第34回:ベーシストにお薦めの映画紹介vol.29『汚れた英雄』の巻

ベース大好き! by 板谷直樹 2016年3月11日

ベーシストならではの視点で板谷直樹さんが映画を紹介する人気コラム、最新版はあの角川春樹の初監督作品! さすがにベースとは無関係でしょうと思いきや、意外なつながりが!!!! これはビックリです。

小さい頃から車が好きでした。20代前半は音楽そっちのけ、友人のAE86の助手席に乗せてもらったり、自分はランサーターボを駆って峠や港へよく出向いていたものです。特に冬の峠はドリフトの格好の練習場でした。無茶な走りで結局3台廃車にしてしまったし、行く末は取り返しのつかないことになっていたかもしれないので、そんな走りはやめてよかったと思っているのだけれど、TV放映されるF1レースは見てしまうし、カーアクション映画となるとやっぱり気になってしまうわけです。で、最近角川映画THE BESTと銘打って過去の作品が再発されている中に『汚れた英雄』(1982年、日本作品)というバイクレーサーを題材にした映画があったので見てみるとこれが結構当たり。今回はこの作品を紹介したいと思います。

角川春樹の初監督作品

『汚れた英雄』は大藪春彦の同名小説を映画化、本来角川春樹は製作の人間でプロデューサーでしたが、監督の人選に難航したため自らメガホンを取ったという初の監督作品なんですね。当時「コンマ1秒のエクスタシー」というキャッチとローズマリー・バトラーが歌う主題歌と共にCMでよく流れていた記憶があります。はじめて観た作品の特徴はセリフの少ない演出に無駄を削ぎ落としたスタイリッシュな映像。レースシーンはドキュメンタリー調でレーサー目線のカメラアングルなど、当時としてはかなり斬新だったはず。今観てもイイですね。

物語は国際A級500ccクラスにプライベート出場するライダー北野晶夫(草刈正雄)と、ヤマハのワークス・ライダーとして出場する大木圭史(勝野洋)のトップ争いを軸に、人材や設備が潤沢なワークスチームとは状況が正反対の北野が、レース資金を集めるために長身で端正な容貌を武器に次々とセレブ美女をパトロンにしていくというもの。バイクレースを題材にした単なるアクション映画ではない異色の作品と言えますね。

北野という男の人物像は一人になれば黙々と体を鍛え上げ、マシンのセッティングとテストにも余念がなく、レースになれば天才的速さを見せつける魅力的な男。その上女性の前ではこっちが赤面するようなセリフや、部屋を埋め尽くす花のプレゼントなど、やりすぎな位振り切れていて、まあ彼にだったら援助してもいいって思ってしまうのかな、、。女たらしではあるけれど詐欺師ではないんですよね。

そんな北野の最も印象的な場面は彼の住んでいる部屋にて。地下のプールから階段を上がると広々としたコンクリート打ちっ放しのスペース。グラスに氷をチャ リンと入れブシュッと開けたのはペリエ(キャップ式ではない、栓抜きで開けるタイプ)で、ライムを絞りグラスを持ってブラインドの外を眺めます。シャワー を浴びた後ドレッサールームへ。ここが凄くてズラーッとハンガーに掛けられたスーツから2着選び、壁の棚からワイシャツを出して今夜の服を決める。こんな バブリーな設定に当時何人の男が憧れたことでしょう(笑)。

 ローズマリー・バトラーの意外な過去!

バイク好きの人はご存知でしょうが、サーキットでは草刈正雄の代わりにレーサーの平忠彦がスタントを務めたのは有名な話で、ネット上にも多くの書き込みが見て取れました。映画の主人公さながらの端正なルックスで、資生堂の整髪料TECH21のCMにも出ていたので覚えている人もいるかもしれません。全日本ロードレース選手権500ccでは3年連続チャンピオン、86年のロードレース世界選手権、最終戦サンマリノGPでは表彰台1位の実力の持ち主です。

さて、主題歌を歌うローズマリー・バトラーを調べてみたところ意外にも元々ベーシストだったことが判明しました(左利き)。4人組の女性バンド「The Ladybirds」で活動後「Birtha」にも参加。その後バックコーラスとしてボニー・レイットやジェームス・テイラーと活動を共にします。YouTubeでインタヴューが見れますが、同じ左利きベーシストのポール・マッカートニーの名を挙げ、ビートルズのファンだったと言っているのが印象的でした。

個人的に角川映画は好きなので、まだ他に面白くて紹介したい作品があるんですよ。松田優作や原田知世主演の作品なんかはいいですね。それでは次回をまたお楽しみに。

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板谷直樹(いたや なおき)

板谷直樹

札幌市出身 バークリー音楽大学卒。R&B、AOR、ポップに親しみ15歳よりベースをはじめ、当時からセッション系ミュージシャンに憧れて様々なジャンルを吸収しようと試みた。札幌での活動を経て渡米し、本場のジャズやラテンミュージックに触れ多大な影響を受けている。「最先端のグルーヴとメロディックなソロ」を追求し、アーティストのライブやレコーディングも多数。著書『ベース・ラインで迷わない本』『一生使えるベース基礎トレ本』『一生使えるベース基礎トレ本 スラップ強化編』『一生使えるアドリブ基礎トレ本 ベース編』『ベーシスト 究極の選択60』(すべて小社刊)



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