シンセ・ベースを取り入れる

MI JAPANベース・クリニック by Mars 2014年11月19日

 こんにちは、ベース・マガジンを読んでいるみなさんお久しぶりです。MIのベース科講師のMars(マース)です。今年の夏は雨が多くてベースにとっては大変な年でしたね(汗)。僕も、野外のイベントなどではハラハラしました。皆さんにとっては思い出に残る夏だったでしょうか? 僕は参加したフェスやイベントでかかっていた、みんなで踊れる音楽(クラブ系・ダンス系・EDM)が思い出に残っています。単純な4つ打ちのリズムにいろいろなグルーヴが絡むので、一日中踊っていられましたね(笑)。当然、そういった音楽のベースは、かなりの割合でシンセ・ベースが使われていました。そこで今回は、簡単なシンセの説明から、EDM系ど真ん中のベース・ラインなど、踊れるクラブ・シーンのベースについて解剖してみましょう。

 

STEP1 シンセサイザーの基礎

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  まずはシンセの仕組みについて簡単に説明します。右の図を見てみましょう。これだけ見ても何のことだかピンとこないと思いますが、これがシンセにおける簡単な音の流れです。各セクションには名前があり、それぞれ違った働きをします。VCOは音程と書いてありますが、基本的なシンセの音の中核となっていて、ここでもとになる音が決まります。そのもとになる音を次のセクション、VCFでトーン調整します。パキパキな音にしたり、曇った音にしたりという感じですね。

そして最後のVCAが音量です。このVCAはエンヴェロープ・セクションとも密接な関係にあります。エンヴェロープを簡単に言えば、音の速さ(アタック)や切れ具合(サステイン)など、音の輪郭を調整するものですかね。そして、最後にLFO。これは音の揺れを調整します。“音の揺れ”をベースで言うなら、弦の振動からくる“ワーン”という感じでしょうか。その速さや深さをコントロールできます。なかなか想像しにくいかもしれないけど、実際にシンセを触ってみるとかなり楽しいですよ☆

 

STEP2 シンセ・ベースの特徴

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それでは次に、普通のベースとシンセ・ベースのそれぞれの音の特徴を、図を参考に解説してきましょう。ベースというのは左の図のように低音に特徴を持ち、なめらかなカーブで、すごく低い音からすごく高い音まで鳴っている楽器です。そのおかげで、ほかの楽器(ギター、ドラム、ヴォーカルなど)との馴染みがよく、小編成でもアンサンブル次第で充分満足できる音域をカバー可能な楽器と言えます。

それに比べてシンセ・ベースの場合、機械で生成した音のため、右図のように演奏している音域よりも高い音や低い音はバッサリとカットされた形になっています。これについてのデメリットは、生のベースに比べてアンサンブルを埋めにくい(寂しくなりやすい)ということが言えると思います。しかし、いろいろな音が飛び交っているアンサンブルのなかでは、ほかの音と馴染みにくい(音が飛ぶ)傾向にあるので、どんな状況でもしっかりと聴き取ることができる音、とも言えるでしょう。

 

STEP3 ダンス・ミュージックのベース・ラインを取り入れる〜ダフト・パンク

譜面1

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それでは曲のベース・ラインを弾いてみます。まずは非常にたくさんのトラック・メイカーに影響を与えているダフトパンクの「アラウンド・ザ・ワールド」。BPMが120くらいで、最近のダンス・ミュージックのなかでは少しゆったりのビートになっています。基本的には4小節パターンの繰り返しなんですが、5小節1拍目に4分休符があるのにはハッとさせられます。この曲(ダフトパンク全般に言えることですけど)は大きな動きのベース・ラインで見せるものではなく、簡単だけどキャッチーなフレーズが基本のベース・ラインです。それを鉄板のグルーヴにのせ、延々と踊れるように攻めてきます(笑)。4小節の16分音符連打からの付点8分音符も特徴的で、正確に弾くのは意外と難しかったりします。

 

STEP4 ダンス・ミュージックのベース・ラインを取り入れる〜カリスマ.com

譜面2

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2曲目は現在話題沸騰中のカリスマ.comの「GEORGE」のサビ。これはいわゆるエレクトロ・ハウスというジャンルだと思うのですが、オクターヴで“ドーダードーダー”というタイプではなく、しっかりとメロのあるベースが中心になってぐんぐん引っ張っていくタイプですね。軽い16分のシャッフルになっているところが、さらに踊れる要因になっています。なかなか難しいフレーズですが、特に2小節のCからマイナー6th上のG♯の下りは気をつけて弾きましょう。このG♯のおかげで、ちょっとダークな感じになります。そして7小節の最後、ここでまた出てくるG♯。これはほかの2小節パターン3つをまとめる、ドラムで言うフィルみたいな役割をしているので、飛ばしたりせずしっかり弾くこと。

 

STEP5 生のバンドでのバランス

ここ5年くらいで“同期バンド”というジャンルや言葉がなんとなく浸透してきた気がしますが、10年近く同期のバンドをやっている僕としては、この同期バンド・シーンが2周目に入ったように思います。ほぼすべてのトラックを同期に任せるバンドや、同期モノの音楽をあえて生で演奏するバンドなど、いろいろな形態が一般のリスナーに受け入れられてきたと感じますね。そんななか、やっぱりベースを生で弾く素晴らしさや感動もあります。そこで、バンドの形態は同じでも、思わず腰が動いてしまうような踊れるバンドの音作りなど、“らしく”聴かせるコツを少し書きたいと思います。

ひとつはドラムですね。え? ベースじゃないの?って思うかもしれませんが、キックとベースの関係性は最重要です☆ 特にキックとベースの音量が大きいジャンルなので、とにかくラウドに叩けば良いと思いがちですが、そうなると高い音の成分が増えてしまって、深いローの感じが出なくなってしまいます。やはりバンドはバランスが大事なので、そこは注意しておきましょう。

そして次に、重要な音作りの話もしておきます。前の章でも説明したとおり、生のベースには肝になる音以外にも、耳ではほとんど認識できないよ

うなさらに高い音や低い音がけっこう入っているものです。これはシンセ・ベースの特徴とはまったく逆。シンセ・ベースは耳に聴こえる帯域以外、あまり鳴っていない感じです。このおかげで音が分離し、どの音もくっきり聴こえ、混ざらない感じで打ち込みっぽくなるのです。だから“ここが気持ちいい”と思ったベースの帯域を思い切ってブーストして、必要なさそうな帯域をばっさりカットしてみると、“らしく”なったりします。

僕のお気に入りのエフェクターはオクターバー(僕はdbxの120a subharmonic synthesizerを使ってます)ですね。ふたつの音が同時に鳴るのはシンセ・ベースならではだと思います。オクターヴ下を足そうが、オクターヴ上を足そうが、どちらでも“らしさ”を演出できます。また、歪み系のエフェクター(僕はweedのsweet bassを使っています)を使うこともありますが、低音の輪郭やアタックが弱くなりがちな気がするので、イコライザーなどで最後に補正します。さて、ここまでいろいろなことについて話してきたんですが、やっぱり大事なのは現場での対応や、最終的な出音のイメージをしっかり持つこと。自分が追い求めている音を実際に出しているバンドを探して観に行くことなどです。いろいろな意見を取り入れて、体で感じて、満足できる音を出せるように常日頃からアンテナを張っておくことが大切です。それでは、みんなが踊れる音楽ライフを送れるように、これからも一緒にベースの研究をしていきましょう。

 

本記事について

本記事は『ベース・マガジン2014年11月号』掲載のページを転載したものです。

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