第9回:ベーシストにお薦めの映画紹介vol.4 『トーマス・クラウン・アフェアー』の巻

ベース大好き! by 板谷直樹 2013年12月24日

ベーシストにオススメの映画を紹介しているこのコラム、早くも4回目に突入です。板谷直樹氏が紹介するのは、マックイーンの有名作の90年代リメイク作。音楽的にも充実した作品なので、ぜひチェックしてください!

こんにちは、ベーシストの板谷直樹です。

お正月といえば映画! ゆっくり何を観ようかなー、でも堅苦しいのは嫌、何も考えずに楽しめるのがいいな……という人のために今回はスタイリッシュでスリリング、セクシーな大人の恋愛も楽しめる『トーマス・クラウン・アフェアー』(原題 The Thomas Crown Affair/1999年作品)を紹介しましょう。

オリジナルとリメイク版がリンクするような演出

99年に公開されたこの映画はリメイク版で、オリジナルはスティーブ・マックィーンが主演した『華麗なる賭け』(原題 The Thomas Crown Affair /1968年)。実業家として成功している主人公の裏の顔は泥棒のプロ、銀行強盗で大金を手にする一方、保険調査員の女性に正体を見抜かれつつも恋に落ち、やがて追いつめられてゆく2人の行く末は……というストーリーです。リメイク版ではやや設定が違い、銀行強盗ではなくメトロポリタン美術館からモネの作品を盗む絵画泥棒、舞台もボストンからニューヨークというように変わっています。

主演のピアース・ブロスナンは5代目ジェームズ・ボンドとして007シリーズに出演したのが有名ですが、80年代に放映されたテレビドラマ「探偵レミントン・スティール」のコミカルな役の方が印象的な人も多いのではないでしょうか? この劇中でも随所にニヤリとさせられる場面があり、一瞬見せるお茶目な仕草も見物です。レストランのシーンでポッキーをかじる姿など、007では観れませんからね。とは言え長身でハンサムなのでどんなシーンもカッコいい、ジャガー・ルクルトの腕時計レベルソとスーツ姿もバッチリ決まっています。

恋に落ちる保険調査員役レネ・ルッソはセクシーでエレガント、自立していて頭の切れる大人の女性を演じていて、同性からも好感を持たれているようです。危険な男トーマス・クラウンとの知的なラブゲームの行方は一体どうなってしまうのでしょうか?

そして面白いのがトーマス・クラウンの精神カウンセラー役のフェイ・ダナウェイ。実はオリジナル『華麗なる賭け』の時の保険調査員役なんですね。あの時の恋の痛手から「私は全部お見通しよ」的にアドバイスする姿がとても面白い! オリジナルとリメイク版がリンクするような演出になっているので、まだの人はぜひ2作とも観てみるといいでしょう。

ルグラン作の主題歌をスティングがカバー

さて、音楽の方でも注目すべき点がいくつかあります。ダンスフロアのシーンでは、ディジー・ガレスピーやチャーリー・パーカーなどと共に“アフロ・キューバン・ジャズ”をクリエイトとしたラテン・ジャズのマエストロ、チコ・オ・ファリルのアフロ・キューバン・オーケストラが出演し演奏している点。

また映画のクライマックス、トーマス・クラウンが美術館に絵画を戻すシーンにニーナ・シモンの「Sinnerman」という曲が使われている点も聴きどころ。独特の濃厚な歌声で「Oh sinnerman, where you gonna run to Sinnerman?」(罪人よどこへ向かって走っていくんだ?)と問いかけて、この場面の緊張感をより一層高めるのに効果を出しているように思います。

そしてエンドロールで流れる曲は、『華麗なる賭け』でアカデミー主題歌賞を受賞した「風のささやき」(原題Windmills of Your Mind、作曲はミシェル・ルグラン)をスティングがカバーして歌っているんですね。リメイク版のこの曲ではシンセベースが使われていますが、マイナーコードの上で9thをうまく使ったベースラインが聴けます。譜例の偶数小節では9thからマイナー10thへ動くラインになっていて、ここがより曲の洗練さを引き出しているように思います。映画の余韻に浸りながらこの辺りもぜひチェックしてみてください。

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板谷直樹(いたや なおき)

板谷直樹

札幌市出身 バークリー音楽大学卒。R&B、AOR、ポップに親しみ15歳よりベースをはじめ、当時からセッション系ミュージシャンに憧れて様々なジャンルを吸収しようと試みた。札幌での活動を経て渡米し、本場のジャズやラテンミュージックに触れ多大な影響を受けている。「最先端のグルーヴとメロディックなソロ」を追求し、アーティストのライブやレコーディングも多数。著書『ベース・ラインで迷わない本』『一生使えるベース基礎トレ本』『一生使えるベース基礎トレ本 スラップ強化編』『一生使えるアドリブ基礎トレ本 ベース編』『ベーシスト 究極の選択60』(すべて小社刊)



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