フレットレス・ベースのススメ/MI Japan ベース・クリニック

MI JAPANベース・クリニック by 杉泰輔 2011年5月25日

ウォームな音色が魅力のフレットレス・ベース。音程を取るのが難しく”弾くのが大変そう……”と敬遠されがちだけど、実は簡単なコツを押さえておくだけでグッと身近なものになる。今回は、そんなフレットレスのポイントを左手と右手に分けて解説していくぞ!

INTRODUCTION

フレットレス・ベースの一番の魅力とは何でしょうか? それはフレッテッドのベースでは出し得ない、アコースティックな音色だと思います。しかしその反面、演奏をするうえではフレットがないがゆえの難しさも出てきます。それはずばり、しっかりしたピッチで演奏すること。

今回のセミナーでは、そんなフレットレスならではの難しさをクリアするために必要な押弦のポイント、加えてフレットレスのトーンを最大限に生かすためのピッキング術などを中心に解説していきます。

 

【MI×ベーマガ】OPEN HOUSE/杉泰輔「フレットレス・ベースのススメ」1/2

【MI×ベーマガ】OPEN HOUSE/杉泰輔「フレットレス・ベースのススメ」2/2

Part1:左手のフィンガリング

フレッテッド・ベースでは、単純にフレットのすぐ脇を押さえれば正確なピッチの音が出ます。しかしフレットレスに慣れていない人の場合は、指板上の正確な音程の位置を”何となく把握したつもり”で押弦してしまいがちなため、1弦と2弦のロー・ポジションおよびハイ・ポジションでピッチが安定しづらくなります。

ロー・ポジションではピッチがシャープしがちになるのですが、これはプレイヤーの視線とフレット・ラインの角度が垂直になっていないことが原因(図1)。その証拠に、視線と指板の角度が垂直に近くなる5 〜12フレットのエリアでは、比較的ピッチが安定しやすいはずです(図2)。そして15フレット以上のようなハイ・ポジションでは、再び目線と指板の角度が垂直よりも狭くなるので、音程がフラットしやすくなるのです(図3)。

mi_bm_2011_06_ill_1 図1:ロー・ポジションを押弦するときの視線の位置。プレイヤーは高音域側からフレット・ラインを見ることになり、結果として音がシャープしがちになる。
mi_bm_2011_06_ill_2 図2:5 〜12フレットを押さえる場合の視線の位置。視線のほぼ真下にフレット・ラインがくるので、比較的正しい音程を出しやすい。
mi_bm_2011_06_ill_3 図3:こちらはハイ・ポジションを押さえる場合。ロー・ポジションのときとは逆に低域側からフレット・ラインを見ることになり、音程はフラットする傾向にある。

これを解消するためのコツは、もちろん自分の音をよく聴くこと……なのですが、このように陥りやすい問題点を知ったうえで練習すれば、ピッチが取りやすくなるはずです。

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▲音程を取りやすいように、フレットの位置にラインが入ったベース。写真は、ジャコ・パストリアスの愛器を再現したフェンダー・カスタム・ショップのレプリカ・モデルだ。

それでは、これを踏まえてEx-1に挑戦してみましょう。課題曲は、アントニオ・カルロス・ジョビンの「波」(1967年作品の『波』収録)のメロディ・パートです。

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mi_bm_2011_06_score_1

「Wave」by Jobim

この曲はロング・トーンと細かい動きの組み合わせで構成されていて、なおかつ使う音域も広いので、フレットレスで演奏するには慣れが必要ですね。原曲はDのキーで書かれていて、このまま弾くと4 〜14フレットを中心とした、いわゆるピッチが取りやすい音域になっています。

これをフレットレスの練習に活かすために、まずはロー・ポジション用にBのキー(TAB譜の表記よりも3フレットぶん低いポジション)で弾いてみましょう。こうすると2弦1フレットのポジションが出てきます。次に、ハイ・ポジションの練習用にGのキー(TAB譜よりも4フレットぶん高いポジション)で弾くと、最高音は1弦20フレットになります。どちらの場合も視線と指板の角度に注意して、ピッチを正確に取るように心がけて練習してみましょう。

Part2:右手のピッキング

フレッテッドに比べて、フレットレスはピッキングのニュアンスが音に反映されやすくなります。まずは、フレットの有無に関わらず基本となる”弦振動の方向”について確認しておきましょう。理想的なのは、ベースのボディと弦が平行に振動している状態です。実際にはピッキング時の指の角度といった条件があるので完全に平行な振動にはなりませんが、これをイメージしているだけでも効果的です。

ピッキングの位置については、ネックに近いところだと弦の振幅が大きくなり、丸い音が出ます。これはゆったりしたメロディを弾くときに有効で、弦のゲージが太い場合は指板上でのピッキングもしやすくなるので、これを活用するのもありですね。

反対に、ブリッジ近くでピッキングする方法もあります。この位置では弦の振幅が一番小さい状態になり、タイトな音色に近づくのですが、弦のテンションが強いのでコントロールが難しくなってきます。だからと言って闇雲に強くピッキングすると余計にコントロールができなくなるので、思っているよりもソフトなピッキングが必要。

ジャコが細かいリズムを刻むときも、大抵はこの位置でピッキングしていましたね。そして、ここでのピッキングのコントロールに慣れてくると、ネック寄りで弾いたときにも繊細なコントロールがしやすくなっているはずです(もちろん、ネックとブリッジの中間というスタンダードな位置でのピッキングも大事です)。

下の譜例では、それぞれのニュアンスを感じ取るために、Ex-2をブリッジ寄りで、Ex-3をネック寄りの位置で弾いてみてください。これらのピッキング・テクニックは、実はフレッテッドにもほぼそのまま使える手法なので、ぜひとも試してみてほしいと思います。

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加えて言うと、ピッキングは強さよりもスピードが大事で、ソフトにはじいてもスピードがあれば太い音を出すことができます。このあたりのニュアンスは、YouTubeの動画でも触れているので参考にしてみてください。

杉泰輔(すぎたいすけ)プロフィール

bit_sugi_taisuke1971年5月生まれ。幼少の頃に父親がかけていたマイルス・デイヴィスの『ウィ・ウォント・マイルス』を原体験に持ち、16歳でベースをはじめる。ロック、ポップス、ファンク、R&B、フュージョン、ジャズ、さらにはクラシックまで、さまざまなバンド/セッションを経てジャンルレスで活動しており、01年からはMI JAPAN福岡校BIT科講師としても教鞭をふるう。多岐にわたる現場で鍛えた豊富な経験をもとにした授業で人気を集めており、このコーナーには3度目の登場となる。

■本記事について

本記事は、『ベース・マガジン2011年5月号』掲載のページを転載したものです。

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