第17回:ベーシストにお薦めの映画紹介vol.12 『あの頃ペニーレインと』の巻

ベース大好き! by 板谷直樹 2014年5月22日

ベーシストにおススメの映画を、板谷直樹氏が紹介していくこのコラム。今回は甘酸っぱい70年代の香りを、ロックのリフに乗せてお送りしましょう!

只今関西ツアーの真っ最中で、ホテルの部屋で原稿を書いてます。普段と違う空気感の土地や人の前で演奏するのは、緊張もするしいい刺激になります。こちらに来ていつも関心するのは、ミュージシャンのMCの面白さですね。ばっちり演奏を決めた後にボケと突っ込みが入って、お客さんの心をグッとつかむあのスピード。関東には無いですよねー、この文化は。僕もMCをすることが多いのでとっても勉強になります。そして、移動中の風景やその土地の食べ物も楽しみの1つですね。

というわけで今回は、音楽ライターの少年目線でバンドがツアーする様が描かれている『あの頃ペニー・レインと』(2000年作品)を紹介しましょう。お酒やドラッグ、追っかけの女の子の生態が描写されていますが、もちろん現実は映画のようではありませんよ。でも70年代の有名ロックバンドは、ひょっとするとこんな感じだったのかも? 全体としては甘酸っぱい青春物に仕上がっていて、音楽好きでもそうでない人にも楽しめる1本になっています。

1969年から73年までのアメリカが舞台

時代設定は1969年。冒頭では主人公ウィリアム(パトリック・フュジット)の家庭環境が描かれています。厳格な母親(フランシス・マクドーマンド)とウィリアムの姉(ズーイー・デシャネル)の対立はしょっちゅうで、何やら問題がある様子。音楽は麻薬やセックスを連想させるのでダメ、バターや砂糖、小麦粉も禁止、ベーコン・エッグやソーセージもダメ(笑)。全ては知的な人生を送るため、という理由で異常な押しつけの母親。

そんな家庭に嫌気がさして家を飛び出す姉からウィリアムへの、「いつか目覚めるわ。ベッドの下で自由を見つけて」というセリフが印象的です。

姉がベッドの下に隠していたのはロック・ミュージックの数々。ザ・ローリング・ストーンズ、レッド・ツェッペリン、ジミ・ヘンドリックスらのアルバム。今まで聴いたことのないサウンドに魅了され、ロックにどっぷりとハマっていくウィリアム。

それから4年の1973年、世界的なロック評論家で音楽誌の編集長レスター(フィリップ・シーモア・ホフマン)に出会うことによって、彼の世界が広がっていきます。音楽ライターとしての仕事を請け負い、人気上昇中のバンド「スティルウォーター」の記事を書くためにツアーに同行することに。

才能あるギタリストとの間に芽生えていく友情と、一緒に旅を続ける中で出逢った魅力的なグルーピー(バンドの追っかけで親密な関係にある)の女の子、ペニー・レイン(ケイト・ハドソン)に惹かれていく心象がよく描かれています。

センスの良いロック・ミュージックが満載!

映画の中で随所に挿入されているロック・ミュージックは、どれもセンスよく素晴らしいですね。

中でもひときわ切なく印象的なのが、乱痴気騒ぎ後のツアーバスの中で歌われるエルトン・ジョンの「タイニー・ダンサー」でしょう。歌詞が直接リンクしているわけではないけれど、メンバー間の微妙な関係がこの歌と共に解けて行く様がよく映し出されていてとても好きなシーンです。

主役のパトリック・フュジットはこれがデビュー作だし、ペニー・レイン役のケイト・ハドソンも駆け出しの頃。新鮮で瑞々しい演技が随所に光っています。16歳でローリング・ストーン誌の記者となったキャメロン・クロウ監督の自叙伝的内容となっていますが、少年の甘酸っぱい恋と夢や希望がたくさん詰まったこの作品、何度見てもイイですね。

RockRiff

譜例は感電事故が起きてしまうステージで演奏されているリフのパターン。4小節目のE♭音はDコードのコード・トーンではないですが、この音がリフの特徴を決定付けていると言ってもいいでしょう。Dコード上でAブルース・スケールを弾いているように解釈してもいいですね。実際に弾いてみて、そのサウンドを確かめてみてください。

板谷直樹(いたや なおき)

板谷直樹

札幌市出身 バークリー音楽大学卒。R&B、AOR、ポップに親しみ15歳よりベースをはじめ、当時からセッション系ミュージシャンに憧れて様々なジャンルを吸収しようと試みた。札幌での活動を経て渡米し、本場のジャズやラテンミュージックに触れ多大な影響を受けている。「最先端のグルーヴとメロディックなソロ」を追求し、アーティストのライブやレコーディングも多数。著書『ベース・ラインで迷わない本』『一生使えるベース基礎トレ本』『一生使えるベース基礎トレ本 スラップ強化編』『一生使えるアドリブ基礎トレ本 ベース編』『ベーシスト 究極の選択60』(すべて小社刊)



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