オンチを克服する方法〜高田三郎+唯野奈津実対談 カラオケで歌が上手くなる!(前編)

コラム by 高田三郎+唯野奈津実 2013/10/29

カラオケ評論家とボイストレーナーの初対談! 進化したカラオケを使って歌を上手くする方法を、前後編の2回にわたって考えていきます!

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コート・ダジュール大井町東口店にて。唯野奈津実(左)、高田三郎(右)の両氏

採点機能の搭載、録音・録画機能の装備、ネットワーク化、そしてアプリや携帯ゲーム機での展開など、非常に大きな進化をとげたカラオケは、ボーカリストにとっても非常に使える練習ツール兼発表の場になっています。でも、多くのボーカリストはまだまだそのことを知らないようです。カラオケをカラオケファンにだけ独占させておくのはもったいないということで、RandoMでは『カラオケ上達100の裏ワザ』著者の唯野奈津実氏(カラオケ評論家®)と、『カラオケで高得点をたたき出すボイトレ本』著者の高田三郎氏(ボイストレーナー)の対談を企画しました。カラオケを有効に使ってスキルアップして、表現の場を広げる参考にしていただけたら幸いです。まずは前編からお届けします!

得点アップを目指す生徒が急増!

唯野 『カラオケで高得点をたたき出すボイトレ本』を読ませていただいて、カラオケの採点機能にフォーカスを当てた本というのは今までに無かったので新鮮でした。良いところを狙いましたね。紹介されているエクササイズもピアノロール表示があるので、カラオケファンもとっつきやすい。あと、普通に歌の練習に使える練習法がいっぱい入っているので、ボイトレ本としても面白かったです。

高田 ありがとうございます。まさにそれが狙いで、カラオケの得点も上がるし、気が付いたら歌の実力も付いている……そうなるようなトレーニングを紹介したつもりです。

唯野 あとがきによると、採点を切り口にしたのは、得点アップを目指して来られる生徒さんが増えているからとのことですが。

高田 そうなんですよ。カラオケの得点を上げたくて僕のところに来る生徒のパーセンテージが、確実に増えています。レッスンが終わったあとも、「昨日、あれから採点カラオケに行ったんですけど、点数が上がりました!」という話になったりして(笑)。カラオケの得点を気にする人が、すごく増えているという印象です。

唯野 先生のレッスンを受けているのは、どのくらいのレベルの方なんですか?

高田 本当の初心者もいれば、プロのアーティストもいますし、アーティスト予備軍みたいな……ライブハウスでオリジナル曲を演って活動しているアマチュアもいて、幅広いですよ。まあアマチュアの場合は、アマチュアだけど相当歌が上手くなりたい人ですね。相当歌が好きじゃないと、やっぱり習うまでは行かないですから。

唯野 カラオケの得点にこだわるのは、アマチュアとか一般のカラオケファンが多くないですか? プロ志向の方は、逆にそれほど点数を気にしないように思えます。採点機能で良い点を取る歌が、必ずしも良い歌ではないというのは、よく言われることですけど。

高田 確かにフリーに歌った場合の上手い下手って、採点機能では評価できませんよね。でも、いかに原曲通り歌えるか、元のアーティストのコピーをいかに上手く、完璧にできているか。そういう基礎的な聴き取りと再現という練習をチェックするためには、すごく良いと思います。ものすごく使えるツールだなって。

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コート・ダジュール大井町東口店
南仏のコート・ダジュールをイメージしたカラオケ&パーティースペース。ぜいたくな空間の「VIPルーム」、迫力の音響・照明の「ライブルーム」など、多様なタイプのルームをご用意し、様々なお客様にお気軽にご利用いただけるコミュニケーションスペースです。
電話:03-5781-9888
住所:〒140-0011 東京都品川区東大井5-3-7プラザヤワタヤ4・5F

採点機能の賢い使い方

唯野 特に、新しい歌の覚え始めの時期には、採点機能は非常に練習に使えると思うんです。今の採点機能では、歌詞に対応した正しい音程の高さが画面上にバーのような形で最初から表示されていて、実際に自分が歌った音程の箇所については、色が塗られたり線が描かれたりする。つまり、正しく歌うべき音程と実際に自分が歌った音程とを、視覚的に比較確認できるんですね。そういう機能がありますから、それで音程をチェックして、「あ、ここが正しい音程なんだな」っていうふうに合わせて練習していけます。で、ある程度音程を覚えてからは、自分なりのフィーリングで歌っていく。そういう段階を踏むのが良いのかなって思っています。

高田 それは良い使い方だと思います。基礎的な音程が合っているかを、このように目で見て確認できるのはうれしいですよね。

唯野 これは画期的な機能です。音程を見ることができるガイドメロディが出たのは2007年で、“Premier DAM”のコンテンツのひとつ“精密採点Ⅱ”が最初です。『カラオケ上達100の裏ワザ』でも精密採点IIを紹介していますが、このときに初めて音程バーが出るようになったんですよ。

高田 さすがカラオケ評論家ですね! まさに生き字引! 自分が歌った音程の軌跡表示はDAMとJOYSOUNDでは違いますけど、その辺も面白いと思います。

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唯野 JOYSOUNDは線で表示されますが、まっすぐを保ち続けるのが結構難しいです。ちょっとした息のブレとかでもガクンと落ちてしまうので、合ってる/合ってないの判定が厳しい。でも、総合評価にはそれほどシビアに反映されないので、歌っているときはそこまで神経質にならなくても良いと思います(本インタビュー後、JOYSOUNDの仕様が変わって、線による軌跡表示ではなく、音程バーに色が塗られる形式になりました)。一方でDAMの方は線が出なくて、ある程度合っていればバーが塗られる方式です。

高田 DAMの方は、ピアノロール譜をクリアしたタイミングで表示される流れ星の色が何色かで、音程評価が表されているそうですね。『カラオケで高得点をたたき出すボイトレ本』の取材で、開発チームの方に聞いて初めて知りましたけど。

唯野 この話は結構知らない人が多いんですけど、実はちゃんと小冊子なんかには書いてあるんですよね。青、赤、黄色、虹色、何も出ないの5種類があって、虹色が一番高評価。それを踏まえてTVの精密採点DXを使った番組を見ると、かなり面白いですよ。

高田 それを知らないと、同じように塗られているのに何で点数が違うのかが分からない(笑)。

唯野 そうなんですよ。マークがいっぱい出ても、加点されていない場合もありますからね。

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オンチで有名だった唯野氏の幼少期

高田 『カラオケ上達100の裏ワザ』を読ませていただきましたが、この本も画期的ですよね。歌を楽しもうっていうメッセージが伝わってきて、とてもうれしかったです。こういう視点で書かれている本って無かったですし、いまでもこれ1冊しか無い。唯野さんがカラオケを究めようと思われたきっかけは何だったんですか?

唯野 自分がとにかくカラオケが大好きだというところが、すべての発端です。単純に子供のころから歌が好きだった、カラオケが好きだった。ただ、本の帯にも“ジャイアンでも上達する……”と書いてありますが、まさに私もジャイアンと同じように、子供の頃からオンチで有名だったんです。もちろん今でも、プロ歌手の方々には遠く及びませんが、なんとか人並みに歌えるくらいには上達することができました。そんな、歌が苦手だった自分が試行錯誤の末に上達した過程、それを自分なりに……歌が苦手な人から見た練習法をいっぱい書き出していったのが、『カラオケ上達100の裏ワザ』なんですね。

高田 素晴らしい。やっぱり、プロのボイストレーナーは生まれつき上手い場合が多いから、「なんで下手なのか、分からない!」ってことがありますから。「何でできないの?」って。本来はできない人の気持ちを考えて、何でできないかを見つけて教えるのが仕事のはずなんですけどね。

唯野 音程なんかでも、歌が得意じゃない人って、耳で聴いても音の高低の違いが分からないんですよ。メロディが上がったのか下がったのかすら、分からない。今では採点機能を使えば視覚的に音程を確認できますので、便利な時代になったと思います。その機能がなかった時代の練習法として、『カラオケ上達100の裏ワザ』で紹介しているのが、音程をグラフ化して、それを見て練習するという方法です。エクセルで自作したものですけど、こういうグラフを見ながら歌えば、音の高さを視覚的に判断できるので、例えば「ここは高めに歌おう」というように、いつも以上に音程を意識して歌うことができるのです。

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『カラオケ上達100の裏ワザ』より、“メロディの構成を確認する方法”のページ

高田 これなら譜面を読めない人でも、とっつきやすいですね。しかし、自分でエクセルを使ってグラフ化するなんて、すごいモチベーションの高さだと思います。

唯野 そこはやはり、カラオケを好きだというところからスタートしているのが大きいです。それに、これを作ると、やっぱり意識が変わります。(正しい音を)分かっていて音程を取れないのと、分からずに取れないのとでは意味が違いますので。分かって取れないのであれば、今度は音を取る練習だけすれば良いんです。でも、そもそもどこが正しいのか分からなかったら、練習のしようが無いわけで。

高田 上か下かも分からなかったら、確かにそうですよね。

唯野 2つの音を聴かせて、どっちが高いか答えられない人は結構いるんですよ。

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唯野式オンチ克服法

高田 唯野さんは歌は独学なんですか?

唯野 いえ、習ったこともありますし、今も音楽プロデューサーの鈴木康志先生から個人指導を受けています。

高田 今でも習っているというのは素晴らしいですね。

唯野 歌の上手い下手で言うと、私は全然プロには及ばないレベルなので……。自分自身の歌の幅を広げていきたいなという個人的な思いもありますし、それ以外にも、自分が学んだことをカラオケファンにも還元していきたいという思いもあります。その思いで書き上げた本が、まさに『カラオケ上達100の裏ワザ』なのです。

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高田 すごいオンチだったのが直ったそうですけど?

唯野 ドレミファが分からない、音の高さの違いも分からない。そういう状態でした。

高田 それは、どういう練習方法で直したんですか?

唯野 カラオケに行っても歌わずに、ひたすらガイドメロディを聴くというのは、一時期ずっとやっていましたね。歌声で聴くよりも、単調な音色で聴いた方が、違いに気づきやすいんですよ。歌声って、単なる音として構成されているのではなくて、歌詞のフレーズが乗っていたり、声色の変化や発声の強弱による感情表現などがあったり、いろいろな要素が絡んでいるので、耳が慣れていない自分からすると音程を取るのが難しかった。自分では上がっているように聴こえるんだけど、楽譜を見たら同じ音だったり(笑)。

高田 確かに、感情が入ったり強く歌うと、同じ音でも上がったように聞こえますからね。あとは伴奏が鳴っていると分からないけど、単体だと分かったり……。

唯野 ありますね。なので、極力ガイドメロディを大きくして、集中して聴く。それで「あ、ここの音って一緒だったんだ」って学んだりとか、そういう気付きはありましたね。あとは自分の歌を録音して聴き直すというのが、すごく良い練習方法だったと思います。2000年くらいにICレコーダーが普及し始めたので購入して、それで録音した自分の歌声をまじまじと聴いて、そこで改めて自分の歌の下手さ加減を実感できたことは大きかったですね(笑)。

高田 やっぱり自分の歌を聴くのは本当に大事ですね。

唯野 自分では歌えていると思っているんですよ、やっぱり。私に限らず、歌が苦手だけど、どこが下手なのか分からない人、そういう人は自分では上手く歌えているつもりなんです。で、聴いてみると『あれ?』って感じになる。

高田 まずは気づくのが大切ですね。でも、聴いても分からない人も実はいるんですよ。「ここ、ずれているでしょ?」「え、どこがですか?」って。まずはそこから始めないといけない場合もある。

唯野 そうなんですよね。私もTV番組でカラオケがものすごく下手な人をロケで上手くさせるという企画で、歌唱指導役として呼ばれたことがあったのですが、そのときに歌った方が、まるっきり音程が合っていなかったんです。で、自分の歌を聴き返せば分かってもらえると思って、録音したものを再生したら、「いや、上手く歌えていると思います」って……。それは想定外だったので、どうしようかなと思って悩みました。

高田 それは大変でしたね。でも、直せたんですか?

唯野 部分的にですけどね。聴覚的に判断できない方には、やはり視覚的に判断してもらう他ないと。だから、そのときは採点機能を使って音程バーを表示して、「ここに当てるつもりで歌ってください」ってアドバイスをしました。「ここに当たらなければ、あなたの音は合っていないんです」って。そうやって視覚的につかんでもらって、ここに当たるのが正しい音なんだっていうふうにやって、4時間くらいでなんとかなりました。このように、耳で聴いて分からなければ、目で見て理解することが、正しい音程をつかむコツかもしれませんね。

高田 昔はそれができなかったわけですから、良い時代になりました。

唯野 画期的ですよね。その辺りはカラオケが進化したことによる恩恵ですね。

(後編に続きます)

唯野奈津実(ゆいのなつみ)

1975 年、カラオケボックス発祥の地、岡山県生まれ。エンジョイシング代表。日本で唯一のカラオケ評論家®(商標登録済み)。カラオケライター。カラオケコンテ ンツの流行分析・カラオケルームのプロデュースなど、カラオケに関わるあらゆる分野を専門とする。カラオケ番組の企画相談・製作協力も多数担当。近年は自 身のカラオケ評論家としての成功経験を生かして、評論家コンサルタントとして後進の評論家育成活動に力を入れている。著書『カラオケ上達100 の裏ワザ』、『副業革命! スキマ評論家入門』(リットーミュージック)。

唯野奈津実公式サイト「カラオケの世界」 http://enjoysing.com/

唯野奈津実フェイスブックアカウント http://www.facebook.com/natsumi.yuino

唯野奈津実メールアドレス(取材依頼・お問い合わせ用) info@enjoysing.com

高田三郎(たかださぶろう)

東京都大田区に生まれ、横浜に育つ。5歳から Piano、12歳からギターを弾き始める。大学在学中にロック・バンドTHE MEDICAL SOAPを結城し、作詞・作編曲・ボーカルを担当。その後「Red Zone Dancing」「ロッカバラードに針を」でプロ・デビュー。以後、作家活動と並行して、サポート・ヴォーカリストとして、浜田省吾、谷村新二、小柳ゆ き、村下孝蔵などさまざまなアーティストのレコーディング&ツアーに参加。マイケル・ジャクソン、スティーヴィー・ワンダーらを指導したことで世 界的に著名なヴォイス・トレーナー、セス・リグス氏に師事。従来のボイス・トレーニングにとどまらないヴォイス・プロデュースという独自の観点から、アー ティスト育成に総合的にかかわっている。著書には『ヴォーカリストのための全知識』、『高い声で歌える本』、『高い声で歌えるデイリー・トレーニング・ブック』、『もっとうまく歌える本』、『弾きながら歌える本』、『ボイトレ上達100の裏ワザ』など、監訳書に『ハリウッド・スタイル実力派ヴォーカリスト養成術』、『ハリウッド・スタイル強いノドの作り方』、『ヘヴィロック唱法の奥義』(いずれもリットーミュージック刊)などがある。

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