「俺がこのバンドをもっと良くしてやる!」くらいの野心を持とう! 『ベーシストのリズム感向上メカニズム』 著者・石村順インタビュー〜前編

コラム by 編集部 2013年5月27日

Bass_rhythm_c02

ベーシストにとって最も大切な要素、「リズム感」を鍛えるためのノウハウがぎっしり詰まった『ベーシストのリズム感向上メカニズム』。著者自身が体験し、リズム感を向上させてきたメソッドがもとになった本書は、どのようなものなのか。著者:石村順に話を聞いた。

ある瞬間、リズムが良くなるけど
またすぐに戻る……そのくり返し。

  ──現在プロとして活躍している石村さんですが、本書には「昔はリズム感が悪かった」とあります。本当ですか?

 クリックに合わせて弾くこともできないとか、そういうことではないです(笑)。リズムの精度が甘かったし、グルーヴを理解していなかったから、何を弾いても決め手に欠けていたというか。ヴォーカルに例えて言えば、歌えるけどなんとなくピッチ(音程)が甘い、という感じです。僕は6歳からクラシック・ギターを習っていたこともあって指もある程度は動いたし、自分ではリズムが悪いなんてまったく思ってもいませんでした。それをジョニー野村さん(※ゴダイゴのプロデューサーなどをつとめた人物)に指摘されたんです。

──どのような感じで指摘されたのですか?

  一番印象に残っているのは、本書のオビにも書いたように、本当に「リズムが全然とれていない。このバンド、ベースいないほうがマシだ」って言われたんですよ(笑)。話せば長くなるんですが……当時僕はロックやファンクが好きで、そういうバンドをやっていました。で、練習していた(サークルの)部室のベランダをジョニーさんがよく通っていたんです。ジョニーさんは隣で練習をしていたジャズ・ビッグバンドを指導しに行くためにそこを通っていて、たまたま目について指摘されたんです。

──いきなりすごいことを言われたんですね(笑)。

 そうなんです。で、しばらく後に「お前、リズムを良くしないとダメだ。ビッグバンドに入れ。ウッド・ベースを練習しろ」と。エレキだと(アンプのおかげで)弦に触っただけで簡単に音が出るけど、ウッドはしっかり弾かないと良い音が出ないからという理由でした。なので、リズムの学校に入るつもりでそのサークルに入りました。

 ジャズなので当然まずウォーキング・ベースのトレーニングをしたんです。4分音符のフレーズを8分2回で弾いたりなどですね。そこでやったことは、本書の『Training 1 ギアの精度を高める~倍テン・トレーニング~』(本書 97 ページ〜)にも書いたとおりで、まさにジョニーさんに教えてもらったことを僕なりにまとめて紹介しています。もちろん、ウッド・ベースを弾かなきゃいけないわけじゃなくて、普通のエレキ・ベースでできることを書いています。

 でも、ジョニーさんは「なぜこの練習をやるか」という理由を事前には言わないんですよ。「まずこれやって。次はこれ」って、何が何やらわからずにやらされて。一見、練習内容がその曲のフレーズとは全然違うように見えるんです。でも、そのとおり進めていくと、結果的には目的のフレーズのリズムのとらえ方が変わっていき、よりグルーヴするようになっていくんです。この本でも、そんな感じで僕が教えてもらった手順を踏襲しているので、トレーニング編では最初は戸惑うかもしれません。「なんで半拍ズラして弾く必要があるんだろう?」とか疑問が出てくると思います。ただ、それで止まらずに根気よく続けてもらえれば、必ずリズム感向上の秘密が隠れています。

──「リズムが良くなった」と感じる瞬間はあるのですか?

 経験から言うと、毎日ちょっとずつうまくなる、という感じではないです。それよりも、ずっと同じレベルのままのような感じが続いて突破口もなくて、「この練習でいいのかな……」と不安に思ったりもして。それでも、毎日、一定の時間トレーニングを続けていると、ある瞬間に「おっ!」と感じる時が訪れるんです。徐々にわかっていく感じではなくて、急に歯車が噛み合うようにうまくいく瞬間があるんです。「4分音符を正確な長さで弾くとはこういうことか!」と、鮮明にわかるんです。でも、その状態は長続きしないんですよ。

──良くなったリズム感が、戻ってしまうということですか?

 理解したことがずっと維持できればいいんですが、残念ながらほとんどそうはいかないんですよ。例えば難しいフレーズを一回うまく弾けたら、あとはずっとうまく弾けるなんてことはないじゃないですか。それと同じで、すぐにもとに戻るんです。戻るというか、同じふうには弾けなくなる。逆に、「うまく弾けたその感触」は覚えているから、その記憶と演奏のギャップのせいで「ヘタになった」と思ってしまうこともあるくらいです。でも、この「うまく弾けた感覚とはなんか違う」という違和感が重要なんです。そして、うまく弾ける瞬間が少しずつ増えていって、それが自然になるのが最終的な目標です。ただ、初めて「これか!」って気づいた瞬間からそこに到達するまでは、やはり時間がかかります。

Bass_rhythm024

グルーヴは経験。多くの音楽経験を積むことは、
必ずリズム感やグルーヴにつながっていく。

──特設サイト(http://www.bass-groove.com/)では、発売記念のビデオ・レッスンを2本公開しており、そのなかで「できればガイドをつけた方がいい」ということを話されています。

 そうです。具体的にはビデオ・レッスンを見てもらえればと思うのですが、簡単に言うと、本書を使って練習し、自分の演奏を録音し、ちょっとずつ「気づき」を増やしていくのも良いことなのですが、その気づき、つまり「良いリズムで弾けているかどうか判断する耳」をすでに持っている人に指摘してもらいながら練習した方が、間違いも少ないし時間の節約にもなる、ということです。

 ──特に初心者は奏法テクニック自体の練習や、好きな曲のコピーも行ないたいと思いますが、トレーニングの時間配分はどうしたらいいでしょうか?

  好きな曲をリズム・トレーニングの題材にしてしまうのが、一番いいと思います。なので、本書はよくある「フレーズ集」ではありません。むしろ「トレーニングの方法」をおもに紹介しています。とは言っても、特に初心者の方は、いきなり応用できないと思います。そう考えると、先にも言ったようにガイド的な存在がいるといいかなと思いますね。僕が個人レッスンを行なう時は、その人がやりたい曲やフレーズを題材にしています。

 ──リズム感を良くするために、本書で紹介しているトレーニング以外でやっておくと良いと思うことはありますか?

 やっぱり「いろんな音楽を聴くこと」はすごく大事だし、勉強になります。ぼーっと聴くんじゃなくて、リズムに集中して聴くことで本当にいろんな発見があると思います。これは本書でも書いたのですが、グルーヴは経験なんです。より多くの音楽経験を積むことは、必ずリズム感やグルーヴの向上につながっていくと思います。また逆に、リズム感が向上してから改めて聴くことで、別の発見があったりもします。例えばドラム・ソロでリズムを失いがちだったのが、どういうリズム・フレームで成り立っているのかがわかって、ちゃんとついていけるようになる。そういう感動や発見があったりします。

 ──わかりました。最後に読者にメッセージをお願いします。

 ベースはバンドの土台なので、ベースのリズムが良くなると「バンド全体」が良くなるんです。もちろんドラムも大きな要素ですし、ギターやキーボードなども大事ですけど、ベースが一番大きな影響力を持っていると思います。だから、「俺がこのバンドをもっと良くしてやる!」くらいの野心を持ってベースに取り組んでほしいです。本書がそのお役に立てればうれしいですね。

              

 後編では、バンドという単位でのリズム・トレーニングについてと、クリックの効果的な使い方の一部を紹介する予定です。お楽しみに!

インタビュー後編はこちら

 

 

石村順

1972 年5月19日、大阪生まれ。ブリュッセル/東京/神戸で育つ。6歳でクラシック・ギターを始め、橘川恭則氏、Dominique Dubois氏に師事する。15歳でエレクトリック・ベースを始める。1996年にLOVE CIRCUSのメンバーとしてデビューし、翌1997年にはメジャー・デビューも果たす。同時にサポート・ベーシストとしても活動を開始。2004年、日本を代表するドラマー、村上“ポンタ”秀一が率いるNEW PONTA BOX結成時に加入し、その名をさらに広める。2008年にはヒップホップ・ユニットSUIKAのレギュラー・サポート・メンバーとしての活動もスタート。この他にもサポート/共演したアーティストは多岐にわたっている。ベース・マガジン2011年4月号からは、リズムとグルーヴに特化した連載『リズム&グルーヴ実習ラボ』も開始。

Bass_rhythm_c01

TUNECORE JAPAN