますか?

妖精:冷蔵庫にあるものでチャーハン作るんじゃないんだから。まあ、とりあえず覗いてみようか。

そして一分経過

小島:どうでした?

妖精:えっとね……残念だけど君の頭の中ね、前述のようにシンプルな3大欲求だけが存在してたわ。モテる糸口のひとつもつかめない。まるで台風一過の空だよ!

小島:わかってはいたけどガーン!!

妖精:しかし、掘り下げて、組み合わせればなんとか……モテる可能性もある!

小島:ホントですか!?

妖精:ホントホント。たぶんホント。君の中にあるキーワードの断片をもとに、モテる曲をつくってくれ。モテポイントは私が助言する。これで確実にきみにはモテ力(りょく)がつく!

小島:たぶんって! でもなんか、がんばれそうな気がする!

妖精:その意気だよ小島くん!! 馬車馬のように、血ヘドを吐いて作曲しろー!

小島:うおおおおお! I MUST CREATE、モテ曲!!

こうして新幹線の中で叫んでしまった小島くん。
はたしてギターの妖精に乗せられて、“モテる”曲を作れるのでしょうか? 次回をお楽しみに!

小島ケイタニーラブ

小島ケイタニーラブ

ミュージシャン。2012年に初のソロ作品『小島敬太』(WEATHER/HEADZ)を発表。2009年にバンド「ANIMA」としてデビュー後、作詞・作曲・歌唱・音響デザインなどを通し、様々なアーティストとコラボレーションを開始。11年から始まった朗読劇『銀河鉄道の夜』(作家・古川日出男、詩人・管啓次郎、翻訳家・柴田元幸、小島ケイタニーラブ)は現在も全国で公演を重ね、今年7月にはその活動を追ったドキュメンタリー映画「ほんとうのうた」(河合宏樹監督)が公開される他、CDブック「ミグラード 朗読劇『銀河鉄道の夜』」(2013年・勁草書房)を刊行するなど、活動の幅を広げている。また、舞台芸術祭「フェスティバル/トーキョー13」では、東京芸術劇場にてアジア初披露となる〈リミ ニ・プロトコル(ドイツ)〉による作品をゴンドウトモヒコ(pupa)と共に担当した。 今年2014年1月からは西麻布のブックカフェ"Rainy Day Bookstore & Cafe"にて隔月イベント「ラブナイト」を開催。5月11日にイラストレーターの黒田征太郎を迎え、第3回を開催する。



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