第15回:ベーシストにお薦めの映画紹介vol.10 『スウィングガールズ』の巻

ベース大好き! by 板谷直樹 2014年3月18日

古今東西の名画から、ベーシストにお薦めの作品を紹介しているこのコーナー。なんと、10作目にして初の音楽映画の登場です。一大ブームを巻き起こしたあの邦画、板谷直樹氏はどう見ているのでしょうか?

音楽をやっている人の中には、吹奏楽出身の人も多いのではないでしょうか? 僕はあいにくそうではありませんが、学校行事で演奏する吹奏楽部の女子ウッドベース奏者は「かっこいいなー」といつも思って見ていました。また、放課後には管楽器の人達がマウスピースだけで音を出す練習をしていましたね……。当時のそんな懐かしい風景を思い出させてくれる邦画があるので紹介しましょう。2004年に公開されヒットした『スウィングガールズ』です。

ひょんなことからビッグバンドに挑戦する高校生たち

物語は山形県のとある高校の吹奏楽部が、野球試合の応援先で食べた弁当で食中毒をおこしてしまうところからはじまります。炎天下の中、弁当を野球場まで運ぶのに長時間かかってしまったのが原因。ダウンした部員に代わって急遽集められたのは、弁当を運んだ当の女子生徒達です。彼女達は夏休みの補習に出るのが嫌だけの理由で参加したようなもので、譜面も読めなければ楽器の経験もロクにありません。しかし次の試合の応援までに演奏を間に合わせなければ! ということでほとんど思い付きと言えるような、ひょんなきっかけでビッグバンドジャズに挑戦することとなり、次第にジャズの面白さに目覚めて行く姿をコミカルに描いた青春映画です。

キャストは吹奏楽部のリーダーで唯一食中毒を免れた中村拓雄(ピアノ)役に平岡祐太。部員の中心的存在の鈴木友子(テナーサックス)役に上野樹里。斉藤良江(トランペット)役には貫地谷しほり。関口香織(トロンボーン)役には本仮屋ユイカという面々。今ではすっかりブレイクした俳優(女優)達の新鮮な演技が見物です。

実際には担当楽器の経験が全くなく、3ヶ月に渡る猛特訓の後、撮影に入ったというエピソードもありますね。そして竹中直人演じるジャズマニアを絵に描いたようなキャラクターの数学教師もいい味を出しています。

面白いシーンがいくつかあるのですが、肺活量を鍛える場面では、息で窓に吹き付けたティッシュがどれくらいの長さ落ちないでいられるか? を競う場面があります。試しに自分でやってみたら結構つらくて10秒と持ちませんでした(笑)。中古楽器を修理しに出向いた車の解体屋の兄弟が披露するフォークソングも本当に面白い。そして竹中直人演じる数学教師の部屋が防音のリスニングルームで、中は高級オーディオの数々、レコードの扱いは手袋をはめて、というマニアっぷりもいい感じです。やたら知識だけあって全然演奏ができないけれど、急遽生徒にジャズを教えることになり、レッスン先で罵倒されるシーンなども本当に可笑しいですね。

そしてこの映画のもうひとつの魅力と言っていいのが、自然に囲まれた山形の風景かもしれません。夏の暑い日差しとセミの鳴き声。広い田んぼの中を走る2両の単線電車。一転冬になり雪化粧した遠くの山々、そして畳の居間で過ごすの家族の図もそうですが、日本のどこにでもあるどこか懐かしい風景がうまく表現されていて、物語をよりいきいきとさせている気がします。

スタンダード曲が目白押しのサントラ

音楽のほうは岸本ひろし氏とミッキー吉野氏によるもの。また劇中でスウィングガールズが演奏しているスタンダード曲は「A列車で行こう」「イン・ザ・ムード」「ムーンライト・セレナーデ」「シング・シング・シング」など、ジャズを知らない人でもきっと一度は耳にしたことがある名曲揃いで楽しめますよ。管のアレンジをしっかり聞いてみたい人はサントラを買って聞いてみるといいでしょう。

01

譜面は雪景色の中、校舎の屋上で演奏していた「イン・ザ・ムード」風のベースラインです。このパターンはブルースなどでもよく出てくる定番のものと言えますが、3連符の裏に「ひっかけ」を入れてみると、よりスウィング感が出ると思います。譜例を参考に実際に演奏して雰囲気をつかんでみてください。

板谷直樹(いたや なおき)

板谷直樹

札幌市出身 バークリー音楽大学卒。R&B、AOR、ポップに親しみ15歳よりベースをはじめ、当時からセッション系ミュージシャンに憧れて様々なジャンルを吸収しようと試みた。札幌での活動を経て渡米し、本場のジャズやラテンミュージックに触れ多大な影響を受けている。「最先端のグルーヴとメロディックなソロ」を追求し、アーティストのライブやレコーディングも多数。著書『ベース・ラインで迷わない本』『一生使えるベース基礎トレ本』『一生使えるベース基礎トレ本 スラップ強化編』『一生使えるアドリブ基礎トレ本 ベース編』『ベーシスト 究極の選択60』(すべて小社刊)



TUNECORE JAPAN