ポップ・ミュージックの最終形、というファンタジーに挑む / 環ROY&戸高賢史(ART-SCHOOL)対談

コラム by 土屋綾子(RandoM編集部)/写真:後藤武浩 2013/04/19

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4月3日、4枚目のアルバムとなる『ラッキー』をリリースしたラッパー、環ROY。三浦康嗣(口ロロ)、Himuro Yoshiteru、蓮沼執太、戸高賢史(ART-SCHOOL)、ゴンドウトモヒコと各方面から迎えたプロデューサー達による多彩なトラックもさることながら、歌詞にも出てくるように「いま」「ここ」に向けられた彼のフラットな目線が感じられるリリックも、実に心地よさを感じさせる作品になっている。
今回、本作でプロデューサー陣の1人として名を連ね、ライブセットでのステージも共にしているART-SCHOOLのギタリスト、戸高賢史と環ROYの対談を行うことができた。『ラッキー』を発表したばかりの環ROYが考え投げかける「音楽と音楽家のこれから」の話。

―戸高さんとROYさんの関係はいつごろからなんですか?

環ROY(以下ROY):Twitterからだよね。もともとお互いの名前は知ってたけど。

戸高賢史(以下戸高):どちらからともなくフォローして。

ROY:そう。で、今回トディに『ラッキー』の作曲を頼んだのは、12音階を操作しながらヒップホップ作るのがきっと上手にできるんだろうなと思ったから。今日びヒップホップは普通に暮らしてたらなんかしら影響受けてるような、それぐらい大衆化した音楽だと思うから、まずそのくらいの尺度で全然よくて、その上で上手に12音階を操ってもらったら、楽曲として機能しやすくなるんじゃないかなって思ったの。あと自分がやればなんでもヒップホップになるって思いもあったから、割とフランクにお願いした。

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音楽のないものねだり関係

―2人は普段どんな話をするんですか?

ROY:くだらない話。時事ネタとか。

戸高:ポップ・ミュージックは終わりつつある、とか。サカナクションが超いい! とかさっきここに来る途中で言ってたね。

ROY:そう! いきなりだけど。今日その話がしたくて。なんかね、そもそも西洋のクラシックの流れって、音楽の理論をどんどん完成させながら進んできたじゃない。もう完結させたとも言うじゃん。で、ジャズが生まれて、大衆化を進めてきたでしょ。60年代前後にモード・ジャズってのが出現するの、それってコード進行での演奏法をめっちゃ、行き詰るところまでやった結果だと解釈したんですよ。その後ジャズはどんどん即興演奏に向かって行って、その動きと同時くらいにロックが出てくるよね。それは俺、どちらも音楽の発露、源泉として「初期衝動を求めている」っていう解釈をしたのね。音楽というものが理論としては分かってきたし、だいぶまとまってアクセスしやすくなったから、「次はもう初期衝動でいっていいんじゃないの?」ってみんなが思ったっていうか。そっちが気になりだしたというか。
で、今ポップ・ミュージックの一番太いラインってやっぱりロックだなって俺思うのね。

戸高:ポピュラリティっていう話で行くと、ロックはスタジアムとかでオーディエンス全員がシンガロングできちゃう感じだもんね。

ROY:うん。やっぱね、ロックは初期衝動が主体にある音楽表現だと思うの。前の世代は研究とか、もっとほかの要素が主体になってたけど、そういうの一旦終わったからさ。つって。なんか……昔はみんな27歳で死んだりとか、殺されたりとかあったじゃん。

戸高:うん、イアン・カーティスとかカート・コバーンとかもね。27クラブっていうやつだね。

ROY:ジミヘンとかもだね。初期衝動を主体としすぎちゃってて、そういう方向に振り切れやすかったのかなぁって思ったんだ。

戸高:それはなんとなく分かる。

ROY:でね、それを経てロックってさ、なんでテクノ化するんだろうか?って思ったのさ。一方で今アメリカのヒップホップはロックに向かってるんだけどね。

―そこでサカナクションの話題が最初に出たわけですね。ロックの話で初期衝動っていうキーワードが出て、ヒップホップはロックに向かっているのは……

ROY:ざっくり言うとないものねだりではあると思うんだけど。

―初期衝動でやってたから、理論とかミニマリズムが欲しくなってテクノに行き着くってことなんでしょうか。

ROY:ね。どうなんだろう。そうなのかな?
なんか、ヒップホップとテクノって兄弟くらいなイメージなんですよね。実際どうかわかんないけど、テクノも黎明期ってサンプリングとか使ってたみたいで。ヒップホップはね、今ロックに向かってる。リル・ウェインとかたまにホントにロックスターみたいなんですよ……。そういえばレディオヘッドもトラック感あるよね。

戸高:ああ、レディオヘッドかぁ。4枚目あたりは特に顕著かもね。最近ちょっとチェックできてないけど。

ROY:ロックを1人の人間として考えるとやっぱり「テクノ好きだよねロックくん!」ってならない?

戸高:なるなる。

ROY:でしょう? その尺度。やっとわかってくれた。

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戸高:でもなんでテクノを求めるのか、はちょっと……俺は別にテクノを求めてないからわかんないから「こうだ!」とは言えないけど。

ROY:やってる人も言えないと思うけどね。

戸高:うん、多分言えないと思う。

ROY:でもそれ考えたほうが楽しいじゃん。だって進めたいんでしょう、ロックを。更新したいっていうか。だから変化したり交わったりしようとするんでしょ?

戸高:うん。なんかネクストレベルじゃないけど、まだ見ぬ形には、持って行きたいんだろうし。

ROY:でね、それって60年代以降のポップ・ミュージックがポップ・ミュージック自身に統合されるっていうか、回収される動きの1つなんじゃないかって思ったの、仮説なんですけどね。で、ヒップホップはロックに向かってる動きもあったりしてさ。それは足りてないものを補完したり……要は「ないものねだり関係」になってる。そういう風に考えたの。

戸高:なるほど。

ROY:そう。それで「次はなにするんだろうね?」って話、していけたらいいよね、ミュージシャン同士でって。トディと対談するから一応、それっぽい議題持ってきたんだよ(笑)。

朝起きたら曇り空で、なんだかブルーだ、なんて書いてくれたほうが助かる

戸高:なるほどね。でもくるりとかは今テクノを取り入れてないよね。

ROY:そっか。もう飽きちゃったのか。モードの1個だよね。みんな卒業するよね。テクノを取り入れることを。

戸高:卒業するんだけど、また新しいバンドが同じことやり始めるっていうサイクル。2000年入ってからずっと変わらない。

ROY:そう。やるよね。やっぱ、変えたいんじゃない? ロックってもっと他の可能性あるんじゃないのってことを言いたいんでしょ、それって。

戸高:変えたいんだろうね……そうだと思う。

ROY:って思ったよ。なんか……テクノのモードはずっと大事にしてるんじゃないかって思うの。バンド単位じゃなくて、ロックを1人のキャラクターと捉えて話した場合よ。

戸高:そうだね、脈々と持ってるだろうし、多分これからも持ち続けそうだね。テクノロジーも進化しているし、方法として融合するっていうことがすごくやりやすい時代っていうか。なぜならばモノがすごく多いし、より手軽にやれるようになってる。だってiPhoneで本チャンで使えるビート作れるでしょ?

ROY:ポピュラー・ミュージックだよね、まさしく。初期衝動が極まりすぎちゃって、それと同時にテクノロジーも超発展するから、マジで素養なしでできちゃうわけですよ。ちょっと前は、お金持ちの子で楽器を買ってもらって、習える人しかできなかったのが、今はパソコン買える人、経済にコミットメントしている人、まぁつまりほぼ全員が簡単に始められる。
その状態、今のタームってさ、結構行くとこまで行ってる気がするんだよ。俺らの音楽の受け取り方、消費の仕方、解釈の仕方、そういうのってずっとこの先もこのままってわけではないんじゃないかなって思うのね。って時間の中で「次の音楽ってどういう解釈をする/されるものを作ればいいんだろう?」というのを話せたらなーって。ここで終わってもいいけどね(笑)答えなんかないからさ(笑)

戸高:相当身もフタもない感じの(笑)。そういう思想だったらもうやることないんじゃない。

ROY:でもやるわけじゃん。

戸高:まあね。

ROY:それでも、音楽を作る動機を立ち上げていくでしょ。じゃないとダメじゃない? ってね。最近の俺は思ってる。

―分かった上で行きたい?

ROY:分かるっていうか、考えたい。だからこれから、何があったらいいんだろうね、っていう話が、語られなさ過ぎてる気がして。市場とか経済タームでは、ずっと語られてきてるんだけど……それって本末転倒じゃんって思ってて。

戸高:ミュージシャンとかって、意外と気付いてるんじゃないかな? そういうのは。こういう状況だっていうのは、直感で。「この先なにがあるんだろうな」とか。サカナクションの(山口)一郎くんとかも絶対いろいろ考えてるよ。みんな考えてると思う。この先何やろうかって。
でも俺は、こういうこと考え始めたら……うーん、楽しくなくなっちゃう。そんなの、着ぐるみの中に人が入ってるんだなぁって思いながら遊園地いくようなもんじゃん。

ROY:そうとも全然言えるし、「ファンタジーねえよ中に人入ってんだよ」って言う人も必要じゃん。ってか、今そういうことを言う人が少なすぎる気がしてるから、こういう話になってるんだと思うのよ。

戸高:だね。いや俺もそれはわかってるし、そういうことも確かに何回か言われてきたけど、もう1回自己暗示をかけてみようかなと(笑)自己暗示かけてもう1回遊園地楽しんでみようかな~と。みたいな感じ。

ROY:それはそれでいいじゃん。超かわいいじゃん。

戸高:それって君の言うかわいいってだけじゃなくて、自分の中では結構重要なモチベーションなんだよ。もう一度幻想を見てみたいなって。見なきゃやってられないっつーか。

ROY:むっちゃいいじゃん。でも今の時代ファンタジー、なくない?

戸高:ないよ、どう考えても。誰もが思ってるよ。

ROY:情報の速度が上がってるから、ファンタジーがどんどんなくなってるわけじゃん。だから相対してみると、昔よりファンタジーを持ちづらくなってるよね、っていうのが素直な感想っていうか立場。

戸高:スキマがないんだよね。

ROY:誰でも説明できちゃう。グーグルもすぐ答えてくれるしね。そう考えるとやっぱりファンタジー持てないってなるのが普通だよねって。っていうのが俺の立場なんだけど、トディは……

戸高:不自然でいい。恥ずかしいくらいで良いと思ってるよ。みんなもっとそうならなきゃダメなんじゃないかなって、そうでないと生きづらくない?ちょっと妄信的なくらい語れちゃうくらいじゃないとキツいんじゃないかな。

ROY:見えないところがあるほうがいいよね。

戸高:Twitterとか見てると思うんだけどさ。どうすれば自分が恥ずかしく見えないかっていう術を皆もっていて、ある種のリテラシーに添ってナナメからもの書くでしょ。それがもはや「こいつ超気をつけてんな」って、感じになっちゃうじゃない。ファンタジーはないよね。
なんか惜しげもなくポンと書ける人は羨ましいって思っちゃう。もう逆説的になっちゃっているというか。朝起きたら曇り空で、なんだかブルーだ、なんてロマンチックに書いてくれたほうが助かる(笑)

ROY:ロマンチック……でも俺ロマンチックなこと考えてない?

戸高:アルバムではすごいロマンチックだった。

ROY:ロマンチックに出してんだよ。それを踏まえて。

戸高:ホント(笑)?

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ファンタジーのない中で、ファンタジーに向き合いたい

ROY:こんなことを言ってるのは中盤なの。話としては。で、そもそもトディが言うところの「ファンタジー持ったほうが楽じゃん」とか、生きやすい、スキマがある、って言うってことは、ファンタジーはあったほうがいいってことじゃん。

戸高:まあね。ディズニーランドとか好きだし俺。

ROY:で、俺もそう思ってるの。じゃないとキツイじゃん。てか人なんてさ、なにか信じてないと死んじゃうよ。でも持ちづらいっていうことには向き合いたいの。その上でなにがしかのファンタジーを生み出したいのよ。トディの言った「今日は空が曇ってとてもブルーな僕……」っていいやん。ロマンチックじゃん。

戸高:今そういう情景に感じた事を書くだけで恥ずかしいよね。つらくない?

ROY:あるある。口笛はなぜ遠くまで聴こえるの、だよ。

戸高:そんなこと思うじゃん。普通。普通に考えてもいいじゃん。でも恥ずかしいし書いてもなにも有益なことないし、フォロワー減るんだろうなみたいな空気がある(笑)

ROY:(笑)すぐに数、経済の話になっちゃった。はーこわいこわい。悲しいよね。でも本当はフッって思ったら痛いことも言えたほうがね。気楽ですよね。

戸高:それがTwitterじゃないのか! とね、思ったりもするんだけど結局書かないで終わる。下書きフォルダ凄い事になってる(笑)。

ROY:だからこんなこと言っても作品出して、ああいう歌詞書いてるんだよ、ちゃんと。そこが、俺の立場としては「この話に向き合った上で、どんなファンタジーを描けるか」っていう動機なんだよ。トディの言う「ファンタジーがなきゃやってられないよ」っていうのもモチベートだと思うのね。夢を見たり、話したり、共有したりするって。そうしたいよ俺だって。
で、ここにきて俺の中の話がまとまってくると、こういうファンタジーもクソもなくなってきた世の中で、どんなファンタジーを描いていくかガチで向き合いたいです。ってのが俺の立場なんだと思うんだよね。

戸高:そうなんだ。でもね、それは世の中の本心だと思います。結局みんな絶対必要なんだと思う。冬になると幻想的なイルミネーションが絶えないわけだし、みんなファンタジックに生きたいと思ってるよ。

ROY:いいね。「世の中の本心」。

戸高:言葉ではどんどん言わなくなっていくんじゃないかな。言いづらくなってきた。恥ずかしいヤツって思われたくないから。でももうちょっとランクが上のヤツはそれを見て恥ずかしいって思ってるけどね(笑)

ROY:トディは、開き直ってて、あえて恥ずかしいことガンガン言ってるってこと?

戸高:まあそれはこのナードでチキンな性格上言えなかったんだけど……

ROY:ギターウルフみたいな。

戸高:ギターウルフはすごい。半端じゃないよ。ホントに。

ROY:そういうことでしょ、でも。

戸高:あのくらいスカッとさせてくれる人たちが必要でしょう。って思ってる。ギターウルフなんて国宝級でしょ。

ROY:そうだよ。軽やかだ。迷いがない感じ。

戸高:シンプルな凄みがある。ゴーイングマイウェイな人たちだからな。

ROY:そういう今喋ってたようなさ、ギターウルフすげえみたいなのって、こないだのART-SCHOOLの作品に影響してるの? もろグランジでいいじゃん! っていうか。そういうのは影響してるのかな?

戸高:一緒にやってたメンバーがNUMBER GIRLだったりとかMO’SOME TONEBENDERとか、自分達の中ではすごく分かりやすい世代の「顔」みたいな感じのバンドだったから、そういうバンドのメンバーと一緒にやるんだったら選択の余地がなく、自然に「やろう」って思えた。そこでテクノとかやろうとはやっぱりならなかったし、もっと、憧れていたギラついた音をそのまんまやっちゃったら、カンペキでしょみたいな。

ROY:その発想はさ、もうギターウルフの突き抜け方と近いものがあるよね。

戸高:ホントに近いものがあると思う。それで、そういう考えを持てた自分もすごく、嬉しいなと思った。結構音楽に対して不感症気味になってたと思うから。ロック衝動みたいなのは戻ってくると思ってなかった。で『BABY ACID BABY』でシカゴまで行って録音してさ。心の中は少年で、清らかだよ。

ROY:いいなー。アルバム作り終わった後に思ったんだよ。そういうことしたいって。すっごいフィジカルなこと。

戸高:やったらいいじゃん。俺フィジカルなこと、すごい憧れてたの。意外と頭だけでやってたってとこもちょっとあったから。だから20代後半からインプロやセッションも始めたりして。

ROY:俺もね、すごい思ってるの。それ。『ラッキー』の制作が終わったあとに。でもそれをさー、今やってもなぁっていう怖さが同時にあって。なんかそういうのはあった? シカゴ行ってアルバム作って、「ART-SCHOOL今更そういうことしてるよ」って言われたりとか。

戸高:完全にそういうのは「自分らしかこういうのやんねーだろ」って思ってた。

ROY:あー、確かに、今いないかも。それすごいいい話じゃん。それはしばらくそういう考えで作品を作っていくの?

戸高:うーん、別にそれしかできないわけじゃないから、もうちょっと懐の深いところを今回の作品でやれたかな。だから今はどこにでもいける感じだね。布石をたくさん作ったのかもしれないね。

ROY:いいよね。今日びでもそれをこのタイミングで行けたって言うのは結構すごいよ。ファンタジーに関しては今回どうなの? ファンタジー度は。

戸高:ファンタジー度はあると思う。

ROY:前に比べて。1個前はファンタジー度MAXと言えるじゃん。

戸高:うん、言える。

ROY:その次の今回は? 前が100だとしたらファンタジー度はどれくらいなの?

戸高:ファンタジックとは言えるかな。うん。でも50くらい。でもそれは経験値として見せとかなきゃいけなかったとこだから。

ROY:わかる。相対化させたら50くらいになるってことでしょ。

戸高:で次にどうするかってところかもしれないね。俺らも。

ROY:次は何%くらいにするのかみたいな? まぁ数にするのもおかしいけど。

―ファンタジーの話でいくと、今回の『ラッキー』のファンタジー度合いっていうのはどれぐらいなんですか?個人的にはニュートラルな感じを受けますが。

戸高:ニュートラルな感じは結構するかもね。

ROY:俺の中では最高にファンタジックな作品ですよ。ニュートラルな感じでバランスが取れているのが、今の時代で言うところのファンタジーじゃんって思うんだもの。ARTの1個前のアルバムはファンタジーに突っ込んでってる感じじゃない。いまトディが言ってたことって「まだこんなファンタジーもあるし!」って見つけに行ってるってことだと思うんですよ。でも俺は今回それはしたくなくて、ファンタジーに近づくためにやることは、一番ニュートラルであること、だった。逆に。

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『ラッキー』は、今やるならここっていうのを突いてきたなって感じがしてる

ROY:でもトディと俺の立場はちがくて、俺は前にそういうのをやってるっていうか。もうフリースタイル、MCバトルなんてさ、ファンタジーないとできないからさ、まず。それは理解できるでしょ?

戸高:うん。俺日本語ラップ好きだからね。

ROY:相当集中して、相当信じ込まないと、あんな1つのことを熟達することは無理だよ。あれはファンタジーの中にいるからできる。

戸高:もう1回そこに戻ろうとは思わない?

ROY:ちょっと思った。今回のアルバム作って。でもまたちょっと違うと思うんだよね。「戻る」じゃない気がするよ。

戸高:こういう機会だから聞いてみたいんだけど……今さ、フリースタイルとかすごいじゃん。ラッパー全体。フロウとか、研究してるやつはすごいよ。SALUのフリースタイル聴いて超すごいと思った。どんどん進化してるなーって思う。そのまんまフリースタイルで曲作っちゃえばいいじゃん。やってるやついるんでしょ?

ROY:いると思うよ。俺もやってたし。Olive OilとWeekly Session。

戸高:ああ、そっかそっか。

ROY:あれこそまさに初期衝動的なやつですよ。そう、やってんだよね。俺。ファンタジー多いやつ。

戸高:……を経ての、何するか。フリースタイル上手いんだからさ、バトル出たらいいじゃん。でチッタとかで2回戦負けとかして(笑)。

ROY:あー……バトルかぁ~~~。何? 俺を再びMCバトルに出させたいの?

戸高:出たらいいんじゃない。応援行くよ、俺(笑)。初めてROY見た時、バリバリのバトルMCだったなぁ。

ROY:今の話の流れだと。フィジカルに近づけるわけだもんね。確かにファンタジックになれるよね。
そもそも次の作品は直感とか肉体性を増やしたいと思ってるのよ、今のところ。そのために週の半分は運動しようかなって。最初の1年は、前半に喋ったようなことを延々考えて、それからもう完全にそれをやめて、残りの1年は運動だけしてるっていう制作をしたいのよ俺は。
今はめんどくさいこと考える時期なんだよ、俺。めんどくさかったでしょ。

戸高:うん、めんどくさかった。

ROY:でもさ、「じゃあ何すんの?」じゃん。

戸高:フリースタイルでしょ。今でしょ。

ROY:さっきの2か年計画はどう思うの?

―1年考えて、1年トレーニングですね。

戸高:運動しかしないっていうのも……ムキムキになるだけじゃん(笑)。脳まで筋肉にならないでよ。

ROY:ラップの練習も運動に入るよ。……いやー俺トディからフリースタイル・バトルしろって言われるの、意外だったよ。

戸高:俺の結論はこれだよ。

ROY:MCバトルってアプローチではないな……って漠然と思ってるんだけど……まぁロッカーっぽくていいな。でも(蓮沼)執太とか(三浦)康嗣くんとかと喋ったらまた違うこと言われそうだけど。

戸高:なんて言うのかな。興味ある。

ROY:でも、結局同じこと言うかも。はーなんか、落ち込んじゃった。

戸高:なんでだよ(笑)俺だってロックとテクノのくだりで落ち込んでたよ。うーん、……環ROY、何が売りなのか。

ROY:よくわかんないって言われるよね。

戸高:ラップがうまい。今回のもいろんなラッパーやバンドマンが褒めてたよ。あとフォトグラファーとか、俺らのライナーノーツ書いてくれたライターの方とか。
今やるならここっていうのを突いてきたなって感じがしてるな。

ROY:それは俺自身として? それとも日本のヒップホップの流れとして?

戸高:日本のヒップホップの流れとしてのことだと思うし、あと「環ROYの次の一手ってこれなんだ」っていう意味でもみんな「ああ、これが」ってなるんじゃない?
よく、作ってるときに「間口が広い」みたいなさ、超ポップなの作りたいって言ってたじゃん。それはみんなに伝わってると思うよ。
あと最近、日本語をすごい勉強してるって言ってたじゃない。それがちゃんと今回のアルバムに反映されてておもしろいなって思った。

ROY:反映されてる感じする? よかった。そうなっててよかった。やっぱ洗練されてはいたいじゃん。他の方法論で洗練させてる人はいるし、俺がやってるやり方も洗練させてないと未来っぽくないじゃん。それはすごい考えたよ。

戸高:「アホみたいにわかりやすい韻を1個踏んどけばいい」って言ってたでしょ。それがすごい頭に残ってる。で、いつもそのアホみたいに韻を踏んでる箇所でちょっとニヤッとしてしまう。おもしろいよね。

ROY:そっか。よかった。じゃそれを踏まえて何やろうって話ですよね。……ちなみにフリースタイルはやだよ、俺(笑)。初期衝動とかエモとか、それだけになるは嫌なんだよ。未来っぽくないじゃん。

戸高:そうだね(笑)

ROY:適当なこと言いやがって。じゃあ次トディたちは、テクノ採り入れたほうがいいよ(笑)

戸高:そうね(笑)

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ポップ・ミュージックの卒業論文

ROY:ちょっと強引だけどさ、まとめに入っていっていい? 最初の方の話の流れで行くとさ、「じゃあ、俺たちなにやるの?」じゃん。

戸高:バンドやればいいじゃん。ミクスチャー・ロックじゃない。すごいおもしろい形でできたらなぁとか考えたりもする。ミクスチャー・ロックっていうと違和感あるけど。

ROY:ただのポップ・ミュージックとして全部、つかんじゃうっていうイメージっぽいよね。さっきの話の流れでいうと。このジャンルはヒップホップです、ロックです、テクノですっていろいろあるじゃん。ヘタしたらそれが全部均等に入ってて、なんだかよく分からないみたいなのが60年ぐらいかけて作られたポップ・ミュージックの最終形ですみたいなのだったら、次がもしかしたら見えるのかも。

戸高:サカナクションとか最終形な感じするな。テクノ色は強いけど。

ROY:そういう感じするよね。じゃあさ、ラップも交えたバンドをやろうよ。トディと俺と、あといろいろいれて。歌もラップもあり。でどのジャンルからも遠い、みたいな。でもリンキン・パークみたいなのにはならないぜって(笑)。

戸高:どっかでうまく線を引くみたいな(笑)。それが大変なんだろうね。

ROY:じゃあ俺の話に寄せてまとめていくけど、「ポップ・ミュージックって大体こんな感じでしたね」って、卒論みたいなのを、作る段階なんじゃないかって提案ですね。違うかもしれないけどそう考えてなにかを作るって素敵じゃん。それをやると、次何するのかが見えるのかもしれないしさ。

戸高:あー、かもね。卒論書いてから、就職先をね。それはART-SCHOOLでやるのか環ROYでやるのか、バンドをつくってやるのか、なんなのかわからないけど、その全部を足してそうなるのかもわかんないし。ていう感じ?

ROY:(笑)それをやろう。俺らだけじゃなく音楽家は「次何すればいいんだろう?」って思いながらそれぞれがポップ・ミュージックのマスターピースらしきものに挑んで、それから見えてくるんじゃないの? てかさ、近年の世界的にすごい人達ってみんなそれをやってるんだろうね、そもそも。いわゆる自分ジャンル! みたいなヤツ。

戸高:そうだね。当り前の話を長々としてたんだね(笑)。じゃあまずはバンドやろう。

ROY:みんな仲良く協力すりゃいいんだよ。きっと(笑)。

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環ROY「YES」

4月29日(月)   18:00、タワレコ新宿店でイベントを開催!

 

環ROY ミニライブ + トークイベント+ サイン会 SPECIAL GUEST:戸高賢史(ART-SCHOOL)

 

環ROY

環ROY

ラッパー。宮城県出身。主に音楽作品の制作とパフォーマンスを行う。これまでに最新作『ラッキー』を含む4枚のフルアルバムを発表。第17回文化庁メディア芸術祭推薦作品『ワンダフル』(MV)を発表。国内外の様々な大型音楽イベントへ出演。



戸高賢史(ART-SCHOOL)

大分県出身。ART-SCHOOL、Ropesでの活動を中心に、多数のサポートやセッションをこなす。自身で設計・製作するエフェクター・ブランド=Phantom fxも各方面から高い評価を受けている。

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