第35回:ベーシストにお薦めの映画紹介vol.30『キャバレー』の巻

ベース大好き! by 板谷直樹 2016年4月18日

ベーシストにオススメの映画を紹介する板谷直樹さんのコラムも、ついに30回! その記念すべき時に取り上げられたのは、マリーンがなつかしい日本映画の『キャバレー』です。なんと、寺島進さんも出演されていたのですねぇ。

前回の『汚れた英雄』に続き昔の角川作品にハマっている板谷です。当時の角川映画の魅力って何でしょうね、今よりお金をかけて作っている感じはバブルの時代の象徴のようですが、内容的には大人向けのストーリーで全く軽くないというのが個人的に好きなんだと思います。そこで音楽を題材にしたものはないのかな? と調べてみたらありました。キャッチには「天才サックス奏者の成長と友情を描いたハードボイルドの傑作」なんて書いてます。うーんこれは見てみよう、というわけで今回は86年に公開された「キャバレー」をご紹介します。

毎回「レフト・アローン」をリクエストするヤクザ

物語は1950年代。ジャズにのめり込み港町にあるキャバレー「スターダスト」でステージに立つ青年矢代と、彼に毎回「レフト・アローン」をリクエストするヤクザの滝川(鹿賀丈史)の二人の奇妙な友情を、彼らを取り巻く人間模様を描きながら進んで行きます。50年代の設定なので、映像は全体的にセピア調で煙ががった感じに演出されていますね。

主演のサックス奏者矢代を演じるのは野村宏伸。薬師丸ひろ子の相手役でデビューし本格的な主演は本作が初。その後87年からスタートするテレビドラマ「びんびんシリーズ」でブレイクしたアイドル系の俳優でした。この映画の魅力の半分は、滝川を演じる鹿賀丈史のダンディズムに支えられていると言ってもいいかもしれません。そして今は政治家へと転身した三原じゅん子の演技もいいし、バーの女南部恵を演じる倍賞美津子の存在感もさすがです。

南部恵の兄は他界した有名天才サックス奏者で、バーで流れる彼の演奏に矢代はこんなことを言います。「繊細、、なんて言うんじゃない。震えている神経をむき出しにしているような、音の極限まで行った人。」ミュージシャンでもこんなふうに言えないですが、言ってみたら格好いいだろうなー(笑)と思わせる印象に残るセリフですね。

角川春樹事務所創立10周年記念作品ということで、角川作品にゆかりのある俳優陣が大勢ゲスト出演しているのも見どころで、ざっと名前を挙げると原田知代、薬師丸ひろ子、渡辺典子、原田貴和子、真田広之、渡瀬恒彦、丹波哲郎、千葉真一といった面々。一瞬ですが作家の北方謙三が出てきたのにはびっくりしました。あとクレジットにはないですが寺島進も出ています。彼らがどのシーンでどんな役で出てくるかを見ているだけでも楽しいですよ。

 参加メンバーの演奏が素晴らしい!

この作品中には随所にサックスの演奏シーンがあり、音色やフレージングそのどれもがとても良いのです。ステージシーンは勿論、港での練習シーンなど、これは実際誰が吹いているのだ? ととても気になりました。調べてみたら大友義雄さん、プロフィールには1947年生まれと記されているので公開当時は39歳でしょうか。ウッドベースの坂井紅介さん他、参加しているメンバーの演奏も素晴らしいものがあります。残念ながらサントラは現在廃盤なので中古で見つけるしかなさそうです。

Cabaret

譜面はエンドクレジットで流れる「レフト・アローン」のテーマ8小節目に出てくる高音域のフィル風です。ウッドベースではG弦12フレットをハーモニクスで鳴らすことがありますが、開放弦のGの実音と交互に鳴らすことで跳躍の大きなフィルを作り出しています。エレキベースの人も是非参考にやってみるといいでしょう。

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板谷直樹(いたや なおき)

板谷直樹

札幌市出身 バークリー音楽大学卒。R&B、AOR、ポップに親しみ15歳よりベースをはじめ、当時からセッション系ミュージシャンに憧れて様々なジャンルを吸収しようと試みた。札幌での活動を経て渡米し、本場のジャズやラテンミュージックに触れ多大な影響を受けている。「最先端のグルーヴとメロディックなソロ」を追求し、アーティストのライブやレコーディングも多数。著書『ベース・ラインで迷わない本』『一生使えるベース基礎トレ本』『一生使えるベース基礎トレ本 スラップ強化編』『一生使えるアドリブ基礎トレ本 ベース編』『ベーシスト 究極の選択60』(すべて小社刊)



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