【ライブ・レポート】テデスキ・トラックス・バンド

ライブ/イベントレポート by 2014年2月6日@渋谷公会堂 文:渡辺真一(ギター・マガジンOB) Photo:yuki kuroyanagi 2014年2月7日

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2011年の1stアルバム『レヴェレイター』は,60年代後半のデラニー&ボニーのツアー形態やジョー・コッカーとレオン・ラッセルのプロジェクト,マッド・ドッグス&イングリッシュメンのそれらを温め新しきを知った,言うなれば“歌もの”アルバムで,自宅スタジオでじっくり煮込んだその成果はグラミー戴冠に結ばれた。しかしその後,ライブ・アルバム『エヴリバディズ・トーキン』(2012年)を挟んで,デレクがオールマンズでも一緒する盟友オテイル・バーブリッジ(b)が脱退。こりゃ果たしてどうなっちゃうの?と思ったら,やはりセッション性の高いアルバム『メイド・アップ・マインド』(2013年)を放ってみせたこの世界一のブルージィ夫婦バンド。2年ぶりの来日公演は飛行機のトラブルで来日が遅れたが,とにかく間に合って良かったその初日の模様をレポートしよう。

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ステージの最背面には『メイド・アップ・マインド』のジャケットをモチーフにした,バッファローが汽車へ“心決めたり”と雄々しく突進する姿を描いた幕。その前に2台のドラム・セット,さらにその前にはフェンダー・スーパー・リバーブの壁。ブラック・パネルのそれらの多くはレンタルと思われるが,機材の詳細は追ってギター・マガジンが取材するので,ギター・マガジン4月号(3/13)をチェックされたい。

定刻とともに登場する11人のメンバーたち。南部の男はかくありきと髭をたっぷり蓄えたデレクの手にはいつもの2000年製でも,シグネチャーでもビンテージでもない,ディッキー・ベッツ・シグネチャーSG“From One Brother to Another”が握られ,この日は全編を通してこの1本で弾ききった。スーザンは自ら“1970年製”を公言するCBS期の象徴たるラージ・ヘッドのフェンダー・ストラトキャスターをメインとした。後半,「BOUND FOR GLORY」で弦を切ったのか一時いつものティール・グリーン・メタリック・フィニッシュのアメリカン・スタンダード・テレキャスターと交換したが,それ以外は先のストラトで,相変わらずのバキバキなブルース・トーンを響かせた。

ステージは新作『メイド・アップ・マインド』の冒頭を飾る2曲からスタート。「MADE UP MIND」はステージ・サウンドのバランスをとる暖機運転という感じだったが,遠く「LOAN ME A DIME」を彷彿とさせるBmのブルース・バラード「DO I LOOK WORRIED」では,“スクリーミンTスーザン”と称したいほどのアルバム以上の彼女の唸りが空気を変える。それにデレクはロング・トーン・スライドで応える。お得意の3連符主体の細かい上昇パッセージもいいが,こういう泣きのスライドもいい。
さらにデレクのギター・プレイを追うと,続くマイナーのスロー・バラード「 IT’S SO HEAVY」では,これまでディラン・カバー「DON’T THINK TWICE」などでも聴かせていた歌メロに追従するようなスライド・ソロで魅せ,一転「MISUNDERSTOOD」では比較的珍しいペンタ一発のソロをスーザンとかけ合った。

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嬉しかったのはデレク・トラックス・バンド(DTB)のレパートリーだった「I KNOW」が聴けたこと。ボーカルはもちろんDTBのボーカリストだったマイク・マティソン。TTBではコーラス隊に甘んじる(?)彼の倍音豊かな歌声が,DTBのそれよりグッとテンポアップした6/8拍子に乗っていきいきとしながら,管楽器をフォーカスしたソウルフルなアレンジの中展開された。

ここまでを振り返ると,TTBの1stに象徴される歌ものではなく,セッション主体に成ったであろうヘヴィなブルース・サウンドとDTBが持っていたワールド・ソウル性がうまく同居した流れになっていた。

さて,予てよりアナウンスされていたドイル・ブラムホールⅡのゲスト参加はサッチモ・カバー「ST. JAMES INFIRMARY」〜フレディ・キングで有名な「PALACE OF THE KING」までの5曲。クリーム時代のクラプトンを思わせるアフロ頭に,いつもの1964年製フェンダー・ストラトキャスターを持って登場したドイルがトラックス夫妻と最初に出会ったのは,2006年エリック・クラプトン世界ツアーのメンバーとして……ではなく,その前年のスーザンのソロ・アルバム『Hope and Desire』で顔を合わせている(実際の出会いはもっと古いだろう)。その後も2008年のスーザン作『Back to the River』にコンポーザーとしても参加するなど彼らの音楽的相性は抜群だった。
TTBの新作での共作曲⑧⑨以外はブルースだったこの日のセッション。少し斜めに見ているせいもあるかもわからないが,現在のドイルとデレクはかつてのクラプトンとデュエイン・オールマンを彷彿とさせ,現代的な新しい何かを生み出す気配に満ちている。

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ブルース曲ではスーザンのバックアップ活動に近い関係性に見えたが,新作からの2曲は過去の遺産を語彙に深くわかり合ったまさしく共作と呼ぶに相応しい出来。特にオールド・ソウル色の強い「PART OF ME」では,本来ストラトのドイルが刻んだ方が“らしい”ダブルストップ系のバッキング(サム&デイヴの「Soul Man」のバックやDTBでもカバーしていた「Memphis Soul Stew」のイントロなどでC.デュプリーが得意としたアレ)をデレクが弾き,そのカウンターを歯切れ良いクリーン・トーンでドイルが縫うという構成。ここにも相性の良さが表れていたと思う。今回はボーカル面でのサポートも光ったドイルの見せ場は,フレキン・ブルースでのワウ・ソロだろう。

ちなみにオテイルの代わりにレギュラーとなったベーシスト,ティム・ルフェーヴルはキャリア十二分でバンドへのアジャストも見事だったと認めるが,オテイルの歌を見据えたラインどりとあの全身で音楽するベースマンぶりを思うと,“代役”としての機能以上のものは,残念ながら筆者には発見できなかった。今後に期待。

さて,アンコールで予定外に演奏された彼らの出発点的カバー「SPACE CAPTAIN」まで含めて考えても,この日のハイライトはTTBの1stに収録されるバラード「MIDNIGHT IN HARLEM」と断じたい。デレクにとってアドバンス・キーとなるEでの,中近東音階を盛ったその序奏が,暗闇の物語へとゆったり引き込んでいく。ひと際大きな歓声が上がる。ライブ盤のそれを始め最近はここでオールマンズ「Little Martha」の一節を挟むが,この日はなし。マイク・マティソンは自作とあって充実の表情を湛え,マーティン・ドレッドノートを軽くさばきながらコーラスする。スーザンはブルース曲と異なり繊細に抑揚をつけ,息の切れ際まで大事に歌っているのがわかる。この曲でのオテイルのハーモニー・センスを少し思う。そしてロング・ノートからデレクのスライドが始まる。その美しさにスーザンは見惚れるように笑顔だ。徐々に高音域へレベルを上げ歪みを増し,高揚感を煽るように昇っていく。バック陣の音量とスピードもそれに伴う。

ギターの神童がその血統に従うようオールマン・ブラザーズ・バンドの一員となり,歴史の一部を担いながら一方で,自身の名前を冠にしたバンドで世界中の音楽を吸収しては吐き出す。エリック・クラプトンの紹介によって巨大なポピュラリティを得,その成熟の証拠にグラミーを戴冠。「MIDNIGHT IN HARLEM」のドラマティックなソロ・ワークからは,デレクのそんな半生が透けて見え,これから進むべき先の示唆も同時にあるように思えた。この1曲を味わうだけでも,彼らのライブに足を運ぶ価値があるはずだ。

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【セットリスト】
01. MADE UP MIND
02. DO I LOOK WORRIED
03. IT’S SO HEAVY
04. MISUNDERSTOOD
05. I KNOW
06. ST. JAMES INFIRMARY
07. MEET ME AT THE BOTTOM
08. ALL THAT I NEED
09. PART OF ME
10. PALACE OF THE KING
11. MIDNIGHT IN HARLEM
12. BOUND FOR GLORY
13. THE STORM
〜 ENCORE〜
14. SPACE CAPTAIN

 

【残りツアー日程】

9日(日)尼崎・あましんアルカイックホール
10日(月)SHIBUYA-AX
11日(月・祝)昭和女子大学 人見記念講堂

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