第11回:ベーシストにお薦めの映画紹介vol.6 『ハイ・フィデリティ』の巻

ベース大好き! by 板谷直樹 2014年1月21日

ベーシストにお薦めの映画を板谷直樹氏が紹介していくこのコラム、今回はレコ屋を舞台にしたあの作品! ロック好きならマストと言えそうな設定とサントラのようですね。ジャック・ブラックの出世作としても、注目です!

こんにちは、ベーシストの板谷直樹です。

いきなりですが、女の子視点の恋愛映画ならたくさんあるものの、男の子視点のそれはあまり見たことがないと思いませんか? 今回取り上げるのはニック・ホーンビィーの人気小説をスティーヴン・フリアーズ監督で映画化した『ハイ・フィデリティ』(2000年作品)です。「もっと自覚しなきゃいけない男」の物語とでも言いましょうか? いい加減で自堕落で臆病でうぬぼれ屋、自分にも恋人にも嘘をつく。イメージ的にミュージシャンに多そうな感じがしないでもないですが、皆さんは大丈夫でしょうか(笑)……。

音楽オタク男の生態をリアルに描写

脚本も手がける主演のジョン・キューザックは、音楽オタクのロブ・ゴードン役。中古レコードショップを経営する独身30代で、ある日同棲していた恋人のローラ(イーベン・ヤイレ)が愛想をつかして出て行ってしまう始末。「何故いつも? 一体何がいけないのか?」。過去のひどい失恋トップ5をリストアップし、自分の悪かった点を女性たちに聞きに訪問するも虚しいばかり……。

脇を固めるのはローラの恋人役にティム・ロビンス、元恋人役にキャサリン・ゼタ=ジョーンズ、レコードショップのマニア店員で、この映画出演で注目を浴びるようになったジャック・ブラック、そしてジョン・キューザックの実姉ジョーン・キューザック(名前がそっくり)も出演しています。

この作品の特筆すべき点は、音楽オタク男の生態がよく描かれているところでしょう。主人公ロブのやや面倒くさそうな性格はレコードの整理の仕方が特殊なことや、好きな女の子に渡すベストセレクションテープの作り方、はたまた何かにつけ「〜ベスト5」みたいにランク付けしたがるところからも垣間見れたりします。

レコード店にローラの恋人が現れるシーンでは、店から追い出すパターンが妄想の中で3通りあったりして、ここもオタクっぽいですが、その描写シーンは爆笑ものですね。またレコードショップの雇われ2人組が面白く、知識のないお客にはレコードを売らなかったり、自分の趣味を無理矢理押し付けてみたり、店員としてはハチャメチャなんですが、身近に似たような人がいるよなー、自分の中にも同じような部分があるよねー! と他人事ではない感じで共感してしまいます。みな会話や行動が変だけれども、何故か好きになってしまうキャラですね。

もうひとつ大きな特徴として、主人公が観客に向かって語りかけながら物語が進んで行く演出があります。これはウディ・アレンの映画で使われているような手法ですが、日本のテレビドラマだと「古畑任三郎」がそうでした。主人公を身近に感じられて物語に入っていきやすいですね。

場面をさりげなく盛り上げるセンス抜群のロック曲

音楽のほうは、随所にセンスのいいロック曲が使われ、場面をさりげなく盛り上げます。

DVDでは特典映像で監督が語っているように、音楽のチョイスはジョン・キューザックをはじめとする脚本家達に任せたと言っていますし、ジョン本人も「ある時代を思い出す曲は誰にでもある」と語っているように、自分の時代と体験を照らし合わせて選曲していったのか、興味をそそられる部分です。サウンドトラックを聴くとよくわかりますが、実にハズレが無くセンスがいいので、こちらもぜひチェックしてみてください。

また、劇中ではブルース・スプリングスティーン本人が主人公の妄想の中に出てくる場面もあるので、これも見逃せませんね。

音楽にこだわっているオタクで恋愛音痴。矛盾や不完全さから生まれ変わろうとする、多くの男性にそっと味方をしてくれる1本です。ぜひ観てみてくださいね。

板谷直樹(いたや なおき)

板谷直樹

札幌市出身 バークリー音楽大学卒。R&B、AOR、ポップに親しみ15歳よりベースをはじめ、当時からセッション系ミュージシャンに憧れて様々なジャンルを吸収しようと試みた。札幌での活動を経て渡米し、本場のジャズやラテンミュージックに触れ多大な影響を受けている。「最先端のグルーヴとメロディックなソロ」を追求し、アーティストのライブやレコーディングも多数。著書『ベース・ラインで迷わない本』『一生使えるベース基礎トレ本』『一生使えるベース基礎トレ本 スラップ強化編』『一生使えるアドリブ基礎トレ本 ベース編』『ベーシスト 究極の選択60』(すべて小社刊)



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