バンド単位でのリズム・トレーニングとクリックの効果的な使い方 『ベーシストのリズム感向上メカニズム』著者:石村順インタビュー〜後編〜 

コラム by 編集部 2013年6月14日

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ベースはバンドの土台を支える存在。ということは、ドラマーはもちろん、他メンバーとの関係も重要になる。『ベーシストのリズム感向上メカニズム』著者:石村順インタビュー後半は、そんな「メンバーとのリズムにおける関わり方」と、特別セミナーとして効果的なクリックの活用法も教えてもらった。

インタビュー前編はこちら

「クリックを一緒に聴いて練習」というのが効果的 

──ベーシストとドラマーは「リズム隊」として切っても切れない関係ですが、ドラマーとの練習はやはり重要ですか?

 ですね。バンドをやっている場合、リズム隊として精度を上げていくためには、とにかくドラマーとふたりでたくさん練習することが重要です。でも、ただ単に曲をそのまま通して演奏するのではなく、例えば「Aメロの最初の2小節だけ」とか「Aメロだけ」「サビだけ」など曲の一部分をリピートし、ひたすら何十分も繰り返して演奏するのが良いリズム練になります。リズムに集中できるので。セッションなどをメインにしている人はなかなか特定のドラマーと定期的に練習するのは難しいかもしれませんが、それでもドラマーとリズム練をするのはとても大事です。ただ本書にも書きましたが、ドラム・マシンなどのドラム・パターンに合わせる練習はおすすめしません(本書62 ページ〜)。ドラム・マシンのリズムはそれだけで成立しているので、ついつい「頼って」しまうし、ベースが多少ヨレても気にならないので、リズム感向上の役には立たないんです。

──例えば「ドラマーとどうもリズムが合わない」という場合は、どういう対処の仕方がありますか?

 まずは直接話し合うのが大事ですが、人間関係もあるので言い方は気をつけて(笑)。リズムを合わせるためには、「クリックを一緒に聴いて練習する」のが効果的です。クリック音をPAスピーカーなどから鳴らして、ふたりが共通のクリックをもとに練習するんです。で、本書にも書いたクリックの鳴らし方で行ないます。例えば2拍・4拍だけに鳴らすとか、拍のウラで鳴らすということですね。ただ、演奏中は「弾くこと」だけに注意が向いてしまってちゃんと聴けていないことが多いので、録音してあとから聴き直すのが良いですね。最近はレコーダーも安いので。ドラムとベースがバランスよくクリアに聴こえるように録音し、ズレてしまうポイントを洗い出していくのです。

──「ドラマーと同じようにズレている場合」は、「グルーヴのひとつ」としてとらえてもいいのでしょうか?

 どんなジャンルの音楽をやっているかもあるし、ケース・バイ・ケースなので一概には言えないですが……「それが心地よければいい」という、あいまいな答えになってしまいますね。昔に録音された音楽だとよくありますが、イントロとエンディングで結構テンポが違っているけど全然気にならず心地よく聴けてしまう、なんてのもありますよね。なので、不自然にハシるとか、音楽的ではないヨレ方だとまずいけど、ほんの少しリズムがヨレていてもバンド全体の呼吸が合っていて自然な流れに聴こえるならそれはそれでOK、という答えになるでしょうか。う〜ん、難しいテーマですね。

──ではドラマー以外のメンバーとは、リズムという観点で練習するにはどういったことを行なえば良いでしょうか。

 先ほど話したようにクリックに合わせるのも良いですし、「ドラマー抜きで(クリックもなしで)練習する」のもすごく効果的です。これだと、ドラマーに頼って「なんとなく弾く」ことができないので、メンバー各自が「人に頼らず、自分自身でリズムに責任を持たなきゃ」という意識を高めることになります。これはすごく大事です。先ほど言ったように曲の一部分を選んで、ひたすら繰り返して練習しましょう。そして録音してプレイバックして確認することで、誰がどこでヨレているのか、どういうタイミングで狂いやすいのかがハッキリします。でも、中にはリズムを気にしないでガンガンいっちゃうメンバーもいるでしょうが、それなら「ベースでリズムを出す、ドラムの役もこなす」という意識で演奏しましょう。それで素晴らしく揺るぎないリズムとグルーヴを生み出せたら、それはすごいことです。

 特別レクチャー〜効果的なクリックの使い方

 ──ここまで読んでくれた読者へ、すぐに使える実践的な何か、教えてくれませんか?

 では、先に出たクリックの効果的な使い方のレクチャーしたいと思います(本書では、59ページ〜に対応しています)。その前に前提をふたつ。

①アタックの鋭い音で。

 クリックの音は、なるべくアタックの鋭い音にしてください。電子音だとちょっと音価(音の長さ)が長いものもあったりしますが、それだとジャストのポイントがわかりづらく、リズムが合っているのかズレているのか、わかりにくい場合があります。

②クリック音にアクセントはつけず、同じ音で鳴らす。

 クリック音にアクセントをつけているなら、それは止めます。1拍目アタマだけアクセントをつけた音色だったりすることがありますが、それだと周期をクリックに頼ってしまうのでよくありません。全部を同じ音色にし、「周期は自分で感じるよう」にします。

 

 これらを踏まえて、効果的な使い方を実践していってみましょう。効果的なクリックの使い方の基本は、「クリックに頼りっきりにならず、自分でリズムに責任を持たざるを得ない」という状況を作って練習することです。具体的にいうと……。

 ■バック・ビート(2拍・4拍)で鳴らす

 やりたいテンポの半分のテンポでクリックを鳴らします。♩=100でやりたいなら、♩=50です。それを、2・4拍として聴きます。この場合、1拍・3拍は自分の責任で感じなければいけません。

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■拍のウラで鳴らす

 クリックを拍のオモテではなくウラで鳴らします。これだと、拍のオモテを自分の責任で感じなければなりません。

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■1小節に1回だけ鳴らす

 やりたいテンポの1/4のテンポでクリックを鳴らします。♩=120で行ないたいなら、♩=30です。それを「1小節に1回だけ鳴っている」と感じます。感じ方によっていろんな場所(拍)で感じられますが、役に立つのは「4拍目オモテ」「2拍目オモテ」「いずれかの拍のウラとして」の3つ。

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 これらが効果的なクリックの聴き方です。

 

 最初に紹介した2拍・4拍で感じる方法ですが、慣れていない場合、何度トライしてみても、下図のように1拍・3拍で聴こえてしまう人もいるでしょう。

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 そんな場合は、以下の順番でトレーニングしていきます。

 

①「2」からカウントを始める。

 クリックは1・3拍に聴こえたままでいいので、1拍目に1ではなく2と言い、「2・3・4・1」というふうに声に出してカウントをします。変な感じがするかもしれませんが、慣れるまで続けましょう。「2」と「4」を強く言って、クリックと合わせるのです。

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②「1」を強く言う。

 2と4にクリックが鳴る感覚が自然にできるようになったら、今度は「1」を強く言います。すると、これまで「2・3・4・1」と進んでいたのが、「1・2・3・4」と感じられるはずです。これを続けて、意識しなくても2・4拍でクリックが鳴っていると感じられるようになればしめたものです。

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 これらの具体的な方法やトレーニングの行ない方は、本書『Training1 ギアの精度を高める〜倍テン・トレーニング〜』(96ページ〜)にも掲載しています。ぜひクリックを活用して、リズム感を向上させ、グルーヴを鍛えてください!

 いかがでしたでしょうか? 本書にはこのほかにもたくさんのグルーヴを鍛えるヒントが書かれています。ぜひ手に取って、ベーシストにとっての使命=良いリズム感を身につけ、日本中をグルーヴィな演奏で満たしてください!

 

 

 

石村順

1972 年5月19日、大阪生まれ。ブリュッセル/東京/神戸で育つ。6歳でクラシック・ギターを始め、橘川恭則氏、Dominique Dubois氏に師事する。15歳でエレクトリック・ベースを始める。1996年にLOVE CIRCUSのメンバーとしてデビューし、翌1997年にはメジャー・デビューも果たす。同時にサポート・ベーシストとしても活動を開始。2004年、日本を代表するドラマー、村上“ポンタ”秀一が率いるNEW PONTA BOX結成時に加入し、その名をさらに広める。2008年にはヒップホップ・ユニットSUIKAのレギュラー・サポート・メンバーとしての活動もスタート。この他にもサポート/共演したアーティストは多岐にわたっている。ベース・マガジン2011年4月号からは、リズムとグルーヴに特化した連載『リズム&グルーヴ実習ラボ』も開始。

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