アクセントとシンコペーション

MI JAPANベース・クリニック by 高橋竜 2014年12月19日

我々が普段耳にするベースのサウンドでは、正直アクセントの強弱がわかりにくいことも多い。また、レコーディングなどではエンジニアがコンプレッサー(以下コンプ)をかけるのが常套手段なので、プレイヤー本人がコンプをかけていなくても、強弱が薄まって聴こえていることもあるかもしれない。では、あまりアクセントを気にしないで弾いても良いのかというと、決してそんなことはない。結果的には強弱が目立たなくなっていても、ベーシスト本人が出している強弱によって確実に音色は変わってくるし、何よりもちゃんとほかの楽器とちゃんと協力して強弱に気を配ることによって、フレーズや楽曲に独特のグルーヴを加味することができるからだ。今回はこれを検証して、もう1歩踏み込んだ、深みのある演奏を目指してみよう。

 

Ex-1 4/4拍子の基本アクセント

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  を今回はスペースの都合上、3拍子系のアクセントには触れず、4/4拍子だけをとりあげることにしよう。まずは基本アクセント。Ex-1の1小節目が4/4拍子の基本アクセントで、1拍目が最強、3拍目が中強となっている。これはクラシックでもロックでもジャズでも基本的には変わらないが、ロックでおもに使われる8ビート(2小節目)では2拍4拍のいわゆる“バック・ビート”がかなり強くなり、さらに16ビート(3小節目)になるとそれぞれのウラ拍だったはずの8分音符ウラもオモテと同じ強さになって、その代わりに16分のウラ(弱いところ)が出現する感じだ。そして4ビート(4小節目)では、それぞれの4分音符のなかに“ハネたウラ(3連符の3つ目に近いが、そうとも限らない)”が内包されている。基本的には4拍とも強い拍のイメージだが、足で踏むハイハットが奏でる2拍目、4拍目にアクセントを感じたほうが演奏するうえではハネやすく弾きやすい、という特徴も覚えておこう。

 

Ex-2 8ビートのシンコペーション(フレーズを使って表現する方法)

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いつもEx-1のアクセントを守ってばかりだとフレーズのバリエーションが極端に少なくなってしまう。そこで考えられたのがシンコペーション。強い拍のアクセントが弱い拍のところに移動してくる感じだ。

Ex-2の前半2小節は、“トコブシ、イセエビ”4+4(8分音符4個ずつがふたつ)のグループになっているアクセント(「ト」が最強で「イ」が中強)と、それを“ワカメ、タラコ、ウニ”と3+3+2のグループに分けたもの。2小節目では本来弱かったはずの2拍目ウラ(トコブシのシ)が、“タラコのタ”になるので、ここを強くしないと3+3+2に聴こえなくなってくる。

この2小節目では、単純にピッキングの強弱だけでシンコペーションを表現していて、4小節目ではフレーズ自体が3+3+2になっている。もちろん、これはどちらかがより優れているとかいう話ではなく、ただその違いを実感してもらえればOKだが、やはり同じ音程をピッキングの強弱だけで表現するシンコペーションのほうが、より激しい強弱をつけないと伝わりにくいと感じてもらえるはずだ。

 

Ex-3 8ビートのシンコペーション(音符を伸ばしたり休符を入れる方法)

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前述のように、次のアタマの強拍がその前の拍のウラの弱拍に移動してくることを“クう”と言ったりするが(シンコペーションと区別してアンティシペーションと言う場合もあるが、ここではシンコペーションで統一させていただく)、クい方にもいくつかの段階がある。Ex-3の1小節2拍目ウラではクった音をそのまま伸ばしておらず、しかもその前に休符がある。これが最もクった音を目立たせることができる。要は同じぐらいの高さの山でも山脈のなかに埋没した山より、平地に突然ポツンと存在する富士山のような山のほうが高く見えるのと理屈は同じだ。さらに2小節目の真ん中のクいでは、前後に休符という谷がないぶん、最初のクいよりは目立たなくなっている。3〜4小節目のクいになると、コードは確かにクっているものの、ずっと8分音符を敷き詰めているので、完全に山脈のなかに埋没しかけた頂上というイメージになって、かなり目立たないさりげないクいになっている。さらにピッキングの強弱を加えれば、相当数のクいのバリエーションを表現できるので、ぜひいろいろと試してみてほしい。また、ほかの楽器とのコンビネーションもかなり影響するので、ほかの奏者と探り合いつつ、全体でどの程度のクいを表現すればベストなのかを見つけるのも忘れないように。

 

Ex-4 16ビートでのシンコペーション

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16ビートになると、使える音符や休符の数が多くなるぶん、シンコペーションの種類も豊富になってくる。Ex-4の前半は音を切り気味なのでシンコペーションが強調されやすいが、後半は音を伸ばしているのでピッキングの強弱をかなりつけないとシンコペーションが強調されない。ちなみに1〜2小節目後半の“ウッターウターン”という“8分休符、8分音符、16分休符、付点8分音符”のキメは、16ビートの曲では頻出なので、マスターしておくと便利だ。

 

Ex-5 さらにモダンな雰囲気に

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最後に4ビートのシンコペーションだが(Ex-5)、4ビートの場合は複数の楽器で一緒にクってキメのようなフレーズを作る以外にも、楽器が単独で勝手にクう場面がけっこうある。ソロの途中などでソリストが何度も繰り返してクッたりするのは“ベースやドラムも合わせて〜”という催促である場合も多いが、それ以外の場合は無視してもOK。またベースだけが単独でクうとほかの楽器のプレイヤーたちもそのハネ具合に影響されやすく、あまりやり過ぎると全体の印象もゴチャゴチャしてしまうので、そこは注意が必要だ。

ちなみに2小節目の頭は1拍目を休んでウラから始まっているが、これも必然的にウラ拍が強調されるので立派なシンコペーションの一種と言える。また、2小節目の最後から3小節目の頭はコード・ネームの位置とずれているが、こちらは前述した“ベースだけが単独でクッている”イメージ。これらにさらに4小節目の最後のように“8分休符、8分音符、しかもリピートした次小節の頭の音も弾く”なんていうやり方も混ぜれば、4ビートでもかなり多彩なシンコペーションを表現できるはずだ。

 

おわりに

というわけで、今回は地味でも奥の深い“アクセントとシンコペーション”という題材を扱ってみた。もちろん派手なスラップや速弾きを練習したり、難しい音楽理論を勉強したりするのも大いにけっこうだが、こうした地味なところに気を配っていると、やはり“ひと味違う感じ”に聴こえるもの。普段コンプや歪みをかけている人は一旦それらをはずし、すっぴんの自分のアクセントや強弱の実態を把握してみよう。そしてそれをフレーズ作りや演奏の幅を広げるのにどんどん活用してもらえると嬉しい。人生もベースも、大事なのはメリハリ。強弱を取り入れて、メリハリあるベース人生を送ろう!!!

 

本記事について

本記事は『ベース・マガジン2014年12月号』掲載のページを転載したものです。

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