第19回:ベーシストにお薦めの映画紹介vol.14 『海の上のピアニスト』の巻

ベース大好き! by 板谷直樹 2014年10月27日

ベーシストなら見ておきたい映画を、板谷直樹氏がセレクトしてお届けしているこの連載。今回は、豪華客船でピアノを演奏する男の数奇な運命を描いた作品が登場です。いわゆるハコバンの苦労物語では、ありませんよ!

こんにちは、ベーシストの板谷直樹です。ところで皆さんは乗り物酔いって平気ですか?

僕は結構弱いほう。車は自分でハンドルを握っていると平気ですが、船となると断然苦手ですね。屋形船から大きなフェリーまで、いざ乗船の時は酔い止めが必須です。船上での演奏経験もありますが、波が高いとどうしようとか、あれは気が気ではありません……。

 

船の上で生まれた孤児がピアニストに

というわけで船繋がりで強引に行きますが、今回紹介するのはイタリア映画の『海の上のピアニスト』(1998年)。大西洋を横断する豪華客船でピアノを演奏する男の数奇な運命を描いたドラマです。主な登場人物は、1900という奇妙な名を持つ主人公にティム・ロス。この人どこかで見たことあるぞ? と思ったら『パルプ・フィクション』でファミレスのカップル強盗を演じていたので知っている人も多いはず。

また、1900のよき理解者で、一緒に演奏活動をするトランぺッターのマックス役にプルイット・テイラー・ヴィンス。彼の回想で物語が進んでいく重要な役を演じています。ちょっと気になるのが彼の目の動き。最初演技でやっているのかと思ったのですが、実は眼球振盪(がんきゅうしんとう)という病気らしいです(いつも目が泳いでいるように揺れている状態)。

冒頭はマックスが自分のトラッペットを売りに楽器屋を訪れるところからはじまります。最後にもう一度だけと曲を吹いたところ、店主がレコードを見つけ出し「その曲はこれか? この素晴らしいピアノを弾いているのは誰なんだ?」と問います。そこでマックスが、船で知り合った天才的ピアニスト1900のことを語り始めるのです。

1900は船上で産み捨てられた孤児で、黒人機関士に育てられながらやがてピアノに興味を持ち弾くようになります。大人になった1900は船内でバンドと共に演奏するようになりますが、彼のピアノスタイルは誰も聴いたことのないもので、瞬く間に世間に広まっていきます。ジャズとスウィングの創始者と言われるジェリー・ロール・モートンが噂を聞きつけ、ピアノ対決の一騎打ちをしたり、レコード会社が契約を持ちかけに来たりするのですが……。

しかし彼は自分の才能を知りながら決して船から降りようとしません。その理由は船がスクラップとなり、爆破され海へ破棄されてゆこうとする物語の最後に語られ
るのですが……。

エンニオ・モリコーネの手による印象的な楽曲

印象に残るのは、嵐の夜ラウンジでストッパーを外したピアノと共にダンスをするように演奏するシーン。そしてかなりの頻度で出てくるティム・ロスの演奏シーンは、指さばきが違和感なく、恐らく普段ちゃんとピアノが弾ける人なのだろうと感心します。また、ジェリー・ロール・モートンとのピアノ一騎打ちもコミカルに演出されていますが、緊張感が高く見どころの一つと言えますね。

監督と脚本は『ニュー・シネマ・パラダイス』で世界的に高い評価を得たジュゼッペ・トルナトーレ。原案と脚本にも携わる形が多く、80年代中頃から作品を出している監督です。音楽は60年代から数々の作品に携わり、やはり『ニュー・シネマ・パラダイス』でも知名度を得た巨匠エンニオ・モリコーネ。今作でも美しい印象に残る曲を書いています。

pianist

譜面はピアノ一騎打ちが始まる前の、ジェリー・ロール・モートンが登場するシーンのメロディ構成音。旋律が面白いのですが、ホールトーン・スケールに11thが加えられた独特なものでした。この曲には和音が無く、持続されるベースのE音と、チューバのメロディだけで成り立っています。仮にコードを付けるとするとE7が妥当でしょうか。

皆さんも譜面を参照しながらメロディをなぞってみたり、インプロヴァイズしてみると面白いと思いますよ。

新刊『ベースのフィルインを究める本』が発売されました。ベーシストの皆さんが知りたい「フィル」に特化した、今までに無い教則本となっています。こちらもぜひチェックしてみてくださいね!

板谷直樹(いたや なおき)

板谷直樹

札幌市出身 バークリー音楽大学卒。R&B、AOR、ポップに親しみ15歳よりベースをはじめ、当時からセッション系ミュージシャンに憧れて様々なジャンルを吸収しようと試みた。札幌での活動を経て渡米し、本場のジャズやラテンミュージックに触れ多大な影響を受けている。「最先端のグルーヴとメロディックなソロ」を追求し、アーティストのライブやレコーディングも多数。著書『ベース・ラインで迷わない本』『一生使えるベース基礎トレ本』『一生使えるベース基礎トレ本 スラップ強化編』『一生使えるアドリブ基礎トレ本 ベース編』『ベーシスト 究極の選択60』(すべて小社刊)



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