第13回:ベーシストにお薦めの映画紹介vol.8 『ファンダンゴ』の巻

ベース大好き! by 板谷直樹 2014年2月14日

板谷直樹氏が今回オススメするのは、70年代米国の青春群像作。有名ジャズギタリストの作品が使用されているとのことで、興味津々です。『コードネームはファルコン』じゃないですよ!

なんとなく借りて来た1本、友達の付き合いで観たものや、たまたまTVで流れていたものなど、そんな中にだって「これはいい! 傑作だね!」という映画が、あなたの中にもきっとあることでしょう。それが世の中にあまり知られていなければ尚更、自分にとって忘れられないものになったりしませんか? 今回はそんな映画に相応しい『ファンダンゴ』(1985年作品)を紹介します。

笑いとハプニングの連続で観る者を飽きさせない

時は1971年5月、テキサス州オースティン。大学の卒業パーティーが開かれている寮から物語はスタートします。「グルーバーズ」と呼ばれる仲間5人組は、ベトナムへの徴兵、結婚、就職を前に最後のばか騒ぎをしようと、車でメキシコの国境にあるDOM=グルーバーズの結成を記念してドンペリを埋めた場所を目指します。

叶わなかった恋、友情や絆、現実の社会を前に理想とのギャップに悩む若者達を、広大で乾いたアメリカの風景と音楽をバックに描いた青春物語です。
グルーバーズのリーダー、ガードナー役には当時まだ無名のケビン・コスナー。2年後の『アンタッチャブル』で注目される前の演技ですが、存在感が光っているし、やっぱり持つものは持っているなー、という印象ですね。

フィル役のジャド・ネルソンは『セント・エルモス・ファイアー』のアレック役だった人ですが、その後はTVや日本未公開作品の出演が多く、知名度はちょっと低いかもしれません。ワグナー役のサム・ロバーズも、同様にTV出演が多い人ですね。この人は、劇中で結婚するデビー役のスージー・エイミス(この作品がデビュー作)とプライベートでも1993年まで婚姻関係にありました。

スージー・エイミスはその後、タイタニックの撮影で出会ったジェームズ・キャメロン監督と結婚するんですね。その他のキャストには、いつも寝ているレスター役にブライアン・チェザック、無口な巨漢ドーマン役にチャック・ブッシュ。スカイダイビングスクールのパイロット、トルーマン役にマーヴィン・J・マクインタイアという個性的な面々が脇を固めています。

ロードムービー形式で進む物語は笑いとハプニングの連続で観る者を飽きさせません。果てしなく続く荒野の真ん中、ガス欠で止まってしまった車をどうするか? 遠くから聴こえる汽笛、ガードナーは車を置き去りにしないためにワイヤーで列車と車を連結しようとたくらむが……。バーガーショップで出会った2人組の女の子と墓地で繰り広げる花火戦争。石碑に書かれた文章を目にしたガードナーとワグナーの反応は? 怪しいパラシュート・スクールで半ば強制的にスカイダイブさせられたフィルのパラシュートの中身は洗濯物だった……、彼の運命やいかに?! また結婚式のためにデビーをダラスに呼ぶべく駆り出されたパイロット、トルーマンのセスナ機が警察ヘリとバトルを繰り広げる場面も見どころでしょう。

効果的に使用されているメセニーの作品群

そして何と言ってもこの映画の中で最も美しく、映画史上に残ると言っても過言ではない、クライマックスへ向かっていく一連のシークエンスを盛り上げているのがジャズギタリスト、パット・メセニーと彼のグループのピアニスト、ライル・メイズによる曲群です。

デビーが飛行機でやって来てガードナーと再会するシーンには「September15th」。曲後半5分13秒辺りからの、ライル・メイズの美しいピアノ部分が使われています。

結婚式に人が集まってくる場面からダンスまでのシークエンスには「It’s For You」。ガードナーとデビーの二人だけの世界を、ギターソロが盛り上げていますね。

この2曲はパット・メセニー&ライル・メイズ名義のアルバム『As Falls Wichita, So Falls Wichita Falls』に収録されているのでチェックしてみてください。

やがて式も終わり、フィルとドーマンが最後に交わす言葉と堅い握手。「ファンダンゴ」=「ばか騒ぎ」の終わりに、ガードナーが丘の上から一人祝杯をあげるクライマックス・シーン。ここにはメセニー・グループのライブ盤『Travels』に収録されている「Farmer’s Trust」が使われていて、何とも言えない静かな感動が胸を打ちます。

もうすぐ春になり卒業シーズン。これから社会へ出て行く人や当時を懐かしむ人にはピッタリの映画かもしれませんね。

ItsForYouL

譜面は「It’s For You」風のシンセベース・ライン。コードに合わせてルートは変化するけれども、内声が変わらないというパターンです。鍵盤奏者ならではのラインで、ベーシストは指板上でなかなかこのように発想しにくいと思うので、是非参考にしてみてください。

板谷直樹(いたや なおき)

板谷直樹

札幌市出身 バークリー音楽大学卒。R&B、AOR、ポップに親しみ15歳よりベースをはじめ、当時からセッション系ミュージシャンに憧れて様々なジャンルを吸収しようと試みた。札幌での活動を経て渡米し、本場のジャズやラテンミュージックに触れ多大な影響を受けている。「最先端のグルーヴとメロディックなソロ」を追求し、アーティストのライブやレコーディングも多数。著書『ベース・ラインで迷わない本』『一生使えるベース基礎トレ本』『一生使えるベース基礎トレ本 スラップ強化編』『一生使えるアドリブ基礎トレ本 ベース編』『ベーシスト 究極の選択60』(すべて小社刊)



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