得点アップのためのチューニング法〜高田三郎+唯野奈津実対談 カラオケで歌が上手くなる!(後編)

コラム by 高田三郎+唯野奈津実 2013/11/05

進化したカラオケを使って歌を上手くする方法を、カラオケ評論家とボイストレーナーが伝授! 後編では採点カラオケのチューニングを考察していきます!

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コート・ダジュール大井町東口店にて。唯野奈津実(左)、高田三郎(右)の両氏

ボーカリストにとって、練習ツールとして優れているだけではなく、表現の発表の場であり、プロへのきっかけにもなり得るほどに進化したカラオケ。その魅力をお伝えするべく、『カラオケ上達100の裏ワザ』著者の唯野奈津実氏(カラオケ評論家®)と、『カラオケで高得点をたたき出すボイトレ本』著者の高田三郎氏(ボイストレーナー)の対談を企画しました。後編ではより実践的なノウハウに加え、文化としてのカラオケについても考えていきたいと思います。

表現のアウトプットの場としてのカラオケ

高田 今回『カラオケで高得点をたたき出すボイトレ本』を書くに当たって実感したのは、カラオケがすごい進化しているということでした。採点機能だけではなく、アプリやゲームで遊べたり、録音や録画ができたり、知らない人とコラボができたり。もはや、表現したい人のアウトプットとしても十分機能していますよね。

唯野 私は2004年をカラオケのブロードバンド元年と呼んでいます。この年に登場した“DAMステーション”を皮切りに、カラオケもブロードバンド化していったんですね。それまでのカラオケは、カラオケ店の部屋の中だけで歌って完結する、クローズドな文化だったんです。だけど、ブロードバンド化によってオンライン採点ゲームが登場してからは、カラオケを歌っている最中に、自分が歌っている曲の全国ランキングが画面上に表示されたり、上位ランカーになると名前が表示されるようにもなったんです。それが爆発的にブームになって、カラオケのオンラインネットワーク化が進んでいきました。そこからどんどん進化して、今度は録音や録画ができるようになり、それを公開できるようになった。しかも、それに対して「うまい!」みたいな感じでコメントも付けられる。で、そういう人ってたいていブログとかSNSをやっているので、検索して、連絡を取ってつながって……みたいなことも当然起きます。つまり、クローズドな文化からコネクティッドな文化へと進化していったのです。このようにカラオケもここ10年で相当進化しましたので、今ではプロ志向の方でも十分に使えるコンテンツも増えてきましたね。採点機能も、昔に比べて尺度や基準が変わってきて、本当に上手い人に点が出るようにしようと、各カラオケメーカーの開発チームも努力されています。

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高田 もうゲームとは呼べない。取材でも印象的でしたが、作っている方もカラオケ文化を作っているという意識をお持ちでした。

唯野 あと、審査員に音楽プロデューサーがいたりして、オーディション的な扱いのカラオケ大会があったりします。例えば、さくらまやちゃんは小学校3年生のときに第一興商さんの北海道地区のカラオケ大会に出て入賞したんですが、それをきっかけにスカウトされたというエピソードもあります。

高田 レコード会社の新人開発部門にとっては、カラオケ大会は外せないイベントなんですね。

唯野 音楽業界とコラボレートしてオーディションを開催する場合もありますし……。カラオケメーカー協賛によるコラボオーディションであれば、わざわざデモ音源を自作しなくても、カラオケの機能を使って録音・録画した歌唱音源でそのままエントリーできるので、便利になったと思います。

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応募総数1万人のカラオケ大会

高田 カラオケ大会についてはよく知らないのですが、結構盛んに開催されているものなのでしょうか?

唯野 各地で開催されていますけど、大きいものだと、この9月にコート・ダジュールさんとTBSさんのコラボ企画で、“カラオケスーパーグランプリ”という全国カラオケ大会の決勝戦が赤坂BLITZで開かれました。

高田 赤坂BLITZ! それはすごいですね!

唯野 応募総数1万人の中から、まずは音源審査で100人に絞られて、さらに最終審査で選ばれた20人が赤坂BLITZで歌ったんですけど、歌唱力だけで言えばプロと遜色ありません。ただ違うところがあるとすれば、スター性とか、アーティスト性とか、そういった部分ですね。ともあれテクニック的な部分は、申し分ない20人が集まって決勝戦を戦ったんです。

高田 見てみたかったです。そういえば『カラオケ上達100の裏ワザ』では、カラオケ大会で優勝したときの唯野さんの写真も掲載されていましたね。

唯野 あれは、優勝できる大会で優勝したんですよね(笑)。カラオケ大会にもいろいろあって、プロを目指しているようなめちゃくちゃ上手い人しか入賞しないような大会だけだと、やっぱり一般のカラオケファンも面白くない。だから地域のカラオケスナックが運営しているような大会もありますし、町内会や市が企画するカラオケ大会もありますし。いろんなカラオケ大会があって、レベルに応じて楽しめるんです。

高田 だれでも楽しめるというのが良いですよね。生まれつきすごい才能を持った人しか楽しめないのでは、つまらないですから。

唯野 あと、バンドをされている方は不自由に思わないでしょうけど、普通の人は伴奏をバックにして歌う機会がないんですよ。歌おうと思ったら、ギターがないといけない、鍵盤がないといけない、ドラムがいないといけない……でも、そんな知り合いはいない。そういった普通の人、楽器を知らない人であっても歌を楽しめるようになったのが、カラオケのすごく大きな功績なんです。

高田 カラオケが世界を変えたわけですね。

12_フロント

コート・ダジュール大井町東口店
南仏のコート・ダジュールをイメージしたカラオケ&パーティースペース。ぜいたくな空間の「VIPルーム」、迫力の音響・照明の「ライブルーム」など、多様なタイプのルームをご用意し、様々なお客様にお気軽にご利用いただけるコミュニケーションスペースです。
電話:03-5781-9888
住所:〒140-0011 東京都品川区東大井5-3-7プラザヤワタヤ4・5F

唯野 あと、これは私はあまり実感が無いのですが、年配の方に聞くと、今の若い人は昔の人に比べて各段に歌が上手くなっていると言います。基礎的な部分がしっかりしている。これはやっぱり、子供のころからカラオケがあって、歌うということに慣れているからだって。

高田 それは絶対にありますよ。カラオケ文化が、日本人の歌唱レベルの底上げに寄与している。素晴らしいですね。

まずはチューニングして、本番!

高田 生徒と話していて面白かったのが、「昨日は4時間歌いました」「明日は5時間歌います」みたいな感じでハマっていて、そうするとだんだん自分が歌いやすい部屋も分かってくるみたいなんですね。「○○の☓☓ルームだと、上手く歌えている気がするんです」「△△の◎◎は音がしょぼいんだけど、逆に自分がいかに下手か分かるんです」なんて言っている。部屋までこだわりだすのかって、ちょっと驚いています(笑)。

唯野 自分にとって歌いやすい部屋のことを“神部屋”って言うんですけど、コアなファンになってくると、受付で部屋番号を指定するんです。特に採点マニアの方に、そういう傾向がありますね。良い点が出やすい部屋って実際にあって、もちろんそれは人によって違うんです。例えばスピーカーの位置とか向き、あとは部屋の形、自分の立ち位置、そういった微妙な要素で点数が左右されることもあります。あとは音量調整ですよね。エコーがどれくらいで、マイクがどれくらいで、伴奏がどれくらいか。この調整も部屋によって変わってくるので……。

高田 じゃあ、「あぁ、あの部屋が一杯だった。今日は歌うの止めるか」っていうこともありそうですね(笑)。

唯野 だから、部屋番号を指定して予約したりもしますね。そこまで行くと、もうゲーマー的な感覚なんですけどね。ゲーマーとして高得点を狙う人は、それくらいやるんですよ、マイクを持ち込んだりもしますし。

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唯野氏は著書通りにカルピスウォーターをオーダー

高田 マイマイクを持ち歩くなんて、プロと一緒ですね。

唯野 マイクを何本も持っていて、「この部屋はこのマイクが出る」とか、そういう人もいる。で、1時間くらいチューニングと称して、歌って点数を見て音量を調整するという作業を繰り返す。

高田 まずはチューニングして、それから本番! まさにライブと一緒ですね。

唯野 「この歌で、これくらいの点しか出ないのはおかしい」っていう基準があって、その基準に達するまで調整していくわけです。歌を直すのではなく、機械のセッティングを直したり立ち位置を変えたりする。特に抑揚というパラメーターは環境に左右されやすく、自分ではメリハリをつけて歌っているつもりでも、それが思うように反映されない場合もあるんです。そういうときは、マイクの音量を細かく調整して最適な抑揚設定を探したりする人もいます。私はそこまで細かく調整しませんが(笑)。私の場合は、伴奏を若干大きくして、マイクを少し下げて、エコーはあまり使わない、そんな感じです。最初はそんなセッティングにして、あとは歌ってみて、部屋に合わせて歌いやすいように調整していきます。

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本当の意味で歌を楽しむ

唯野 先生の場合、実際の生バンドで歌うのとカラオケで歌うのとでは、どういう違いがありますか?

高田 生バンドの場合は、演奏と歌が常にからんでいて、強く歌えばバンドからもリアクションが返ってくる。そういう音の掛け合いみたいなことがあって、歌いやすいです。一方でカラオケは伴奏が変化しないので、その中で自分を出していくことになる、オケからのリアクションが無いという違いがありますね。

唯野 やっぱりそうなんですね。逆にカラオケファンは、生だと歌いづらいという人が多いのです。どのタイミングでどの音がどういう音量で入るかを覚えていて、常に決まった伴奏で歌うことに慣れているので、少しでも違ったアレンジが入ってしまうと、戸惑ってしまって逆に歌いにくくなる場合があるのです。プロのミュージシャンの中には、「それは音楽じゃない」と言う人もいるようですが(笑)。

高田 そう言い切る人も確かにいるかもしれませんけど、僕はカラオケも1つの音楽ジャンルだなって思っています。カラオケの世界からプロのアーティストになった人もいますしね。だから、どっちが正しい音楽かっていうことではない。

唯野 結局、歌というものは、上手くなければならないということは決してないんですよ。もちろん、プロは別ですけど。カラオケで歌う人は、必ずしも歌が上手くないといけないわけではない。下手でも、歌っているだけで健康にも良いし、例えば老人ホームでも、認知症対策や活性化を目的にカラオケが取り入れられる事例も多くあるくらいです。

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高田 プロのミュージシャンが登場する以前は、歌って田植えをしながら歌ったり、一息ついて歌ったりするもので、生活の中に根付いたものだったじゃないですか。好きな人がいたら、その人の窓辺で求愛の歌を歌ったり(笑)。日常に根ざしたものだったのに、音楽が商業化されて、プロ的に上手くないと歌ってはいけないみたいな雰囲気になって、コンプレックスで歌が嫌いな人が出てきたり……ということになってしまったんですけど。でも、もともと日常的に人間が歌いたいという欲求に対してカラオケが場を提供しているので、これはとっても良いことだなって思います。

唯野 何しろ気軽に歌えますからね。バンドを用意する必要は全くありませんし。

高田 バンドメンバーに気を遣う必要も無い(笑)。キー変更なんて、バンドだとちょっと言いづらい面もありますからね。

唯野 下手に歌ったら怒られるんじゃないかとか(笑)。そういうビクビクする要素はカラオケにはありません。

高田 本当の意味で歌を楽しめますよね。だから、もっともっとカラオケが広まれば良いなと思います。今日は実際にお会いしてお話ができて、とても楽しかったです。先ほど、唯野さんが実際に1曲歌っているところを拝見しましたが、口も開いているし、体も使って、声量もあって、ちゃんと歌われていました。

唯野 でも、歌唱に関してはまだまだ勉強しないといけないと思っています。そこは自分との戦いで(笑)。歌うことは自分との戦いで、カラオケについていろいろしゃべったりするのは、仕事として続けていきたいですね。

高田 好きなことを評論家業にまで高められるのは、すごいと思います。

唯野 それを書いた本が、2013年11月発売の『副業革命! スキマ評論家入門』になります(笑)。

高田 素晴らしい締めをありがとうございます!(笑)。僕もご著書を読んで、評論家を目指したいと思います!

(この項終了)

唯野奈津実(ゆいのなつみ)

1975 年、カラオケボックス発祥の地、岡山県生まれ。エンジョイシング代表。日本で唯一のカラオケ評論家®(商標登録済み)。カラオケライター。カラオケコンテンツの流行分析・カラオケルームのプロデュースなど、カラオケに関わるあらゆる分野を専門とする。カラオケ番組の企画相談・製作協力も多数担当。近年は自身のカラオケ評論家としての成功経験を生かして、評論家コンサルタントとして後進の評論家育成活動に力を入れている。著書『カラオケ上達100 の裏ワザ』、『副業革命! スキマ評論家入門』(リットーミュージック)。

唯野奈津実公式サイト「カラオケの世界」 http://enjoysing.com/

唯野奈津実フェイスブックアカウント http://www.facebook.com/natsumi.yuino

唯野奈津実メールアドレス(取材依頼・お問い合わせ用) info@enjoysing.com

高田三郎(たかださぶろう)

東京都大田区に生まれ、横浜に育つ。5歳から Piano、12歳からギターを弾き始める。大学在学中にロック・バンドTHE MEDICAL SOAPを結城し、作詞・作編曲・ボーカルを担当。その後「Red Zone Dancing」「ロッカバラードに針を」でプロ・デビュー。以後、作家活動と並行して、サポート・ヴォーカリストとして、浜田省吾、谷村新二、小柳ゆ き、村下孝蔵などさまざまなアーティストのレコーディング&ツアーに参加。マイケル・ジャクソン、スティーヴィー・ワンダーらを指導したことで世 界的に著名なヴォイス・トレーナー、セス・リグス氏に師事。従来のボイス・トレーニングにとどまらないヴォイス・プロデュースという独自の観点から、アー ティスト育成に総合的にかかわっている。著書には『ヴォーカリストのための全知識』、『高い声で歌える本』、『高い声で歌えるデイリー・トレーニング・ブック』、『もっとうまく歌える本』、『弾きながら歌える本』、『ボイトレ上達100の裏ワザ』など、監訳書に『ハリウッド・スタイル実力派ヴォーカリスト養成術』、『ハリウッド・スタイル強いノドの作り方』、『ヘヴィロック唱法の奥義』(いずれもリットーミュージック刊)などがある。

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