第20回:ベーシストにお薦めの映画紹介vol.15 『タクシードライバー』の巻

ベース大好き! by 板谷直樹 2014年11月20日

今回板谷さんが選んだのは、ロック好きでも知られるあの監督による約40年前の作品。有名俳優もたくさん出演していますが、音楽をバーナード・ハーマンが担当していることでも知られています。コミック等でもこの作品のイメージは多く引用されていて、時代を表すアイコン的な作品とも言えるでしょう。

1970~80年代に公開された映画には、時代背景もあってベトナム戦争がテーマになっていたり、主人公が帰還兵という設定の作品が多くあったように思います。代表的なものを挙げると『地獄の黙示録』や『ディアハンター』『ランボー』などがそうでしょうね。

今回取り上げる作品もそのうちの1つと言えますが、戦闘シーンなどは出てこないのが他の映画と決定的に違うところ。帰還兵の心の闇と行動を描き、多くのノミネートと受賞に輝いた、マーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ主演の傑作『タクシードライバー』(1976年、アメリカ作品)を紹介します。

独特な雰囲気のスコセッシ節が充溢

冒頭のクレジットタイトルではニューヨークの街の煙、雨とネオンのシーンに、サックスが主旋律のテーマ曲がピタリとはまります。

主人公は海兵隊あがりで不眠症の男トラヴィス(ロバート・デ・ニーロ)。彼の職はタクシードライバーで勤務は夜6時から朝6時まで、週に6日~7日という過酷なもの。都会の夜を彷徨うように走る彼の目に映るのは、ドラッグに溺れる若者、孤独や欲望などゴミ捨て場のように汚れきった社会です。

恋心を寄せる女性ともうまくいかない理想と現実のギャップ、「ここから飛び出して何かをやってみたい」日々のフラストレーションがやがて彼を過激な行動へと走らせていきます。

トラヴィスが恋心を寄せる選挙事務所勤務の女性ベッツィー役にシビル・シェパード。この人はテレビシリーズ「こちらブルームーン探偵社」の女社長役でブルース・ウィリスと共演していたので、知っている人も多いでしょう。

公開当時13歳だったというジョディ・フォスターは売春で生活をする少女アイリス役で出ていますが、子役には労働基準法があって、1日の労働時間が決められ徹夜の撮影は禁じられていたそうです。また性的な要素が濃い場面では、8歳年上の実姉コニー・フォスターが代役務めたというエピソードもあります。

もう一人重要な人物にポン引きでアイリスのヒモ、スポーツ役にハーヴェイ・カイテルが出演していますね。

マーティン・スコセッシ監督の映像や作風には独特な雰囲気があります。ドキュメンタリー・タッチでスローモーションの映像、主人公によるナレーション、精神的に病んでいる登場人物、などがあり作品を強く印象付けていると言えますね。同監督の『救命士』(1999年作品)も見てみましたがテーマや表現に共通する部分が多々あって(脚本も同じポール・シュレーダー)、これは現代版の『タクシードライバー』だな、と思いました。まだの人は併せてチェックしてみるといいでしょう。

遺作となったバーナード・ハーマンの音楽

音楽は、本作が遺作となったバーナード・ハーマン。1940年代から主に映画音楽を作曲し、アルフレッド・ヒッチコック作品を多く作曲した人です。ストリングスの重厚なオーケストレーションを聴かせるのが得意な人だと思いますが、本作のテーマ曲では意外にもサックスが主メロを取り、アレンジも6/8フィールのジャズになっていて、ニューヨークの街並みにぴったりとはまっている感じがしますね。

TaxiDriver

譜例はテーマ曲のエンディングについて書いてみました。サックスはトム・スコットですがエンディング1小節前のD♭7コード上で、♯11th→9th →♭7th→5thと吹き、さらにオクターヴ下の♯11th→9th →♭7thというようにテンションを含んで下降していくフレーズが印象的ですね。

また最後のコードはマイナー・コードではなくあえてマイナー・メジャー・コードになっているところも耳に残るサウンドです。サックスもそのコードに合わせて、ハーモニック・マイナー・スケールを吹いているんですね。

ジャズに限ったことではありませんが、作曲や編曲家、プレイヤーも含めてそれぞれがちょっとしたスパイスを加えていくことで楽曲をより印象付けることができます。ベーシストの皆さんも積極的にやってみてください。

新刊『ベースのフィルインを究める本』が発売されました。ベーシストの皆さんが知りたい「フィル」に特化した、今までに無い教則本となっています。こちらもぜひチェックしてみてくださいね!

板谷直樹(いたや なおき)

板谷直樹

札幌市出身 バークリー音楽大学卒。R&B、AOR、ポップに親しみ15歳よりベースをはじめ、当時からセッション系ミュージシャンに憧れて様々なジャンルを吸収しようと試みた。札幌での活動を経て渡米し、本場のジャズやラテンミュージックに触れ多大な影響を受けている。「最先端のグルーヴとメロディックなソロ」を追求し、アーティストのライブやレコーディングも多数。著書『ベース・ラインで迷わない本』『一生使えるベース基礎トレ本』『一生使えるベース基礎トレ本 スラップ強化編』『一生使えるアドリブ基礎トレ本 ベース編』『ベーシスト 究極の選択60』(すべて小社刊)



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