第18回:ベーシストにお薦めの映画紹介vol.13 『シャイン』の巻

ベース大好き! by 板谷直樹 2014年7月3日

ベーシストにおススメの映画を、板谷直樹氏が厳選してお届けします。今回は、実話に基づいて語られる天才ピアニストのお話です。

父と息子、この男同士の関係というのはなんとも複雑です。息子が大きくなって父を越えようとするのは本能らしいし、自分を越えようとする息子を見る父は一体どんな気分なのでしょうか。聞いた話でしかわからないけれど、やはり父は息子に嫉妬するし、一度は自分を越えようとするのを阻止しようとするのだと。なのでドラマや映画でもしばしば取り上げられるように、常にライバル関係になることが少なくないのでしょう。

そういえば『スター・ウォーズ』のルーク・スカイウォーカーとダーズ・ベイダーだって、善と悪の戦い=息子と父親、というのがテーマでしたね。

実話に基づく天才的ピアニストの生涯

今回紹介するのは息子を過剰に愛し、厳格に育てようとする父と、精神に障害を持ってしまった天才的ピアニストの息子の生涯を、実話をもとに描いた『シャイン』です。

雨の中道に迷ってしてまった男デヴィッド(ジェフリー・ラッシュ)が、閉店したレストランを訪れる場面から物語はスタートします。何やら意味のわからないことを早口で口走るデヴィッド。どうやら精神に障害を持っているようなのですが、その彼が過去を回顧する形で物語は進んでいきます。

場面はデヴィッドの少年時代。ピアノのコンクールで父ピーター(アーミン・ミューラー=スタール)が心配そうに見守っていますが、父はその結果がわかっているかのごとく、発表を待たずに帰ってしまうんですね。いつも機嫌が悪く、権力を振りかざし、ぎくしゃくしている家族の仲。父の口癖は「デヴィッド、おまえはついている」でした。

ピーターという父はかなり偏屈で頑固な性格で、息子を異常なまでに溺愛し家族の絆に執着している部分があります。なぜそうなったのかはっきり明かされませんが、子供時代に買ったバイオリンを親に叩き壊され、自分が音楽ができなかったこと、強制収容所で家族を失ったことなど、深い傷があるようなのです。

やがて時が経ちデヴィッドが青年になった頃、念願のピアノ・コンクールで優勝することができました。才能が方々から認められ、アメリカへの留学を提案されるのですが、父は断固として反対してしまうのですね。彼の才能を認め力を貸そうとする人間にはいつも嫌悪感をいだいてしまう父。イギリスの王立音楽学校の奨学生としての招待にも強く反対するのです。「お前をここまで育てた父親を捨てて行く気なのか?」と。

そこでデヴィッドははじめて父に反発し、家を飛び出す形でイギリスへと渡ります。ところが留学先で悲劇は起こってしまいます。コンクールの演奏後に倒れたデヴィッドは、精神に異常をきたし病院に収容されてしまうのです。そこから彼の人生は苦労と試練の連続となるのですが、やがて転機が訪れることに……。

劇中曲の多くはヘルフゴッド本人による演奏

オーストラリアのアカデミー賞では、最優秀作品賞、最優秀監督賞をはじめ、9つの賞に輝いた傑作。成人したデヴィッドを演じた主役のジェフリー・ラッシュ(近年では『パイレーツ・オブ・カリビアン』の海賊ヘクター・バルボッサ役で有名)も、アカデミー主演男優賞、ゴールデングローブ賞主演男優賞などに輝きました。

また劇中ではラフアマニノフのピアノ協奏曲第3番をはじめ、ショパン、シューマン、リストなど多数のピアノ曲が聴けますが、その多くはモデルとなったデヴィッド・ヘルフゴッド本人による演奏というのもポイントです。

デヴィッドの人生は音楽によって狂わされてしまったのでしょうか? それとも音楽があったからこそ救われたのでしょうか? 実話をもとにした『シャイン』、ぜひ観てみてください。

イベント告知!

2014年8月3日に、「ボーカリストとベーシストのためのワークショップ vol.3」が開催されます。板谷直樹(B)、小林貴子(Vo)の両氏が、フィジカル面のトレーニングから音楽的知識まで、ボーカリストとベーシストにとって共に役立つ強力な内容を凝縮して伝授します。限定25名なので、お申し込みはお早めに!

板谷直樹(いたや なおき)

板谷直樹

札幌市出身 バークリー音楽大学卒。R&B、AOR、ポップに親しみ15歳よりベースをはじめ、当時からセッション系ミュージシャンに憧れて様々なジャンルを吸収しようと試みた。札幌での活動を経て渡米し、本場のジャズやラテンミュージックに触れ多大な影響を受けている。「最先端のグルーヴとメロディックなソロ」を追求し、アーティストのライブやレコーディングも多数。著書『ベース・ラインで迷わない本』『一生使えるベース基礎トレ本』『一生使えるベース基礎トレ本 スラップ強化編』『一生使えるアドリブ基礎トレ本 ベース編』『ベーシスト 究極の選択60』(すべて小社刊)



TUNECORE JAPAN