五十嵐洋とヒロヒロヤの『作曲のススメ』(前編)〜やっぱり音楽って、ある種の自己解放だと思う

コラム by RandoM編集部 2013/07/31

詞先? 曲先? オケ先? 『パッチワーク式ソングライティング入門』の著者とイラストレーターが、作曲をテーマにぶっちゃけトークを展開! これから曲作りを始めたい人も必見です。

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楽器が弾ける人も、弾けない人も、気軽にソングライティングを楽しんでほしい。そんな思いで五十嵐洋氏が著した『パッチワーク式ソングライティング入門』は、付録CDに収録されたさまざまなコード進行の上で鼻歌を歌えば、曲が作れてしまう実践的な内容。本書の発売を記念して、五十嵐洋氏とイラストを担当したヒロヒロヤ氏の対談を前後編の2回に分けて掲載します。楽しい作曲ライフに、一緒に歩を進めましょう!

詞先? 曲先?

——まずはお2人の作曲方法から、伺っていけたらと思います。

五十嵐 僕はギターを弾きながら、歌って作ることが多いですね。だから本当にこの本の通りで、鼻歌作曲法。ただ、鼻歌もラララ唱だと楽しくないから、歌詞が先にあると作りやすい。いわゆる詞先ですね。だから歌詞が無い場合は、自分が持っているレコードとかCDで、歌を覚えていない、メロディを忘れている英語の歌詞を使って、適当に歌ったりもします。ラララだと、どうも熱心になれないんですよね(笑)。

ヒロヤ 僕はコードの響きから作る場合もあれば、何かしら思い付いたメロディがあって、それをコードに当てはめる場合もあります。でも、詞先は苦手ですね。1回だけやったことがあるんですけど、字数が最初から気になっちゃってすごく作りにくかった(笑)。あのときは歌詞に対してメロディが足りなかったりしたので、サザン並みに詰めて提出したら、NGだったんですけど……。だから僕はラララで歌うとか、ピアノで右手のアドリブで作るとか、制約が無い方が作りやすいです。

五十嵐 全然違って面白いですね(笑)。

ヒロヤ 詞があった方が作りやすいというのは、結構ビックリです。

五十嵐 曲調に合わせて文字数を変えてよいという条件であれば、割とやりやすいですよ。ガチガチに決まった、厳密な歌詞だと、確かに制約になってしまいますけど……。でも、例えば歌詞が3部形式だったときに、Bパートの歌詞はすごく面白い、語呂が面白いなとか、発想が面白いなって思えたら、そこから曲を作る楽しみが広がる。自分の場合はずっと歌ってきたから、言葉で楽しみが広がった方が良いなってところがありますね。

ヒロヤ 歌詞のイメージを音楽に変換するという感じですか?

五十嵐 うーん、そこまで深い感じではないんですよね。歌詞を見て、とにかくギターを弾きながら歌ってみる、ということで(笑)。ただ、歌詞のイントネーションは結構大事かもしれない。歌詞のイントネーションに引っ張られて、メロディが出てくるというのはありますからね。

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五十嵐洋氏

曲は鼻歌で作る人がほとんど

五十嵐 ヒロヤさんはいま、曲を書くとしたらどこに向けて作るんですか?

ヒロヤ 提供用と、自分のバンド用ですね。自分のバンドは、いきものがかりみたいな編成で、女性ボーカルと鍵盤、ギターが男。サポートでドラマーもいるんですけど、ベーシストがいないので、僕がドアーズみたいに左手でベースを弾いたりしています(笑)。あと、曲によっては本当にベースを弾いたりもして。

五十嵐 おー、かっこいいじゃないですか! 多才ですね。でも、そういうバンドでも曲先で作曲しているわけですか?

ヒロヤ ええ。曲先で、それに彼女が詞を乗せる感じです。それで僕が、歌詞に合ったアレンジを考えて……。まあ、普通のポップな感じのロックバンドなんですけどね。でも周りに聞いても、詞先が得意な人は割と珍しいですよ。

五十嵐 そうですか? 僕の周りは詞先が好きという人が多いし、極端な人は詞が無いと曲を書かない(笑)。

ヒロヤ 詞先の方が歌詞に合った曲ができるから、音楽的かなとは思いつつ……。でも、やっぱりラララの鼻歌で作ってしまう(笑)。

五十嵐 まあ歌詞があるかどうかは別にして、やっぱり鼻歌で作る人がほとんどじゃないですか? 歌ものの場合は、そうじゃない方が難しい気がします。以前、小林亜星さんがTVに出ていましたけど、やっぱりピアノでコード進行を弾いて、鼻歌を歌っていましたし……。尾崎亜美さんが、そうやって即興で作詞作曲するのをTVで見たこともあります。

——鼻歌作曲法で歌を作っていく場合、どうすればメロディが出てくるようになるんでしょう?

五十嵐 最初は、鼻歌がコードに合っているかどうかが自分では分からないわけです。だからまずは焦らずに、『パッチワーク式ソングライティング入門』のCDに合わせて歌うところから始めてほしいですね。コード進行の基本である2コードから始まって、いろいろなコード進行でカラオケが用意されていますから。あと、僕が教室で教えていても、結構恥ずかしがってしまって、尻込みして歌わない人が多いんです。ちゃんと声を出して歌わないから、逆にコードと鼻歌がずれちゃってる、みたいになってしまう。

ヒロヤ いきなりかっこいいメロディができるなら良いんけど、その自信も無いから……っていう。

五十嵐 そうそう。でも絶対にいきなりできるわけは無いんだから、まずは照れを克服しないといけないわけです。自己解放っていうのかな? やっぱり音楽って、ある種の自己解放だと思うし。それで慣れてきて、恥ずかしいという気持ちが取れるようになってくると、皆さんいろんなことができるようになりますね。だから最初の自己解放が、一番大事だと思います。カラオケボックスを使っても良いし、深夜の公園でも良いので、“照れずに歌うということ”をクリアしてもらえれば、その先は本当に面白いと思いますよ。もう、楽しくてしょうがないと思う。

——バラ色の作曲人生ですね。

五十嵐 その上で、いろいろな音楽を聴いたり、自分でカバーをしたりすれば、どんどん引き出しが増えていきます。なんかちょっとコードを弾いて歌ってみようと思っても、あるコードから次にどのコードに行くかというときに、何らかのイメージみたいなものにインスパイアされてコードが動くはずで、そのための引き出しはやっぱり多い方が良いでしょう。

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ヒロヒロヤ氏

サビから作る? 頭から作る?

ヒロヤ AメロBメロサビ……という構成の曲だったとして、五十嵐さんはどこから作るか決まっています?

五十嵐 たまにサビから作ることもありますけど、僕は最初から作ることが多いですね。

ヒロヤ ああ、そうですか。僕はサビから作る派なんですよね。

五十嵐 サビから作る人も多いですよ。

ヒロヤ サビの後にだいたいAメロを作って、一番困るのがBメロ。サビにつなげないといけないし、Aメロからも綺麗につながらないといけないし……。だから、すごくブロックごとに作っている感じなんです。「音楽的には頭から作る方がと良いだろうな」とは思いつつも、そうなっちゃんですよねぇ。

五十嵐 頭から作るのが良いかどうかは分からないですけど、頭の方のAメロはリスナーにしゃべりかけるような感じの部分だと思うんです。そこがうまくいくと、そのままずっと続いて作れちゃう。でも最初の語りかけがうまくいかないと、なかなかやる気が出ない。だから、最初から作るようにしているんですよね。

——『パッチワーク式ソングライティング入門』の巻末にはコード進行例が紹介されていますが、これはAメロでもBメロでも、サビでも使えるとのことですが?

五十嵐 コード進行は、どこに当てはめても使えるんです。既存の曲でも、AメロBメロサビがあって、Aメロとサビはほとんど同じコード進行という例は結構あります。ただ、Aメロでは4拍ずつの変化だったのが、サビでは2拍ずつの変化になっていたりして、それだけで全く違うように聴かせている。あとは、いまヒロヤさんがおっしゃっていたブロックの連結ですよね。本でも紹介していますが、連結の方法にもいろいろあって、これも非常に大事です。だからコード進行も大事だし、メロディももちろん大事だし、連結も大事。それを満遍なく注意して、ソングライティングを楽しめると良いですよね。そういえば昔、オフコースはメロディも歌詞も無い状態でバンドのオケだけ録音して、後からメロディと歌詞を考えるという作り方をしていたそうです。

ヒロヤ 確か、小室哲哉さんもそうらしいですよ。そういう人たちって、多分オケの雰囲気からインスパイアされるんでしょうね。

五十嵐 だから、きっかけはいろいろあるということですね。最初の内は、自分に合った方法をいろいろ探ってみるのが良いでしょうね。

(次回は後編をお送りする予定です)

五十嵐洋(いがらし・ひろし)

金沢市出身。10代半ばからバンド活動を開始。自作曲で第10回世界歌謡祭出場。90年代は、さねよしいさ子、国本武春のCD制作でプロデューサーとして 活躍。以降、井上陽水「Under the sun」参加。CX系アニメ「クマのプー太郎」のテーマ曲制作。西村知美主演の手話ミュージカル「オズの魔法使い」音楽制作。文部科学省の衛星放送である 「子ども放送局/ジュニアミュージックステージ」の企画制作。TBS系アニメ「じゃがいぬくん」、NHKテレビ「おでんくん」「ズモモとヌペペ」の作編 曲、ヒーリング KOTOシリーズ(ビクター)プロデュースなどさまざまな企画の音楽制作を手がけている。また、長年にわたってソング・ライティング教室の講師も務め、後 進の育成にも力を入れている。著書『みんながつまずくギター弾き語りの難関をクリアする本』『ポップスのピアノ伴奏ができるようになる本』(共に小社刊)

ヒロヒロヤ

キーボーディスト兼マンガ家。
以前より”あるあるネタ”をブログやツイッター等にて発信していたが、それにあきたらず、いつしかマンガで表現するようになる。
普段は一応、さまざまなアーティストのサポートとしてライブやレコーディングを行ったり、ソウル、ジャズ、ブルースなどのライブハウスでの演奏や、楽曲制作など、精力的に活動している。
意外と隙間時間の多いミュージシャン稼業とマンガ稼業をどうにか両立できないものかと日々思案している。

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