五十嵐洋とヒロヒロヤの『作曲のススメ』(後編)〜歌もののバックのピアノの弾き方は、かなり謎が多くて……

コラム by RandoM編集部 2013/08/06

作曲大好きトークの後編では、ヒロヒロヤ氏と五十嵐洋氏の音楽的ルーツに肉薄! なぜカバーが大切なのか? ソングライティングの参考になるアーティストは? などなど、楽しく実用的な内容です。

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『パッチワーク式ソングライティング入門』の著者とイラストレーターが、せきららに語る作曲と音楽のこと。後編は、音楽ファン同士の気の置けない対談といった感じになっています。皆さんもぜひたくさんのグッドミュージックを聴いて、素敵な音楽を生み出してください!

イラストの仕事は今回が初!

五十嵐 今回の本はヒロヤさんのイラストが入って、とても楽しい感じになったので感謝しています。絵はずっと描かれていたんですか?

ヒロヤ イラストのお仕事は今回が初めてでした。1年半くらい前から『キーボード・マガジン』の本誌とサイトで4コママンガを描いているんですけど、それまでは全然そういう活動もしていませんでしたし……。

五十嵐 家でいたずら描き程度ですか?

ヒロヤ 実は、家でもほとんど描いてなくて(笑)。まあ小学校のときは、マンガ好きだったので人並みには描いてましたけど……。

五十嵐 『キーボード・マガジン』で描くようになったきっかけは、なんだったんですか?

ヒロヤ 最初は、あるあるネタをブログにテキストベースで書いていたんです。でもあるときマンガにしてみようと思って、4コママンガで描いてみた。そうしたら、友だちが2人くらい「面白いね!」って言ってくれたんで、翌日も描いてみた。そうしたら、今度は5〜6人が「面白い!」と言ってくれた。それで僕も面白くなってきて、毎日あるあるネタを1つずつ描いていったら、2ヶ月くらいで『キーボード・マガジン』の編集の方の目に留まって……。よく“ブログを書いていたら本になった”なんていう話がありますけど、まさにそんな感じですね。

五十嵐 面白いですね。でも、音楽を分かっている方が描いてくれたので、内容に即したイラストになっていてうれしかったです。

ヒロヤ 音楽用語を視覚化するというところで、ちょっと強引なところもありましたけどね。分数コードだったら、1階と2階で別のことをしているとか。サビは英語でブリッジというので、橋を描いてみたり(笑)。

五十嵐 3人の登場人物のキャラは、どういう感じで決まったんですか?

ヒロヤ 博士はベートーベンみたいな髪型になっていて、白衣を着て、でも下だけはフレアーパンツになっている(笑)。そこは、ちょっとミュージシャンっぽさを出したつもりです。

五十嵐 細かいですね(笑)。

ヒロヤ シンジローは、“勢いがあるけど、おっちょこちょい”という設定でしたので、髪型を少年漫画にありがちな“長すぎず、短すぎず、かつ少しボサっとした感じ”にしました。そこで勢いとおっちょこちょい具合を出しています(笑)。こずえちゃんは、“ちょっと強気”という設定でしたので、髪型や服装は、大人しくはないけど、ギャル度も高くない中間路線を目指しました(笑)。

五十嵐 詳細を聞くと面白い(笑)。

2人が聴いてきたジャズ

五十嵐 ヒロヤさんは、どんな感じで音楽を始められたんですか?

ヒロヤ 最初はギターからで、パンクを演っていました(笑)。最初はブルーハーツが好きだったんですね。その後で、ルーツだということでピストルズを聴くようになって、そうしたらピストルズがTHE WHOのカバーをしていた。そこからTHE WHOを聴くようになって、あの辺の時代の音楽にも興味を持つようになって、ストーンズとかビートルズを聴き始めました。あとは、ブルースも聴くようになって、20歳くらいからはジャズを練習するようになった。そういう感じですね。

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ヒロヒロヤ氏

五十嵐 ジャズをやろうと思ったきっかけは?

ヒロヤ 始めた当初はまだ、音楽的には関心がそれほどあったわけではないんです。ただ、「ジャズ理論やジャズの演奏をマスターするには、若いころじゃないと厳しいかな?」っていう思いがありまして。別にプロになるとかそういうつもりも全く無く、「今のうちからやっておこうかな?」くらいの気持ちで独学で始めたんです。それで、とりあえずコードの勉強のつもりでジャズを学び始めたら、ビバップがどうこうって書いてあって、「なんか、やりたいことと違うなぁ」と思いつつ……。でもそのうち、普通に教科書どおりにモダンジャズを演奏するようになったっていう感じですね(笑)。

五十嵐 僕は中高生のころ、全然ジャズを好きではなかったんですけど、「聴いておいた方が良いんじゃないか?」というブームが来て(笑)。それでブルーノートなんかを聴いたり、ザ・サイドワンダーとかハービー・ハンコックの『ウォーターメロンマン』といったジャズ・ロックを聴いたりしていました。マイルスがあんまりよく分からなかったし、周りにジャズに詳しいヤツもいなかったので、そんな感じでしたけど。あとは、オルガンのジミー・スミスが一時期好きでしたね。

ヒロヤ 僕もジミー・スミスは好きですね。自分でも、左手や足でベースを弾いたりしますし……。黒人のブルース寄りのジャズ……いわゆるファンキージャズが好きなんですよね。ブルースをちょっとおしゃれにした、みたいな。一方でビル・エバンスみたいな、白人寄りのちょっとクラシカルな感じがするものは、ほとんど聴いていないんです。

五十嵐 でもピアノの人って、結構白人寄りの方に行きがちですよね。

ヒロヤ クラシックピアノをやっていた人は、そっちに行くんでしょうね。僕はロックとかソウル、ブルースを聴いた後だったので、ファンキージャズの方がしっくり来るんです。

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五十嵐洋氏

ピアノの左手は何をしている?

五十嵐 前編で引き出しを増やすためにはカバーが大事みたいな話が出ましたけど、ヒロヤさんはどんな曲をカバーしてきました?

ヒロヤ ギター時代は、クリームのカバーをしていましたね。それでペンタトニックを覚えて、なんとなくのブルースの雰囲気をつかんで、それを鍵盤に置き換えたりしていました。だから音感的な部分は、かなりギターで鍛えられたんだと思います。鍵盤だと、特に最初はキーを変えたらとたんに弾けなくなるっていうことがあると思うんですけど……。ギターは指板上でグラフィカルに覚えられるし、移調も簡単にできる。ポジションの相対的な感覚は、ギターの方が覚えやすいですよね。

五十嵐 その通りですね。鍵盤では、どういうカバーをしていました?

ヒロヤ 「レット・イット・ビー」的な歌ものもコピーしましたし、ブルースを演りたかったので、ブギウギなんかを弾いていましたね。最初はギターだったので、ギタリストからするとブギウギピアノが弾けるのはすごくかっこよく見えたんですよ(笑)。

五十嵐 それは分かる。そこからファンキージャズにつながっていくわけね。ちなみに、ドクター・ジョンはどうですか?

ヒロヤ 大好きですね。ブルースではあんまり弾かないシックスとかナインスの音が入っていて、洗練されていますよね? それで「おしゃれなブルースって良いなぁ」と思っていたら、いわゆるモダンジャズでもブルージーな人たちがいることを知って。オスカー・ピーターソンとかがそうなんですけど、ああいうのを聴いて、「ああ、ジャズでもあんまり難しくなく、軽快にスウィングしてブルージーなジャンルってあるんだな」って。僕はそこで止まっているので、小難しいジャズは演奏らないんですけど(笑)。五十嵐さんは、どういう曲をカバーしていました?

五十嵐 大学のときにCSN&Yのカバーを何曲もして、ニール・ヤングが6弦をD音に下げているとか、そういう研究をしていました。とにかく情報が無いので耳コピして、情報を共有する。そうやってレパートリーを増やしていきました。歌もののバックのピアノの弾き方なんかも、かなり謎が多くて……。

ヒロヤ バンドの中で、左手が何をすれば良いかが分からない(笑)。ルートをオクターブで弾くとうるさ過ぎたり、うるさくなかったり。かといって、左手が“ぶら〜ん”としているのもおかしい。ライブビデオなんかを見ると、やっぱりオクターブで弾いていたり、“ド→ソ→ド”ってやってたりということが多いですよね。

五十嵐 僕は、同じバンドのピアニストを横で見ていて、左手の弾き方を覚えましたね。オクターブだったり、“1度→5度→8度”だったり、ときどき“1度→9度”だったり。ライブビデオも無い時代に、彼がどうやって研究していたのかは不明ですが、彼がいなかったら僕はいまだに歌の伴奏ができないかもしれない(笑)。あとはビートルズの『レット・イット・ビー』という映画を見て、だいぶ分かったところがあります。ただ、あれはそんなに複雑なことはやっていないから、おそらくピアノが専門の人は、それを自分なりに発展させていったんだろうな、と。

ヒロヤ キャロル・キングの曲の中で、ソロで弾いているところに注意すると、「あ、“ド→ソ→ド”って弾いているな」というのが分かったりもしますね。それをバンドでも、手癖で弾いていたんじゃないかなとは思います。でも、いま自分が何をしているかって言われたら、疑問も持たずに無意識に弾いているから、解説できないんですよね(笑)。

オススメのアーティスト

——では、最後にポップスのソングライティングをする上で、聴いておくと良いアーティストをご紹介いただけますか?

五十嵐 J-POPだと、ミスチルには面白い進行の曲がいっぱいあるし、好きな曲もたくさんあるのでオススメしたいですね。あとは、小田和正やマッキーも参考になると思う。特に鍵盤で作る人は、まずはマッキーを聴くのが良いんじゃないでしょうか? 洋楽だと、やっぱりキャロル・キングとポール・マッカートニーは外せない。曲の作り方がはっきりしているし、変な言い方ですけど、“凡庸にして天才、天才にして凡庸”みたいなところがある。つまり、ものすごいポピュリズム的なところと、天才的なセンスが常にうまく同居しているんですね。そういう人は、なかなかいないですよ。ジョニ・ミッチェルなんかは、凡庸性も多少はあるけど、天才性の方がはるかに強い。でも、ポールとキャロル・キングは絶妙のバランスで同居している。

ヒロヤ 確かにポール・マッカートニーとキャロル・キングは、奇をてらったコードなんかをあんまり使っていないのに、個性的だし良いメロディを作っている。すごいと思いますね。あと僕がオススメするとしたら、ブライアン・ウィルソンですかね。

五十嵐 ああ、ブライアン・ウィルソンも良いですよね。いま名前が挙がったような人たちは、音楽教師的な理論派ではないかもしれないけれど、自分のギターやピアノの中でのセオリーみたいなことがしっかり身に付いているんだと思います。だから、“こう来たらこうでしょ?”みたいな独自の感覚が、それぞれにある。そういう感覚を身に付けるためにも、ぜひたくさんカバーをしてほしいなと思います。

五十嵐洋(いがらし・ひろし)

金沢市出身。10代半ばからバンド活動を開始。自作曲で第10回世界歌謡祭出場。90年代は、さねよしいさ子、国本武春のCD制作でプロデューサーとして 活躍。以降、井上陽水「Under the sun」参加。CX系アニメ「クマのプー太郎」のテーマ曲制作。西村知美主演の手話ミュージカル「オズの魔法使い」音楽制作。文部科学省の衛星放送である 「子ども放送局/ジュニアミュージックステージ」の企画制作。TBS系アニメ「じゃがいぬくん」、NHKテレビ「おでんくん」「ズモモとヌペペ」の作編 曲、ヒーリング KOTOシリーズ(ビクター)プロデュースなどさまざまな企画の音楽制作を手がけている。また、長年にわたってソング・ライティング教室の講師も務め、後 進の育成にも力を入れている。著書『みんながつまずくギター弾き語りの難関をクリアする本』『ポップスのピアノ伴奏ができるようになる本』(共に小社刊)

ヒロヒロヤ

キーボーディスト兼マンガ家。
以前より”あるあるネタ”をブログやツイッター等にて発信していたが、それにあきたらず、いつしかマンガで表現するようになる。
普段は一応、さまざまなアーティストのサポートとしてライブやレコーディングを行ったり、ソウル、ジャズ、ブルースなどのライブハウスでの演奏や、楽曲制作など、精力的に活動している。
意外と隙間時間の多いミュージシャン稼業とマンガ稼業をどうにか両立できないものかと日々思案している。

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