第29回:ベーシストにお薦めの映画紹介vol.24 『バニシング・ポイント』の巻

ベース大好き! by 板谷直樹 2015年8月28日

意外にB級好みのベーシスト、板谷直樹さんが古今東西の映画を紹介するこの連載。今回は、70年代アメリカの雰囲気を伝える埃っぽい1作です。クルマ好きならではの視点も盛り込みつつ、もちろん音楽のお話もありますよ。ぜひ、チェックしてください。

皆さんは“アメリカン・ニューシネマ”というジャンルをご存じでしょうか? 1960年代後半から70年代に作られ、当時の若者の反体制や世相の不条理などをテーマにしたものが多く、実験的だけれども数々の名作が生まれていった時代の作品群の呼称です。以前に紹介した『ダーティハリー』や『タクシードライバー』も、そのうちの代表作と言われています。

背景にはベトナム戦争やヒッピー・ムーブメント、ドラッグ・カルチャーなどが大きく影響し、若手の制作者がより過激で社会的なメッセージを込めた作品を世に出し、観客もそれに熱狂していった時代と言えます。同時に当時大きく発展したロック・ミュージックも、アメリカン・ニューシネマには欠かせないものの1つのような気がしますね。というわけで、今回はその作品群の中から、ド派手なカーアクションが見ものの『バニシング・ポイント』(1971年、アメリカ作品)を紹介しましょう。

70年型ダッジ・チャレンジャーが、もう1人の主役

あらすじは、車を陸送をする主人公コワルスキーが請け負った“70年型ダッジ・チャレンジャー”をデンバーからサンフランシスコまで15時間で届ける、という無謀な賭けに出て、警察に追われながら数々の騒動を巻き起こしていくというもの。セリフを聞かせるというよりは映像で見せるタイプの作品で、白バイやパトカー、ヘリを撒きながらひたすらに走ります。やがて彼の行動に共感する盲目のDJスーパーソウルが、警察情報をラジオに流し始めコワルスキーを助けようとするのですが……。

コワルスキーは過去に海兵隊、警察官、レーシング・ドライバーといった経歴があって、時折フラッシュバックする映像が入るのも特徴ですね。白バイやパトカーとのチェイスシーンではレーサー時代の思い出、また正義を貫くため上司の警官に逆らい解雇された過去、彼女を失った喪失感など、いろいろと訳ありの人物。そもそもなぜ無謀な賭けに出たか? ということに特に意味は無いようですが、その辺りにアメリカン・ニューシネマが持っているニヒリズムのようなものを感じます。ちなみにタイトルのバニシング・ポイントは、“ものの尽きる最後の一点”という意味ですね。映像的には砂漠の中に真っ直ぐのびる道、埃が舞い上がる乾燥した空気と広い空、古い田舎の風景などが印象的でした。

主役とともにひた走る70年型ダッジ・チャレンジャーは大型2ドアクーペで車重は1,700Kg、排気量7,000ccで430馬力あるマッスルカーの典型。劇中では160マイル(257km/h)出ると言っています。何度かシフトノブを操作するシーンがありますが、ガンタイプのグリップでオートマのような動かし方をしていて、あれ? と思いましたが、よく見るとクラッチを踏んで操作しているのでマニュアルですね。タランティーノの映画『デスプルーフ』では本作のことを「(B級)アメリカ映画の最高傑作の1つ」と紹介し、スタントウーマンのゾーイ憧れの車として登場するシーンがありますよ。まぁこの時代のアメ車は無駄にデカくて迫力があって、好きな人にはたまらないでしょう。

ベースラインのアイディアに注目!

挿入されている楽曲は70年代の雰囲気がプンプンするロックンロール、ブルース、カントリーなどバラエティに富んでいます。中でも乾いたアコースティック・ギターの音色に魅せられました。

VanishingPoint

 

 

 

 

 

 

譜面は、クライマックスに流れるSegarini and BishopのOver me風ベースライン。ゴキゲンなシャッフルでリズム&ブルース色の濃い曲です。3小節目の最後の拍はアンティシペイションで、次のコードを先取りすることによってラインや楽曲に推進力が生まれています。また7~8小節目ではそれまでと違う音使いで、頭のコードに戻ることを予感させるようなラインになっています。このようなアイディアはジャズやブルースをはじめ、ファンクでも頻繁に使われるのでぜひ参考にしてみてください。

「ボーカリストとベーシストのためのワークショップ」vol.5発売開始!

ダウンロード版とDVD版があります。DVDは2枚組、ダウンロード版はHD720p movファイルでの提供です。

収録時間:約2時間50分 ¥6,000(税、送料込み)

  • 第1部:小林貴子(Vo):声のしくみ、音程のつかみ方
  • 第2部:板谷直樹(B):リズムの捉え方、様々な練習方法
  • 第3部:小林貴子(Vo)+ 板谷直樹(B):曲の読解(構成、展開、全体像について)、質疑応答

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板谷直樹(いたや なおき)

板谷直樹

札幌市出身 バークリー音楽大学卒。R&B、AOR、ポップに親しみ15歳よりベースをはじめ、当時からセッション系ミュージシャンに憧れて様々なジャンルを吸収しようと試みた。札幌での活動を経て渡米し、本場のジャズやラテンミュージックに触れ多大な影響を受けている。「最先端のグルーヴとメロディックなソロ」を追求し、アーティストのライブやレコーディングも多数。著書『ベース・ラインで迷わない本』『一生使えるベース基礎トレ本』『一生使えるベース基礎トレ本 スラップ強化編』『一生使えるアドリブ基礎トレ本 ベース編』『ベーシスト 究極の選択60』(すべて小社刊)



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