第25回:ベーシストにお薦めの映画紹介vol.20 『ラウンド・ミッドナイト』の巻

ベース大好き! by 板谷直樹 2015年4月10日

ベーシストにオススメの映画紹介、今回は有名ジャズ・ミュージシャンが多数出演の作品です。板谷直樹さん的な見どころは、いったいどこだったのでしょうか?

実在した偉大なジャズ・ミュージシャンに、バド・パウエルとレスター・ヤングがいます。

バド・パウエルはジャズ・ピアノにおいてビバップ・スタイルを広め、現代では一般的なピアノ・トリオ形式を始めた人物。1960年代にはフランスに渡って活動していました。

一方、テナー・サックス奏者のレスター・ヤングはチャーリー・パーカーらが目標としていた人物で、プレジデント・オブ・サックス(略したあだ名はプレズ)と呼ばれていました。残念ながら50年代後期には酒に溺れ体調を崩し、パリでのコンサート帰国直後に帰らぬ人となります。

今回は、この2人のジャズ・ミュージシャンをモデルに描いた『ラウンド・ミッドナイト』(1986年、アメリカ・フランス合作)を紹介しましょう。

本物のジャズ・ミュージシャンが多数登場!

テナー・サックス奏者の主人公、デイル・ターナーを演じるのは、なんと本物のジャズ・ミュージシャン、デクスター・ゴードンです。バンドのピアニストにはハービー・ハンコック(音楽も担当)やギターにジョン・マクラフリン、ドラムにビリー・ヒギンズやトニー・ウィリアムス、ベースにロン・カーターらが出演し、一流プレイヤーが続々と登場するのも見所。演奏シーンも多く、ジャズファン必見の作品となっています。

舞台は1959年。ジャズ・ミュージシャンは、差別や生活苦から逃れてヨーロッパへ移住することが多かった時代。主人公のデイルもアメリカの生活に半ば嫌気がさし、フランスはパリへと拠点を移します。アメリカではマイナーなジャズでも、芸術として認めてくれるのがヨーロッパの聴衆だったのですね。

しかしデイルの生活は荒れていました。相手構わず酒をせびり、泥酔して行方をくらましては病院に搬送されることもしばしば。「毎晩創造することは、それが美しくても死ぬほど苦しい」というセリフが心に刺さります。

そんなデイルに見かねて手を差し伸べるのが熱心なファンのフランシス(フランソワ・クリュゼ)という男。彼もまた生活に問題を抱えているのですが、デイルを引き取り世話人として面倒をみることになるのです。物語はデイルとフランシスの心の交流と人間模様を軸に、ジャズの演奏が散りばめられた印象深い作品に仕上がっています。

主演のデクスター・ゴードンは60年代初頭~76年、アメリカを離れフランスとデンマークを拠点に活動していました。また50年代には、麻薬にむしまばれ2年間の投獄を経験しています。この辺りはデイル・ターナーという繊細な役柄(バド・パウエルとレスター・ヤングがモデル)を、そのまま地でいっているようなものですね。ボソボソとしゃがれた声や演技と思えない自然な振る舞いと表情には迫力があります。87年のアカデミー賞では主演男優賞にもノミネートされているんですね。

ベースにも見どころが多し!

さて、演奏シーンの多い本作ですが場面によってベーシストが代わります。パリの“ブルー・ノート”で演奏するのは、フランス人のピエール・ミシェロ。彼はマイルス・デイヴィス『死刑台のエレベーター』に参加しているので、聴いたことがある人もいるでしょう。デクスター・ゴードンがパリに拠点を移した後のリーダ・アルバム『Our Man in Paris』でも弾いているので、映画の前から実際に交流があったことになりますね。映像の中では暖かく伸びやかな低音を奏でています。

続いてスタジオ・レコーディングの場面では面白いことにツイン・ベースの編成で、ロン・カーターとマッズ・ヴィンディングが登場します。マッズ・ヴィンディングはデンマークのベーシストで、70年代以降デューク・ジョーダンやアート・ファーマー、ケニー・ドリューといったアメリカのミュージシャンのリーダー・アルバムに参加し、今やヨーロッパを代表するベテラン・ジャズ・ベーシストの1人。自身のリーダー作もあるので、興味のある人は聴いてみるといいでしょう。

RoundMidnight

 

 

 

譜例はニューヨークに戻ったデイルが娘のために演奏するシーンで、ロン・カーター風の3連アプローチを取り上げてみました。ジャズの雰囲気が出るようなラインはどのようなものか、エレキベースの人もぜひ研究してみるといいでしょう。

電書版が全5冊発売中です。単行本よりお求め安い価格となっているので、この機会にぜひゲットしてみてください!

iPad、iPhone、iPod touch、Mac版を購入する

Kindle版を購入する

板谷直樹(いたや なおき)

板谷直樹

札幌市出身 バークリー音楽大学卒。R&B、AOR、ポップに親しみ15歳よりベースをはじめ、当時からセッション系ミュージシャンに憧れて様々なジャンルを吸収しようと試みた。札幌での活動を経て渡米し、本場のジャズやラテンミュージックに触れ多大な影響を受けている。「最先端のグルーヴとメロディックなソロ」を追求し、アーティストのライブやレコーディングも多数。著書『ベース・ラインで迷わない本』『一生使えるベース基礎トレ本』『一生使えるベース基礎トレ本 スラップ強化編』『一生使えるアドリブ基礎トレ本 ベース編』『ベーシスト 究極の選択60』(すべて小社刊)



Amazon.co.jpから購入定期購読(特典つき)

バックナンバー

TUNECORE JAPAN

@bassmagazinejp からのツイート