さまざまなイヤー・トレーニング

MI JAPANベース・クリニック by 佐藤健二 2014年8月19日

 音楽は耳を通して行なうので、耳を鍛えることが大事だというのは直感的にもわかるものの、フィジカルなトレーニングと違って目に見える部分ではないため、独学ではやろうと思ってもどこから手をつけたらよいかわからず心理的なハードルが高いと思います。
 イヤー・トレーニングは単純に音の高さやコード、リズムを聴き取る以外にも、音色に対する感受性を育んだり、歴史的背景を感じ取ることも含まれてきます。毎日の積み重ねで発達するものなので、効果が実感できるまでに時間がかかりますが、基礎体力として絶対に必要なものになります。
 音楽学校では、楽譜を音名で読むソルフェージュなどのイヤー・トレーニングが授業のなかで取り入れられていますが、今回は自分で手軽に行なえることを中心に、ベースを使ってできるものと、普段の日常生活でも使えるイヤー・トレーニングについて考えていきます。

 

STEP1  ベースを使ったイヤー・トレーニング

■Ex-1 ベースとユニゾンで歌う

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 ここでのエクササイズは“ドレミファ~”と声に出して歌うようにします。これは相対音感をつけるのにトーナル・センター音(そのキーの中心の音)をドとし、これを基準にして自分が歌っている音が何の音かラベリングしないと音感の定着が不安定になるためです。最初はベースで弾いている音と同じ音を歌います。このときに自分の声の高さに合わせて歌いやすいように、べースの音から1オクターヴ上げるなど調整してみてください。

 

■ Ex-2 ベースとハモらせる

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Ex-1ではベースとユニゾンで歌いました。ベースと同じ音で歌うことに慣れてきたら、その次にベースは同じ音を鳴らし続け、歌の音域だけを動かしていきます。この練習では特にトーナル・センター音(Ex-2ではベースで弾いている音)の1音上の音であるレの音、半音下の音であるシの音を歌うのに慣れるまで、最初は時間がかかるかもしれませんが、次第にハーモニーになじんでくると思います。

 

■ Ex-3 スケールのインターバルを歌う

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Ex-2のエクササイズでハーモニーを感じられるようになってきたら、次はインターバル(音程。ある音とある音の距離のこと)を使ったエクササイズを行ないます。インターバルは複数ありますが、この譜例では3度のインターバルを記載しています。

最初はベース音を聴いてからのほうが歌いやすいので1拍空けてから歌が入っていますが、慣れてきたらベースと同じタイミングで歌を入れてみるようにしましょう。3度のインターバルができるようになったら、そのほかにも2度、4度、5度、6度、7度などで、同じように取り組んでみてください。

 

■ Ex-4 コード進行上で歌う

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次はコード進行を想定してハモります。下の譜例ではルートに対して5度の音を歌っていますが、3度、7度でも同様に練習します。一定のコード進行に慣れてきたら、違うコード進行に変えて練習してみましょう。このほかにも普段からキー、スケール、コードを意識して、自分が今弾いているのはそのキーの何番目の音を使っているのか?コードの何度の音を弾いているのか?などを常に意識することで、さらに音感が磨かれていきます。

 

STEP2 ベースを使わずにできる練習法

ここまでベースを使って音感を鍛えるためのエクササイズを取り扱ってきました。次は楽器を持たなくてもできる練習法について考えていきます。

(a)音楽を意識しながら聴いてみる

普段の通勤、通学時に音楽を聴いているときなどは、①転調はあるか? ②ダイアトニック・コード以外のコードはどこか? ③使われているスケールはなにか? ④どのようなリズムの譜割になっているか? ⑤どんな楽器構成になっているか? といった点を意識しながら聴くようにすると、より細かい点にも気がつくようになります。そのほかにもベースの音に関しては、①ピック弾き or 2フィンガー or スラップ?どの奏法で弾いているか? ②使われているベースは4弦か? 5弦か? ③使われてるエフェクターは? ④どのポジションで弾いているか? などを意識して聴いてみてください。

(b)理論と耳はセットで考える

理論で学んだことは耳で認識できるようになるために、セットで捉えるようにします。例えば理論書でドミナント・モーション(例えばKey=CのときのG7→Cのコードの動き)が出てきたときには、実際に耳でG7での緊張→Cでの緩和が感じられることを確認します。コード、スケールなども最初に理論書を読んでいるだけではピンときませんが、実際に聴いている音楽のなかに印象的なコードやスケールを見つけ、それを自分で調べると、それぞれのコードやスケールの持つ響きが自分のなかで明確にカテゴライズされていきます。

(c)トランスクライブの重要性

今までの練習法と併せて、とても大事なのが採譜(トランスクライブ)です。これも最初の心理的ハードルが高いと思われますが、

①回数を重ねることで音の判別能力が高くなる

②譜面に書き起こすことでリズムの把握も深まる

③必然的に良く使われる使い回しも覚えることになり、定番のフレーズやパターンのボキャブラリーが増える

といった大きなメリットがあります。最初のトランスクライブのコツとして、キーを判別することと、聴き取りたい音と同じ高さか1オクターヴ上下の高さで歌えるようにすると作業が早くなってきます。キーの判別も最初はなかなか難しいと思いますが、今まで紹介したエクササイズを行なうことにより、どの音が一番落ち着く音なのかがだんだんとわかってきます。

最後に

音を聴き取る力はミュージシャンにとって非常に大切な基礎体力となります。目に見えて効果が実感しづらいので、成長が感じられず不安になってしまうかもしれませんが、将来の大きな糧になると信じて、日課として続けてほしいと思います。

 

本記事について

本記事は『ベース・マガジン2014年8月号』掲載のページを転載したものです。

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