第23回:ベーシストにお薦めの映画紹介vol.18 『遊星からの物体X』の巻

ベース大好き! by 板谷直樹 2015年2月6日

前回に引き続き、SF系、宇宙系の作品を取り上げた、ベーシスト板谷直樹さんによるオススメ映画コラム。冒頭の氷原空撮も印象深い、あの作品を掘り下げていきます。怖いですね〜。

2015年も2月になりました。それにしても連日寒い日が続いていますねー。皆さんのところはどうでしょうか?

寒い夜に真夏の映画はあまり似合わないので、今回は寒い上に怖い! という南極を舞台にしたSFホラー『遊星からの物体X(原題:The Thing/1982年アメリカ作品)』を紹介します。

南極を舞台にしたSFホラーの最高傑作

オリジナル版は1951年に作られた『遊星よりの物体X(原題:The Thing from
Another World)』で、このリメイク作が世界にトラウマを与えたと言ってもいい今回の82年版なわけですね。当時はテレビ放映で見ましたが、まずこの日本向けのタイトルにインパクトを感じました。「遊星って何?」「物体Xって?」と、学校では話題になっていましたね。

ちなみに“遊星”というのは“惑星”と同じ意味だそうで、ちょっとマイナーな“遊星”の方を選んでいるところにセンスを感じます。この日本語タイトルを決めた方には拍手を送りたい!

さて、冒頭は氷に覆われた南極、ヘリコプターから狙い撃ちされ逃げまわるハスキー犬が映し出されます。5分弱はセリフなしで不気味な音楽だけ。一体何がはじまるんでしょう? やっと場面が変わってアメリカ合衆国南極観測隊第4基地の様子。隊員はピンポンしたり、ギターを弾いたり、J&Bのスコッチをロックで飲んで、コンピューターのチェスゲーム(Chess Wizard)なんかをやっています。なんかユルく皆暇そうにしてますが大丈夫なんでしょうか?

ところが! さっき追いかけられていたあの犬が、第4基地に逃げ込んだことによって事態は一変します。

ストーリーは謎の生命体によって同化され、パニックに陥っていく12人の南極隊員の心理描写がよく描かれていて、それまで見たことのないおどろどろしい造形のモンスター(The Thing = “それ” 物体X)を登場させた特撮が見事に組み合わさった怖い怖い作品。暗く寒い南極に取り残され、絶望感しか漂わないエンディングにも「うーん」と唸ってしまいますが、今もって語り継がれる1本、SFホラーの最高傑作との呼び名も高い名作ですね。

主演はカート・ラッセル。この人は60年代から子役で活躍していて、今も幅広い演技で支持されている俳優です。見ていて安心感があって、まさに実力派という感じで僕も好きなんですね。他の出演者は、元大尉でエリート意識が強い隊長役にドナルド・モファット。生物学者役でいち早く同化するモンスターの存在に気づくウィルフォード・ブリムリーなど、かなりの個性派、演技派が脇を固め物語を面白くしています。またハスキー犬は前半しか出てきませんが、人間顔負けの賢い演技には感心してしまいますよ。この犬は後に『ホワイトファング』(1991年)にも出演しているようなので、チェックしてみるといいでしょう。

監督はジョン・カーペンター。ホラー作品『ハロウィン』シリーズやSFを多く手がけていて、なんでも4歳の時に観た『遊星よりの物体X』(ハワード・ホークス監督/1951年)の印象が強烈で映画製作を目指すきっかけになったそう。うーむ、早熟ですね。リメイク版の本作にもさぞかし力が入ったことでしょう。

 モリコーネ、再び

音楽は、この連載では2度目の登場となるエンニオ・モリコーネ。シンセサイザーによる暗く不気味な雰囲気のテーマ曲が印象的です。メロディは不安定で抽象的な重音が奏でられ、低音はF音がペダルで鳴っているというもの。

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この低音のリズムは、vol.16で紹介したスタンリー・クラーク作のものと同じ解釈をしていいと思います。パターンを繰り返し音程を動かさない、拘束力が強く緊張度の高い表現になっていますね。vol.16も見返しながら、本作のテーマ曲を聴いてみるときっと面白いですよ。

『一生使えるベース基礎トレ本』シリーズが一挙に3冊、電書版として発売になりました。単行本よりお求め安い価格となっているので、この機会にぜひゲットしてみてください!

板谷直樹(いたや なおき)

板谷直樹

札幌市出身 バークリー音楽大学卒。R&B、AOR、ポップに親しみ15歳よりベースをはじめ、当時からセッション系ミュージシャンに憧れて様々なジャンルを吸収しようと試みた。札幌での活動を経て渡米し、本場のジャズやラテンミュージックに触れ多大な影響を受けている。「最先端のグルーヴとメロディックなソロ」を追求し、アーティストのライブやレコーディングも多数。著書『ベース・ラインで迷わない本』『一生使えるベース基礎トレ本』『一生使えるベース基礎トレ本 スラップ強化編』『一生使えるアドリブ基礎トレ本 ベース編』『ベーシスト 究極の選択60』(すべて小社刊)



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