第39回:ベーシストにお薦めの映画紹介vol.34『フラッシュダンス』の巻

ベース大好き! by 板谷直樹 2016年9月30日

板谷直樹さんがベーシスト/ミュージシャン目線で古今東西の映画を紹介するこの連載。今回は、80年代をある意味代表するダンス作品が取り上げられました。しかしセンベロって、安い呑み屋のことだけじゃないんですね!

80年代にはMTVの流行に乗ってミュージックビデオスタイルの映画が流行った記憶があります。有名なところでは『トップガン』や『フットルース』がそうで、映画がヒットすればサウンドトラックからもヒットが生まれ、それがまた映画の宣伝に繋がるという相乗効果を生み出しました。今回紹介する『フラッシュダンス』(1983年、アメリカ作品)はまさにそのはしりと言える代表的な作品ですね。

70年代の暗さがない、いかにも80年代らしいポップな作品

昼は溶接工として働きながら、プロのダンサーを夢見る18歳のアレックス(ジェニファー・ビールス)が挫折や旅立ち、 別れを経験しながら成長してくサクセス・ストーリー。単純明解ですが前向きさに溢れ70年代のような暗さがない、いかにも80年代らしいポップな作品で、普段映画を見ない人にもお薦めできる1本です。オーディションで選ばれたジェニファー・ビールスの主演デビュー作ということもあり、彼女の新鮮な演技も魅力的です。

いわゆる名場面と呼ばれるシーンがありますが、舞台の上から水が出てアレックスがずぶ濡れになって踊る演出は、まさかそんなのないだろう! と誰もが突っ込みたくなるはず。日本のお笑いでもパロディで使われたり、これはかなり話題になった場面でした。それもそのはず監督のエイドリアン・ラインはコマーシャルフィルムの出身で、短い時間の中でインパクトのある映像を見せるのがとても上手いです。また光と影の使い方、被写体をアップで撮って見せるのも特徴ですね。このあたりは後に監督する『ナインハーフ』や『危険な情事』にも通じます。

さて、本作の中心にはダンスと音楽があるのですが、ダンスについてはブレイクダンスを取り上げたハリウッド最初の作品と言われています。ブレイクダンスは70年代にニューヨークを発祥とし若者達によって発展していったストリートダンスのことですが、日本で公開当時はまだブレイクダンスという呼称がなく、この作品より後の84年に公開された『ブレイクダンス』によって広まっていったと言われています。現在このジャンルは世界で一番ダンス人口が多いそうで、それだけ影響力のあるものなんですね。劇中ではラジカセを置いてストリートでダンスする若者や、警官が踊りながら交通整理をしている場面が印象的でした。

個人的な一押し曲はマイケル・センベロ「マニアック」

挿入されている音楽は歌ものが中心で、場面場面でPVを見ているような演出がなされています。主人公が歌うわけではないので、ミュージカル映画とは趣きが違うというのが当時新しく、ファッショナブルでスタイリッシュな感覚がヒットの要因の1つであることは間違いありません。サントラに名を連ねるのはローラ・ブラニガン、ドナ・サマー、キム・カーンズなど80年代を代表するアーティスト達。中でもアイリーン・キャラが歌う主題歌は映画を観たことがない人でも知っているくらい流行りましたね。ちなみに日本では麻倉未稀さんのカバーでTVドラマ「スチュワーデス物語」の主題歌としても使われていました。

個人的な一押しは「マニアック」という曲を歌うマイケル・センベロというアーティスト。今まで聞いたことも無いし突然出てきた印象だったのですが、彼は元々スタジオ系ミュージシャンでスティーヴィー・ワンダーやダイアナ・ロス、チャカ・カーン等のアルバムにギタリストとして参加しているのです。そして1stソロアルバム『Bossa Nova Hotel』が83年に発表されるのですが、そこに収録されている「マニアック」がフラッシュダンスにも収録され大ヒットとなったわけです。個人的には『Bossa Nova Hotel』は良質なAORが多数収録された名盤だと思うので、こちらも是非チェックしてみるといいですよ。

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板谷直樹(いたや なおき)

板谷直樹

札幌市出身 バークリー音楽大学卒。R&B、AOR、ポップに親しみ15歳よりベースをはじめ、当時からセッション系ミュージシャンに憧れて様々なジャンルを吸収しようと試みた。札幌での活動を経て渡米し、本場のジャズやラテンミュージックに触れ多大な影響を受けている。「最先端のグルーヴとメロディックなソロ」を追求し、アーティストのライブやレコーディングも多数。著書『ベース・ラインで迷わない本』『一生使えるベース基礎トレ本』『一生使えるベース基礎トレ本 スラップ強化編』『一生使えるアドリブ基礎トレ本 ベース編』『ベーシスト 究極の選択60』(すべて小社刊)



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