第31回:ベーシストにお薦めの映画紹介vol.26 『ジャコ最後の真実/ブライアン・メルヴィン』の巻

ベース大好き! by 板谷直樹 2015年11月10日

ベーシストにオススメの映画を紹介する板谷直樹さんのコラム、今回は趣向を変えてDVD作品を取り上げています。もう、没後30年なんですねぇ。でも、その影響力はいまだに衰えない、伝説のベーシストのドキュメンタリーです。

ベーシストならばジャコ・パストリアスの名前を1度は聞いたことがあるでしょう。フェンダーのジャズベースを改造したフレットレスがトレードマーク。驚異的なテクニックとハーモニクスや重音奏法を駆使した革新的なアプローチは、見る者聴く者を釘付けにしました。

没後30年近くなる今でも雑誌に取り上げられることが多く、メタリカのベーシスト、ロバート・トゥルヒーヨが手がけるドキュメンタリー・フィルム『ジャコ』も2015年11月27日に発売されることが発表されています。

というわけでジャコ・パストリアスが再び注目され、ファンの間でも静かに盛り上がりを見せている昨今。今回は2012年に発売されたジャコのドキュメンタリーDVD『ジャコ最後の真実/ブライアン・メルヴィン』(原題:Brian Melvin’s Reflections with Jaco Pastorius/アメリカ作品)を紹介しましょう。

ヨーロッパのジャコ・パストリアス

まずはブライアン・メルヴィンという人物について。サンフランシスコで活動するドラマーであり、1986年に精神状態の悪化により入院していたジャコを保護するという条件で退院させたのが彼でした。サンフランシスコの実家にジャコを招いて生活をし、音楽と寝食を共にした貴重なエピソードが語られているのが本作なのです。

前半のブライアンのインタヴューではラジオやテレビ番組からの影響など、60年代のサンフランシスコの音楽事情とあわせて生い立ちや音楽に目覚めていった経緯が語られます。彼は20代前半にアムステルダムへ行くのですが、キーストン・コーナー・ジャズクラブのオーナー、トッド・バルカンに出会い、その縁でレコード契約に漕ぎ付けます。そこで「ゲスト参加させたいプレイヤーがいれば呼んでいい」ということになり、憧れていたジャコ・パストリアスにレコーディングを依頼するんですね。1984~85年に実際に彼を迎えて録音が行われ「ナイトフード」という名義でリリースされたのが交流のはじまりでした。

ジャコとのヨーロッパ・ツアーについても語られますが、彼が飛行機が飛び立つ寸前に降りてしまったり、スウェーデンでは呼び屋とのトラブルでコンサートをめちゃくちゃにし、新聞に「最悪のコンサート」と書かれてしまったことなど、今となっては笑って話しているブライアンですが、そんなトラブル・エピソードも明かされています。一方では、感謝祭の日にライブをやった時、七面鳥を30個買ってきてライブ後にホームレス達に配っていたこと、ひたむきに練習に取り組む姿勢、音楽についてしゃべる言葉についてなど、感銘を受けた彼の人物像についても語られます。

晩年の貴重なライブ映像も収録

音楽的な見どころでは、晩年のジャコのライブ演奏が動画として収められていることでしょう。白黒で高画質ではありませんが全部で16曲を収録(即興で短いものもある)。ここでジャコはフレット付きのスタックノブのジャズベースを弾いていて、右手のピッキング・フォームから4フレット分以上に指を開く左手のストレッチの使い方まで、じっくり観察することができます。また「Fannie Mae」は演奏しながら歌も披露していて、小さなクラブギグならではの雰囲気が伝わってきていいですね。 jaco

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

譜例は「Blackbird」の中に出てくる16分音符の速いパッセージですが、ベース単独のソロの中でもしばしば聴くことができるもので、手グセの1つのようなフレーズです(動画では19:00~に登場)。上段は普通の手の大きさの人が考えるフィンガリングをTAB譜に示しました。ところがジャコの手はかなり大きく、下段のように最初のE音→G音を人差し指→中指を使っているのが見て取れます。その後に出てくる2カ所の音程も同様の指使いで弾けば、2弦から1弦への弦移動を1回だけで弾くことができるのです。一方上段の譜例では3弦~1弦間を5回移動しなければなりません。ストレッチをうまく使って弦移動を最小限にすれば、速いフレーズでもピッキングを安定させることができるのですね。皆さんも例にならって、難しいと感じるパターンやメロディのフィンガリングを今一度考えてみるといいでしょう。

 

 告知
板谷直樹のリーダープロジェクト「ニッポングルーヴマジック協会」。ベースはもとよりトラック制作をプロデュースし、先端のビートで民謡を現代に蘇らせる。第一弾音源は民謡歌手の涌井晴美さんをフィーチャーした青森県民謡の「南部俵積み唄」がヴィレンジヴァンガードのコンピCD「BDM」に収録となりました。
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板谷直樹(いたや なおき)

板谷直樹

札幌市出身 バークリー音楽大学卒。R&B、AOR、ポップに親しみ15歳よりベースをはじめ、当時からセッション系ミュージシャンに憧れて様々なジャンルを吸収しようと試みた。札幌での活動を経て渡米し、本場のジャズやラテンミュージックに触れ多大な影響を受けている。「最先端のグルーヴとメロディックなソロ」を追求し、アーティストのライブやレコーディングも多数。著書『ベース・ラインで迷わない本』『一生使えるベース基礎トレ本』『一生使えるベース基礎トレ本 スラップ強化編』『一生使えるアドリブ基礎トレ本 ベース編』『ベーシスト 究極の選択60』(すべて小社刊)



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